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2020/02/13

本レビュー ターリ・シャーロット「事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学」

人を動かすための方策を練りたい方にはもってこいの本。それから,自分は特別!私は誰にも左右されないの!という思いを抱いている方にももってこいかもしれない。いずれにしても,この本からの学びは,脳の接近ー回避の法則はやはり強固。さらに,人の生存欲求というか自己保存欲求というか,それも強固。また,感情及び,意識の範疇外で起こっていることにもっと目を向けるべきだ。ということ。

「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」の原題は「The Influential Mind  What the Brain Reveals About Our Power to Change Others」。脳のあり方をふまえ,人が影響されているとき脳はどういう状態なのか,どうすれば人を動かせるか,いかに人が他者から影響されているか,を実際に行われたたくさんの実験や,エピソードを交えて丁寧に解説している。笑ってしまう話や,あ~そうだよね~,えっホントに!?など,自分の日常やこれまでそうだと思っていたことと照らし合わせて,いろいろな気持ちを味わいながら学ぶことができると思う。下記に述べるtipsだけを考えるとそれほど目新しいものではないかもしれないが,あちこちで言われている断片的なことを1冊にしてくれた感がある。また,脳の反応がエビデンスとして紹介されているので,ただのノウハウ本よりも信用がおける。

「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」の原題は「The Influential Mind  What the Brain Reveals About Our Power to Change Others」。脳のあり方をふまえ,人が影響されているとき脳はどういう状態なのか,どうすれば人を動かせるか,いかに人が他者から影響されているか,を実際に行われたたくさんの実験や,エピソードを交えて丁寧に解説している。笑ってしまう話や,あ~そうだよね~,えっホントに!?など,自分の日常やこれまでそうだと思っていたことと照らし合わせて,いろいろな気持ちを味わいながら学ぶことができると思う。下記に述べるtipsだけを考えるとそれほど目新しいものではないかもしれないが,あちこちで言われている断片的なことを1冊にしてくれた感がある。また,脳の反応がエビデンスとして紹介されているので,ただのノウハウ本よりも信用がおける。

本書で提示されていた人を動かすためのtipsは以下のとおり。これらのtipsを,人を動かしたい状況,相手などに合わせてどう具体的に表現していくか,が腕の見せどころか。
・人が「正しいと信じている信念」に対しては,決定的な反対証拠も役に立たない。拒絶されるたり,逆に,正しいと信じている信念がいかに正しいかを説得させられることになる。
・メッセージが相手に伝わるには,相手の感情に働きかけること。自分と相手の気持ちが共有されている状態に。
・罰や脅しなど,恐怖を喚起するものは説得にはマイナスに働く。むしろ,褒めや報酬など快を期待させることが行動を促す。
・喪失への不安は行動を止める。
・「自分がコントロールしている」という感覚は満足感を高め,人を行動へ向かわせる。コントロール感を阻害する注意や警告,管理は人を不安にさせる。
・情報を伝えるときは,相手の知識のギャップを示し,それを埋めるようにする。
・メッセージはポジティイブな観点から伝える。良いことが起こる可能性を強調したメッセージのほうが人の注意を引くことができる。人は自分が後で傷つくとしても,悪い知らせを避ける。
・相手の心の状態によって,メッセージの受け取られ方は変わる。ストレス下や恐怖下では,リスクを避け,無難な行動をとる。

本書後半は,人は(気づかないうちに)他者に影響されている,ということについて。人は生まれた日から周りを見て学習を始める。他人は自分が持っていない情報を持っていると思って,本能的に他人の選択をなぞってしまう。他人の意見によって,記憶の痕跡は物理的にも変化する。さらに,変化をもたらすにはたった一人の異端で十分,などが様々な実験とともに伝えられる。
さらには集合知についても言及している。たくさんの人の意見を集約して平均するとだいたい正しいと言われるが,お互いがお互いに影響を与えている社会でそれはいつも成り立たない。成り立つには工夫が必要である。まず第一に,たくさんの人がそれぞれできるだけ独立して意見を言っている必要がある。また,一人の意見でも時間を空けて出された複数の意見を集約したほうがいい。いずれにしても,誰がどんな状態で述べた意見なのか知らずに,みんなの意見の平均を鵜呑みにするのはよろしくないということである。多数派に走ってしまう本能を適宜抑えなくてはならない。

そんなわけで,私の備忘録も兼ねたくて全体を簡潔にまとめてみた。興味を持った方はぜひ手にとってみてください!

2019/12/15

宝石に関する情報収集あれこれ

先日のブログ記事(https://yukiron.blogspot.com/2019/12/blog-post_4.html)にも書いたように,最近宝石を見るのが好きだ。それで,宝石関連の情報をいろいろと探っていたところ,ナイスタイミング!ちょうどテレビで宝石探しの番組やるし,ミネラルショーも開催される。しかも,書籍も調べてみると,宝石関連本は少ないながらもしっかりした内容のものがけっこうあり。そういうわけで,最近触れた宝石情報についてまとめておきたい。

