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2015/04/22

たけのこ採って林を守る

先日、生まれて初めてたけのこ掘りをした。経験者の友人から、「地面がもこっとしているところを探すんだよ」とアドバイスをもらっていざ出陣。いっぱい持ち帰れるように袋もいくつか用意した。なのに、現地に着いていくら歩きまわっても、もこっとしたところが全然見つからないじゃないか!たけのこを次々と見つけ、さくさく掘っている人も周りにたくさんいるというのに。

そもそも今回のたけのこ掘りは、大学が管理している緑地保全のためのイベントだった。この緑地は雑木林として学校が維持・管理し、研究にも使用しているのだが、竹林も点在しており、雑木林が竹林に取って代わられることが危惧されている。だから、竹に薬剤を注入して枯らしたり、適宜切って竹炭として使ったりしているらしい。たけのこ掘りも、竹林拡大防止の小さな一端を担っている。

ではなぜ、雑木林から竹林へと変化するのがまずいのか。それは、雑木林とそこに住むいろいろな動物、昆虫、他の植物たちが構成する生態系が崩れてしまうからである。竹は元々は中国からの外来種。成長が早いため、手入れをしないとどんどん分布が広がる。そして竹は背が高いため、竹よりも背の低い植物たちは少ない光しか得られず枯れてしまう。さらに竹林の土壌は固いため、棲みつく動物も少ないらしい。よって竹林の拡大防止に取り組まなければ、雑木林とそこに見られる動物や植物の多様性が失われてしまうのだ。しかしかといって、竹を1本残らず取り除いてしまうのも生態系にとってはよくないらしい。バランスが重要ということなのだろう。

外からの侵入物によってもともとそこにあった固有のものが失われていく現象は、自然に起きるだけではない。環境保全のための植林活動でも同様のことが起こりうる。小笠原諸島で実際にあった話。環境を保護するため、小笠原諸島で生えているのと同種の九州地方で育てた木を植林したところ、互いの遺伝子が大きく異なっていたことから交配できず、さらに九州から来た遺伝子が小笠原諸島固有の遺伝子に置き代わってしまう危険があると判断された。そして結局植林した木を伐採し、芽が出た実生も抜くこととなったという。植林もうかつにしてはかえって逆効果というわけだ。
たけのこGET!

こんな話を聞いていると、植物は分かりやすいくらいに弱肉強食になっているなと感じる。自身の持つ遺伝子や構造がより環境にマッチしたものが生き残っていく。人間の場合、少し事情は異なる。短期的には弱肉強食も生き残れるように見えるが、強いだけでは生き残れない。人間は高度な社会性と認知能力を備えているがゆえ、利他行動をするよう進化して生き残ってきた。つまりは、持ちつ持たれつの関係を前提として行動できる者が生き残れるというわけである。進化心理学の視点から見れば、自分の強さだけで生き残ろうとする者はいずれ自滅するか駆逐される。

たけのこ掘り、私は見つけるのも掘り出すのも一苦労だった。でもとても楽しかった。慎重にあちこち歩きまわって、たけのこの頭がひょいと出ているのを見つけたときはとても嬉しかった!しかも採りたてのたけのこは新鮮で、今まで食べたどのたけのこよりもおいしく感じた。残りのたけのこで、煮物やたけのこご飯も作ってみようと思っている。



参考:ひなたブック 首都大キャンパスの松木日向緑地ハンドブック