まずは,NHKでやっている番組,世界はほしいモノにあふれてるの宝石回,「世界にひとつの宝石を探す旅 オーストラリア」https://www4.nhk.or.jp/sekahoshi/x/2019-11-14/21/2235/1942066/)。ジュエリーデザイナーの女性が,香港やオーストラリアに自分の作るジュエリーのための宝石を探しに行く回。香港は,翡翠が有名でたくさんの翡翠が売られている様子が出てきた。翡翠もいろいろな色がある。そういえば,もう10年以上も前に香港行きのパックツアーに参加した際,翡翠屋さんへ行くことが行程に含まれていたっけ…。オーストラリアでは,オパールの採掘現場に訪れ,採掘された様々なオパールを見ていた。私はこのときまでオパールをちゃんと見たことがなかったのだが,石自体の色も複数あるし,角度によっていろいろな色の光が見える。とても個性的な石だ。ブラックオパールはかっこよくもある。ジュエリーデザイナーの女性の方は,本当に真剣に石を選んでいたが,共感できる。一つも同じものがないから,こだわって選びたい。そして,実際に掘っている現場や研磨している現場の映像も見ることができて,どのようにして石がジュエリーとして私達の手元に届くのかを垣間見ることができた。

続いては,ミネラルショー。ミネラルショーは,鉱物の展示会だ。化石から宝石まで,国内外の鉱物関連会社が出展する。初日に訪れてみた。出店者も多いが,お客さんも多い。業者の方もいるのだろうが,個人で来ている人も多そうだ。多くの人が,お店の前に張り付き,石を熱心に観察して選んでいた。お気に入りの石を見つけた人の中には,それでオーダージュエリーをお願いしている人もいた。いろんな石が見れるかも!と思って行ってみたはいいものの,知識がなさすぎてあまり満喫できなかった…。ということでそんなに長居せずに退散。やはりこういうものは,知識や経験があるほうが断然楽しめるよね…。

ところで,宝石について少し知りたいなと思って目を通した本もある。一つは,阿依アヒマディの「アヒマディ博士の宝石学」。理学博士で宝石学が専門の博士が,宝石はどのように作られるかや,主な宝石の特徴・産地について解説する内容。キレイに研磨された宝石のほか、原石の写真も多数掲載している。同じ名前の宝石なのになぜ複数の色があるのかの疑問、本書を読んだら、ざっくりとではあるが解決した。つまるところ、その石に含まれる原子の量の差異である。Feが含まれるとこの色寄り、Mgが加わるとあの色寄り、みたいなのがあるようだ。でも、化学式は変わってないから、きっとホントに微妙な差異なのだろうな…。
そして、人工的に作られた合成ダイヤモンドや,宝石に熱処理が加わるとどうなるかなど,一見しただけでは絶対にわからないであろう違いについてもいろいろ教えてくれる。
また,博士が実際に訪れた採掘現場も写真付きで紹介。地元の人が手作業でやってるとこも結構あり、こんなところからホントに出るの!?みたいな雰囲気のところもあり、宝石を見つけるだけでも大変なのに、そりゃ質のいい宝石が出たら値が上がるよね…と実感です。
パイロープガーネットの指輪
個人的には、私の誕生石でもあるガーネットについて、概要を知れたのがよかった。一口にガーネットと言っても、いろんな色のものがある(化学式に少し違いがあり、種類が分かれています)。個人的には赤系統のパイロープと、オレンジ系統のスペサルティンが好きだな。
タンザナイトの青紫色の輝きもとても美しかった。


それから,こちらの本も忘れてはいけない!「宝石と鉱物の大図鑑」。 この本は,すごいです。こちらもフルカラーで,440ページの厚さ!約1万個の宝石を所蔵している米スミソニアン博物館でも知られるスミソニアン協会が監修だ。鉱物とは何か?から始まり,数多くの鉱物(元素鉱物,宝石,生体起源のもの,岩石も)がたくさんの写真とともに紹介され,世界的に有名なジュエリーの写真もある。そして,そのジュエリーにまつわる人物や歴史もともに紹介されている。こういうの,実は私は知りたかった。科学系の内容だけだと,私には辛いのだ…
とにかく,宝石・鉱物の基本はこの1冊で十分なのでは!と初心者の私にも思わせるほどの内容。この本は,太陽光の差し込む明るい部屋で,ゆったりと過ごせるときに閲覧するのがいいと感じる。そういう場所・ときでないと,この本は味わえないだろう。通っていた大学の図書館に戻りたい気分だ。

というわけで,宝石に興味を持ってから遭遇した,いろいろな宝石情報ソースについてまとめてみた。宝石は値が張るのでとても買えそうにないが,いろいろなソースのおかげで目で楽しむこと,読んで楽しむことはできるのだ!

2019/12/04

漫画記 二ノ宮知子「七つ屋志のぶの宝石匣」

最近,宝石に興味がある。いろいろな色で美しく輝く石たち。同じ名前の宝石でもいろいろな色があり,形があり,輝き方があり,ああ自然の中で作られたものなんだと実感する。見ていて飽きない。これまで宝石なんて全く興味がなかったのだが,二ノ宮知子さんの「七つ屋志のぶの宝石匣」を読んでいたら,宝石についてもっと知りたい欲がムクムクと湧き上がってきた。既刊は現在13巻,ストーリーは継続中だ。

この漫画は2つの話が並行して流れていく。舞台は銀座に店を構える老舗の質屋「倉田屋」。そこの孫娘である女子高生の志のぶは,宝石から気を感じることができる,という力を持っている。その力を使いながら,質屋にジュエリーを持ち込んだお客さんや志のぶの周りの人たちの間で起こるちょっとしたトラブルやいざこざを解決していく,というのが1つの話。宝石やジュエリーは,その持ち主の人生や日常と絡めて描かれる。濃いキャラクターや人間臭いキャラクターが多く,毎話ごと笑ってしまう。それに人情話も多く,読んでいて温かい気持ちになる。
もう1つは,志のぶの(一応)婚約者である顕ちゃんの消えた家族の謎を解いていく話。顕ちゃんは倉田屋の質流れ品なのだ。顕ちゃんの祖母は,子供の顕ちゃんを倉田屋に預け,その後一家は離散,家も焼けてしまった。顕ちゃんが覚えているのは,一族に繁栄をもたらしたという鳥の内包物のある赤い石。その石を探すため,高級ジュエリー店の社員になり,友人のジュエリーデザイナーの鷹さんや宝石バイヤーの虎徹とともに消えた家族の謎を追っている。この2つの話が絡み合ってストーリーを成している。そういうわけで,1話完結のコミカルな話としても楽しめるし,ちょっとシリアスなミステリーとしても読める。
また,合成ダイヤモンドや宝石鑑定,質屋業界の競り,押し買いの話など,宝石やジュエリーを取り巻く現実についても描かれており,門外漢だった私には,へ~の連続だった。

ストーリー中にはたくさんの宝石が登場する。モノクロだから漫画で見た目を楽しむ,ということはできないが,その宝石に関する歴史や特徴などがけっこう詳しく描かれているから,実際にそれを見てみたくなる。だから新しい宝石が出てきたとき,私はよく本やネットで検索している(笑)思えばこれは,二ノ宮さんの別の作品である「のだめカンタービレ」を読んでいるときもよくやっていた。登場するクラシック音楽がどういうものか聴いてみたくて,よくYouTubeで検索し聴いていた。それでますますクラシック音楽が好きになったものだ。また,漫画に登場するジュエリーデザイナーの鷹さんは,アンティークっぽいデザインのジュエリーが好みで,そういうのを作っているという設定で,このジュエリーは○○時代の~みたいな話がときどき出てくる。気になったものはやっぱりネットなどで調べるのだが,デザインの特徴や違いを知るのも楽しいし,宝石やジュエリーが歴史の中で,その時代の人や持ち主にどう絡んでいるのかを感じるのも面白い。

二ノ宮さんの作品は,のだめの他にも,好きな人のために農業を頑張る女の子が主人公の 「GREEN」も面白くて大好きなのだが,「七つ屋志のぶの宝石匣」の志のぶも「GREEN」のワコちゃんやのだめ同様,まっすぐ好きなことを貫く姿がいい。一本筋が通っているというか,他人に流されない何かを持っているというか,そういうところが好きだ。好きなものや好きなことは違うけど,そういう生き方に共感するし,読んでいて応援したくなる。

8巻あたりから,顕ちゃんの家族ミステリーのほうの話がけっこう騒がしくなってきていて,どんなふうに展開していくのか今後が楽しみ。そして,顕ちゃんと志のぶの関係がどうなっていくのかも気になるところ。

2019/11/26

本レビュー トッド・ローズ「ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい」

いろいろなことをカスタマイズできる時代になってきた。例えばウェブ広告。ユーザーがアクセスした履歴をもとに,そのユーザーが興味をもちそうなもの,購買につながりそうなものの広告を提示してくる。例えば飲み物。スターバックスやタピオカティー屋では,飲み物に好みのトッピングを加えたりして自分好みにできる。例えばパーソナル○○の類。利用者の体質や希望に合わせて痩せるプランを作り,二人三脚で支援してくれるトレーナーもいれば,利用者の好みや体型を考慮して服を選び貸してくれるサービスもある。そう,人はみんな違うのだ。そんな当たり前の事実をベースにしたサービスが増え,以前よりも多くの人が手軽に享受できる社会になってきた。

トッド・ローズ「ハーバードの個性学入門:平均思考は捨てなさい」は,平均主義から脱却し,それぞれの個の違いにもっと目を向けるよう促す本だ。19世紀に「平均」の考え方が生まれて以来,人はあらゆる場面で平均を使ってきた。平均的な体のサイズ,平均的な知能,ある年齢における平均的な行動,平均的な給与などなど。そして,平均から外れていると劣っていると判断されたり,何か問題が起こっているんじゃないかと感じてしまったり,はたまた平均に近づくべく努力したりと,人は「平均」という存在に踊らされてしまう。著者の専門は個性学。平均主義から解放され,個が個として評価され,判断され,個が自分の力を存分に発揮して充実した生活を送ることができる社会を求めている。

個性学は,バラツキの原理,コンテクストの原理,迂回路の原理,の3つの原理によって支えられているという。
バラツキの原理とは,人間の資質や能力にはバラツキがあるということ。体の大きさ,知性,走る速さなどあらゆる次元においてバラツキが認められる。コンテクストの原理とは,人の行動は特定の状況によって左右されるということ。人格的特性は人の行動の予測にほとんど役に立たない。だから,私は○○な性格だ,ではなく,私は○○の状況では○○に振る舞う傾向がある,などと考えるべきだ。また,人を評価するときにも,あの人は○○だ,ではなく,あの人は○○なときに○○のような行動をとる,といったデータをもとにすべきだ。迂回路の原理とは,どんなゴールを目指そうとも,そこにたどり着く道はいくつもあってどれも妥当であり,最適経路は個性によって決まるということ。スピードも順序も人によって異なる。

非常に共感できる内容だった。年を重ねるにつれてだいぶ落ち着いてきて,今となっては,「私は私だし」と開き直っているというか肝が据わってきた状態がもはやデフォルト,周りに煽られて不安になることもそうそうなくなってきたが,20代の頃は何年もの間,みんなと違うことの不安と恐怖が心の中でグルグルしていた。特に新卒で入った会社をやめてからはひどかった。また,周りで結婚が相次いだ時期,みんなの人生を素直に祝福するのが難しいこともあった。子どもの頃は,周囲の大人から特別扱いされるのがひどく嫌だった。どれもこれも,周り―といっても狭い範囲の知り合いや世間の常識などと比較して,自分のそこからの外れ具合を悲観したからである。
でも結局,自分が心から求めていることを達成したり手に入れたりすること,自分が好きなものを自由に愛でたり楽しんだりすること,あくまでも自分主体で自分の人生を作っていく,心地よいものにしていくことが私のすべきことだと今は思っている。そのために私は今日も努力する。

2019/11/08

本レビュー 千葉雅也「勉強の哲学 来たるべきバカのために」

「勉強の哲学 来たるべきバカのために」とても面白かった。勉強のプロセスをフランス現代思想,言語論と著者の経験をベースにして論じていく内容だが,私自身が勉強をしていてこれまでに感じてきたモヤモヤをすくい,答えのようなものを提示してくれ,また,親切丁寧に話を進めてくれるので置いてけぼりにされずに済んだ。この本はぜひ,これから学問を始めようとする高校生や大学生に読んでほしいし,むしろその頃の私が読みたかった。

著者の論理展開を追うために,原理編の内容を中心に今回はメモを作った。(本書は原理編と実践編から成っている)。なので,本の内容紹介はこちらから(クリックすれば拡大されます)。

ところで,私は勉強することが習慣化しているほうだと思う。私はなんのために勉強するのだろう?自分の興味のあることをもっと知りたいというのはある。でもそれと同時に,勉強をすることで少し生きやすくなるなという実感が出てきた。ようやく出てきた,と言ったほうがいいかもしれない。日々生きていて困ったときや悩んだとき,勉強によって培ってきたものが,生活での負担を少し減らしてくれるのである。そして,そういう勉強,つまり自分のリアルな生活に根付いている/リンクしている勉強のほうが続くし,深堀りされていく。勉強するだけ生きやすくなるのだから当たり前だ。
そのバリエーションは多岐に渡る。単純なものでいえば英語。ここ最近,ボキャブラリーを増やす必要があって2000語ちょっとの単語を意図的に頭にインストールしたのだが,そのおかげで英文理解するのが前より楽になったし,長文を読むこと,長時間集中して英語を聞くことへの抵抗も若干減った。また,英語でのアウトプットで使える単語が増え,幅が広がった。また,例えば人間関係。私の漫画好きは楽しみと勉強を兼ねている。漫画で描かれるあらゆる人間関係は,私のリアルな生活での人間関係で参考になることが多い。それは,リアルな生活での人間関係を別の視点で捉えることを可能にしたり,自分がどういう人間関係を求めているのか知るきっかけになったりする。また,人は何かに対してどのように感じたり考えたりするのか,自分のとった態度は相手にどう影響したのか,自分はどんな態度をとるべきなのか,などの収集,謎解き,シミュレーションの参考になることも多い。
また,勉強したことは上記したような直接的なつながりだけでなく,場や時をまたぐ間接的なつながりもある。どこかで勉強したことが,その分野以外で応用が効くことは多々あると実感しているし,リアルな生活で何かを体験したことで,だいぶ前に勉強したことがふと腹落ちし,それによってまた負担が減っていくこともある。

勉強は,混沌状態にほのかな光を与えてくれるようなものだと思う。勉強したからといってすべては明確にならない。でも,勉強をすることで少しだけ混沌とした状態が整理される。でもそれは一時的なもの。生きていれば混沌状態がデフォルトなので,勉強は続く。そんなわけで,私の勉強は続いていく。

2019/10/27

本レビュー 信田さよ子「タフラブという快刀 「関係」の息苦しさから自由になるために」

久しぶりに信田さよ子さんの本を読んだ。最近,子育てに関する新刊を出されたのだが,それについてアマゾンで見ていたとき,偶然見つけた「タフラブという快刀」。タイトルに惹かれ,むしろこっちの本が気になってしまった。手放す愛・見守る愛としての”タフラブ”を人間関係において実践していくことで,自分も相手もそれぞれが個として,適度な距離感で自分の人生を生きることを提案する。
私は信田さんの本を数冊読んだことがあり,クライアントへのアプローチの仕方や考え方に共感している。「タフラブ」でもアプローチの仕方や考え方は共通。以前,アダルトチルドレン(AC)関連の情報を漁っていたときに出会った本「母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き」は,私にとってはアイオープナーにもなり,ある意味救いにもなり,共依存について興味を持ち,考えるきっかけになったように思う。また,「カウンセラーは何を見ているか」では,臨床心理士の仕事がどんな感じなのかを知るのにお世話になり,信田さんの若い頃の精神病院での経験談には引き込まれた。

信田さんは,少なくとも私が読んだ著書では,いつも人間関係,特に家族関係や恋人・夫婦関係などの親密とされる関係における現実をこれでもかというくらい突きつけてくる。でも,フィクションの世界や世間における耳障りのいい話に慣れている私にはそれくらいがちょうどいい。じゃないと,フィクションの世界や世間における耳障りのいい話=現実におけるデフォルトと勘違いしてしまうから。世間で良いとされる「お互い分かり合える」や「あなたのためを思って」がいかに欺瞞に満ちたものか,女性がいかに,社会からの暗黙の了解によって我慢せざるを得ない状況に陥っているか,子がいかに親の欲望のために使われているか,そんなことを淡々と伝えてくれる。

家族や恋人などは,濃く深い関係になるがゆえ,互いに欲望の押しつけや理解の強要,甘えなどが生じがちだ。そして,家族だから,恋人だからなどの理由で他人には決してしないようなことでも許されたり,どれだけ傷ついてもそれが普通だと受け入れてしまったりする。信田さんは,家族を治外法権の無法地帯と書いているが,確かになと思った。よっぽどのことが起こらない限り,第三者がその関係に立ち入ることはないからだ。しかも,たとえ第三者が立ち入ったとしても,彼ら・彼女らが適切な対応を心得ていない場合,問題を余計にこじらせたりする。なんと悩ましいことか。

信田さんがこじれた関係の解決にすすめるのは,「理解の断念」と「問題の切り分け」である。「理解の断念」については,私とあなたは別の人間であり,別々の人間が分かり合う,理解し合うのは所詮無理な話。それを認め,それを前提に相手とコミュニケーションをとる。タフラブは,相手にわかってもらおう,わからせよう,わかってあげようとはしない愛,理解し合いたい,コミュニケーションをとりたいという自分勝手な欲望や思い込みを手放す愛であるという。「問題の切り分け」は,誰の問題かを明らかにして,それぞれが自分の問題と限界に向き合うことだ。そして,他者の問題は他者に返さなければならない。また,関係がこじれるときの2種類の,相手への一方的な侵入・境界侵犯を想定している。自分を傷つけた人に対して「なぜ相手は自分をこんなに傷つけなければならなかったのか」を考えているうちに,相手の世界に入っていってしまうことと,相手を自分の思い通りにしたいという支配の2つである。どちらも関係に苦しんでいる方が問題の切り分けを行うしかない。苦しんでないほうは,相手が苦しんでいるなんて思っているわけもなく,要求しても無駄だからである。また,日本では自他の区別なく相手の身になって何かをすることに価値が置かれてきた,ということにも触れている。本書には,こじれた関係を解消させていくケーススタディがいくつか紹介されているが,読みながら少し涙してしまった。関係改善のための行動は,本当に勇気がいることだ。葛藤・恐怖・不安の中で一歩を踏み出し,実際に行動した人たちに拍手したいくらいだ。

信田さんは,タフラブには寂しさが伴うという。タフに生きることは寂しさと共存することだと。そして,寂しさを分散させるために,目的別(食事に行くなら…,映画に行くなら…,愚痴を言い合うなら…など)の人間関係を複数用意しておくことを勧めている。タフラブを土台とした関係は寂しい,でも安全な関係は実現できるというわけだ。

個が個として独立を保ちながら,紙の上だけでなく実社会でいかなるときも人権を保証された状態で,自分以外の個とどう共存していくか…課題。

2019/07/02

私もがんばろっ! -漫画記 たなかマルメロ「俺たちマジ校デストロイ」,モリエサトシ「星空のカラス」

久しぶりの漫画レビュー。今日は最近読んだ漫画を2つ紹介したい。たなかマルメロさんの「俺たちマジ校デストロイ」と,モリエサトシさんの「星空のカラス」だ。読後感はどちらの作品も「私もがんばろっ!」。主人公たちがやりたいこと,成し遂げたいことに向かってガシガシ突き進んでいく姿はかっこよく,読んでいてパワーをもらえる。

・たなかマルメロ「俺たちマジ校デストロイ」
ネオアイドルとしての活動に精を出す,男子高校生の物語。平凡な日常を過ごしていた男子高校生のトモは,道端でもらったチラシに書いてあった”ネオアイドル”(アイドルのようなもの)に興味を持つ。アプリに登録さえすれば,誰でもネオアイドルとして活動できるということで,幼馴染のニーナと友達のメグを誘って早速登録。登録したはいいものの,ネオアイドルって何するんだ!?状態の3人。グループ名を決めることに始まり,学校でライブしたり,隣のクラスのキスケにグループの作曲家になってもらうべく粘ったり,体力つけるのにトレーニングしたり,テーマ別で開催される一般公開ライブに出たり,別のクラスのネオアイドル経験者のミユとジュンや風紀委員長のユッキーを誘ってメンバーを増やしたり,別のネオアイドルと仲良くなったり,と彼らの日々を綴っていく内容だ。
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 登場人物は主要メンバーだけでも十分多い(トモたちのグループ「マジ校デストロイ」で既にメンバー6人+プロデューサー1人)が,誰もが誰かの影に隠れることなく,それぞれがキャラ立ちしている。見た目も性格も全然違うが,誰もがなんかしら弱いところや,心のもやもや・キズを持っていて,でもみんなそれぞれにいいところがあり,それらが絡み合って一つのストーリーになっている。それが本当に面白い。問題が起これば解決し,なんだかんだありつつも前向きに進んでいくメンバーたち。そして,それぞれが持っているもやもややキズは,別のメンバーの発言や行動によって癒やされたり,そこから解放されたりもする。お互いがお互いを想って大切にしているさまがよく伝わってくる。彼らが彼ららしく,みんなでゼロからネオアイドル「マジ校デストロイ」を作り上げていくさまは,本当に応援したくなる!!!メンバー全員好きなのだけど,私はトモとニーナ推し!トモはスマホの待ち受けに,ニーナはスマホキーボードの背景に画像をセットしたよ!そして!マルメロさんといえば絶対笑顔!キャラたちの笑顔が本当に素敵なのだ。もうなんだろうね,全てがクリアになって晴れ渡ったような,それこそとびきりの笑顔を見せてくれるんですよ!!スクショした笑顔,貼っときます!
ジュン
トモ
ちなみに,「マジ校デストロイ」以外のネオアイドルたちのキャラも濃ゆい。たくさんのキャラを立たせ,描き分け,まとまったストーリーへと展開するマルメロさん,ホントに尊敬しかない。
そうそう,「マジ校デストロイ」はツイッターアカウント(https://twitter.com/majiko__23)も持っている。メンバーがつぶやいているという体で,日常のつぶやきや彼らの写真(実際は彼らのイラスト)をツイートしているのだが,そこにもそれぞれのキャラの性格が反映されていて,「マジ校デストロイ」本当は実在してるんじゃないか?と思うくらいだ。
実は,作者のたなかマルメロさんは,おげれつたなか名義でBL作品も描いている。というより,おげれつたなかのほうが知れ渡っているかもしれない。私はおげれつさんの作品もすごく好きだ。やはり,ちょっとこじらせているような男性がよく登場するのだが,それらは相手からの愛情で少しずつ癒やされていったり,落ち着いていったりして,最終的には,あぁ素敵な2人だな,よかったねー!!と,2人を見守る隊の1人としてとても幸せな気分にひたれる。もちろん,マジ校同様,キャラたちの笑顔も本当に素敵なのだ!BLに抵抗ない方は,「エスケープジャーニー」,「怪物」シリーズ(ほどける怪物,はだける怪物),「ヤリチン☆ビッチ部」もオススメ。

・モリエサトシ「星空のカラス」 
全8巻
囲碁のプロ棋士,さらにはその上を目指す女子中学生の物語。プロ棋士だったおじいちゃんに小さい頃囲碁を教わった烏丸和歌は,囲碁が大好きな女子中学生。いつものように碁会所で囲碁を打っていた和歌はプロ棋士の男子高校生プロ棋士,鷺坂総司と出会う。和歌の総司に対する最初の印象は最悪だったものの,彼の名人戦の試合を見て,彼の強さや勝利に対する執念に強く惹かれ,彼と勝負できるようになるために強くなることを決意。彼を「ししょー」とし,親からの反対や挫折,幼馴染や院生仲間との勝負などを経て,和歌は成長し,総司もまた名人戦で勝利し名人となるなど,腕を上げていく。和歌も総司も,囲碁バカと言われるくらい囲碁のことしか頭にない。それくらい囲碁に魅せられ,囲碁に苦しめられ,囲碁を愛し,強くなることを求め続けるさまはカッコいい。囲碁試合自体の描写は少なめだが,登場人物たちの囲碁に対する姿勢や囲碁を打つときの気迫は十分に伝わってくる。
2巻より
和歌は総司に対して恋心を抱いていて,総司も和歌のことを気に入っているのだけど,2人の関係は恋愛というよりも,師匠と弟子,あるいは囲碁の同志という感じである。囲碁を通して相手のことを理解するし,囲碁が2人の関係を深く特別なものにしている,という感じだ。
和歌はまっすぐ素直で負けても折れない強さがある。よく笑うしよく泣く。ちなみに総司はひねくれ者だ。そんな和歌はときおり,とても大人びた発言をするのだが,私がぐっときたシーンはこれ。「といつめたってひとの心は動かせないんだよ。変えられるのはその人の本当にカッコいい所なの」。読んだ瞬間,うん,そうだよ,ほんとにそのとおりだよ…と,この和歌に打ちのめされている少年のようになた。そして,もし自分が誰かを変えたい,変わってほしいと願うなら,自分がその人に対してカッコいい姿を見せ続けなければならないのだろう,と思った。
アプリ「マンガPark」と
「LINEマンガ」で全話無料で読めるよ
囲碁について,この漫画を読んで興味が湧いたので,ルールややり方を調べてみた。そういえば,私の好きな織田信長も囲碁が強かったとかなんとか……。早速囲碁アプリをインストールして,何度かコンピューターと対戦してみたが,いちばん下のランクにも勝てる気配が全くない。こりゃ先に詰碁をやるべきかな?という感じである。日曜日などによくEテレで放送されてる囲碁番組は,相変わらず見てもよく分からんのだが,昔はこんなん何が楽しいんだろう?と思っていたものが,今は高度過ぎてよく分からないな?に変化した。漫画をきっかけにして興味関心が広がることは私はよくあるのだが,囲碁の世界を私に開いてくれたことがまた嬉しい。

ちなみに,7巻の表紙の総司はスマホのロック画面に設定されてるよ!
以上2作品,とてもオススメなのでぜひ読んでください!

2019/06/28

コーチング関連本を読んでるよ Week 31~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。あと少し!

◇「ケーススタディで学ぶ 「コーチング」に強くなる本・応用編 人材育成に効果をあげるスキルアップ73の視点」本間正人,本間直人
本間正人さんのコーチング本といえば,ビジネス場面の会話脚本を使ってコーチングの手法を教示してくれるもの。今回もその手法は踏襲しつつ,応用編ということで,技術部門や家族経営の会社場面,ひとりよがりのコーチング,部下と上司に挟まれた中間管理職向けのものなど,これまでと異なる場面を想定。それらの場面での会話例を通じてコーチングのtipsを73個くれる。
会話例では,確かにコーチングをしているのであろう,ただその一方で,相手を上手く転がしてる感を感じるやりとりもちらほら。これは別の本間さんの著作の会話例を読んでいて感じたことでもあるのだが。
tipsの1つの「表現のやわらげ方に注意する」を読んでいたとき,ギクッとなった。これ私よくやるやつだと……。

◇「駆け出しマネジャー アレックス コーチングに燃える」マックス・ランズバーグ
本書の主人公は,シニアマネージャーへの昇進を控え,休暇を過ごすアレックス。休暇中,彼は自分のこれまでの会社内での振る舞いや歩みを振り返り,テープレコーダーに録音していく,という設定で話が進む。以前は部下に対する命令ばかりで人使いの荒かったアレックスが,コーチングを取り入れて変化していった様を描きつつ,コーチングを実践する際のポイントを提示していくというスタイルの本だ。
コーチングの誤解の1つは,コーチングをするには相手をよく知らなければならないというもの。著者は,相手よりも自分自身をよく知れと言う。コーチングスキルを適用する際,自分の中の心理的な壁に阻まれやすいからだ。また,コーチングは人助けのためにするのも誤解のようだ。コーチングをすることで自身が得る利益は大きい。著者は,自分自身の時間を作れ,対人能力が向上し,社内での地位向上に役立ち,仕事が喜びになり,強力な支持者をつくれると言う。
また,本書ではコーチングの際の注意点として,相手に深入りしすぎないことを挙げていた。心理学者じゃないんだから,心理分析を始めたり,深層心理など暴いたりするべきではない。

◇「武田建のコーチングの心理学」武田建
アメリカでカウンセリングや行動療法について学んだ著者。これらの心理学の理論をベースに,大学のアメフト部の監督として長年コーチングを行ってきたとのこと。
褒めることや叱ることについては,オペラント条件づけの理論に基づき,適切なタイミングと内容で褒めたり叱ったりし,行動を強化したり消去したりすることを提案している。
また,心身の緊張を解くことがパフォーマンスの向上をもたらすとし,身体弛緩の方法も具体的に提示。イメージトレーニングを詳細に行うことでパフォーマンスをリハーサルしておくことの効果も述べている。
全体を通して,とても温かさを感じる本だった。語り口は優しく,丁寧に話が進められている。

◇「エンパワーメント・コミュニケーション」岸英光
コミュニケーション=コミュニケーションによって引き起こされる私たちの中での変化とする著者。当人にとって実りのある変化を生じさせるコミュニケーションについて提示し,コミュニケーションの可能性や力を感じさせる内容になっている。
著者はテクニックに走らないコミュニケーションを主張する。be(あり方)が定まっていれば,それによって適切なdo(行動)が起こり,適切なhave(結果)が生じる。beがろくでもないところにdoしてhaveを得ようとしてもそれは無理があるというものなのだ。自分がその場そのシチュエーションでどうあるのか,を明確にし,それに応じたdo,haveと進んでいくことが理想だ。
また本書では,人がいかにとらわれた存在かを述べている。感情や感覚に乗っ取られて物事を正確に見ることができなかったり,思い込みをしたり,そして自分が囚われていることにもなかなか気づかない。そこで,自分自身を観察し,自分の感情を味わうことを提唱する。「人は自分の行動を止めるためには何でも使う」というのは印象的だった。しない言い訳のためにクリエイティビティを発揮するわけだ。だから,「○○だからできない」の〇〇を疑わなければならない。○○はたいていの場合思い込みで,考えれば可能な方法は出てくる。
コミュニケーションに関する私の感覚や考え方にとてもマッチする本だった。

◇「24時間で凡人がトップセールスに変わる!コーチング営業」林健太郎
著者は,売れる営業になるために,まずは自分自身を思い込みから開放し,そのうえで「顧客を勝たせる」営業を行うことを推奨する。苫米地英人氏の提唱する理論を踏襲したセルフコーチング手法に加え,著者自身の営業経験を盛り込んだ内容である。
「顧客を勝たせる」とは,顧客がいつ何を得たいのかを的確に把握し,そのタイミングでベストなものを提案するということである。相手の言葉や態度を観察し,相手の本音・気持ちを理解することが重要。そして,顧客の得たい!にマッチングさせる形で営業や交渉を行っていく。常に顧客視点での営業であり,自社のサービス・製品をやみくもにアピールしたり他社のサービス・製品をけなしたりすることはない。顧客にとって自社のサービス・製品が今必要ないと判断されるのであれば,時機をうかがうし,他社のサービス・製品に興味がある場合は,そっちも含めて検討することを提案する。そのようなやりとりを通して顧客との信頼関係が生まれ,価格が少し高くても買ってもらえたり,顧客がまた別の顧客を呼んでくれたりしてビジネスが広がっていくというわけだ。

◇「コーチング&カウンセリングのプロが書いたコーチング・センスが身につくスキル―「自信がない」「やりたくない」それでも結果を出すコミュニケーション・スキル」岸英光
先に書いた,「エンパワーメントコミュニケーション」の続編。前作で記されていたコミュニケーションのスタイルをベースに,本書ではコーチングの手法を説く。
これまで読んできた他のコーチング本に比べて,本書はブレーンストーミングについて多くのページを割き(20ページ程度),そのやり方を具体的に示している。ブレーンストーミングは,達成したい結果を得るにはどのような方法が可能かを探るときに利用する。
また,日々のコーチングにおいてコーチはクライアントのディブリーフィング(振り返り)を一緒に行うことを提唱する。著者は,やったことの「反省」は意味がない,何をしたらどうなったのかをありのまま捉えよと言っていた。そして,何が機能し,何が機能しなかったのか,何が役に立ち,何が役に立たなかったのかを分別し,機能したものや役にたったものは続けたり応用したりし,そうでないものはやめるなどして,新たな可能性を探っていくようサポートしていくのだ。
また,責任についても考察している。責任とは,response+abilityつまり,反応/対応する能力。著者は責任をとっている人は,「覚めており,自分の仕事に何が起きているか,いつもピンときて,明確にし,手を打つ能力をもっている人」とする。つまり,責任は明確な行動を呼ぶ。そして責任と言う言葉の意味するところは,「ある立場をとる」に近いとしている。立場をとることで行動が生まれ,結果を生むことができるからだ。また,立場をとることはストレス抵抗力を強めることにも寄与するようだ。

◇「グループ・コーチング入門」本間正人
今回の本間氏の本では,コーチとクライアント1対1ではなく,1対多数のグループコーチングを扱う。多数といっても,それぞれ悩みや問題を抱えたクライアントというよりは,会社組織の部内等でのミーティングをコーチングの手法を使って行いましょうといった感じである。部内で目標やビジョンを共有し,チームのほかのメンバーと情報共有をしつつチーム内の問題をコーチングの手法で解決していく,といった感じだ。ここでコーチは,ファシリテーターのような役割が求められる。チームメンバーの性格を生かしつつ,話し合いが円滑に効果的に進むようにマネジメントするのだ。
本間氏の本ではお馴染みのケーススタディを読んでいたら,チームのこと,最近起きてること,会議をどう進めるかの計画など,さまざまなことを把握し,考え,よく観察してないとコーチをうまく務めることはできないだろうなという印象。

◇「図解入門ビジネス 最新コーチングの手法と実践がよ~くわかる本[第3版]」谷口祥子
280ページ近くある厚い本。見開き1ページで1つの話題を扱い,コーチングの基本と場面ごとでのコーチングの活かし方,コーチングのベースとなっている心理学の知見と,コーチが活用できる心理学の理論などを収めている。
個人的には最後2章分にわたる心理学の話題にひかれた。わたしは心理学専攻で,8年もけっこう幅広く学んだつもりだが,コーチングを扱う教授はいなかったし,教科書等でも扱われなかった。だが,コーチングの本を読んでいるとロジャーズのクライアント中心療法や認知行動療法,ポジティブ心理学に通じるような話もけっこうある。読みながら,自分が今まで学んだ心理学を再度軽くではあるが学べたし,今回初めて知った事柄・領域もあり,新たに知識を得ることができた。

122/122 読了


ついに読了です!パチパチパチパチパチ!

2019/06/16

コーチング関連本を読んでるよ Week 30

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。残り20冊!

◇「NLPでコーチング-最高の人生を生きるためのライフ・コーチング実践ガイド-」ジョセフ・オコナー,アンドレア・ラゲス
タイトル通り,コーチングの1つの流派であるNLPコーチングについて取り扱った内容。NLPコーチングの特徴の一つは,クライアントの使う言葉や態度から,彼らがどの感覚器官を重視しているかを把握し,それに対応した言葉遣いや態度をコーチも示すということである。
各章末に,行動のステップ「あなたが理解したいと思うなら行動することです。」と書かれており,行動がいかに重要かをリマインドされているのがよかった。そうなのだよ,結局行動することによってしか変わっていかないのよね。
実はこの本,「コーチングのすべて」の著者が書いている。「コーチングの全て」にもこの本にも著者が見た夢の話が出てくるのだが,これがコーチングとどう関連しているかがいまいち分からなかった。


◇「チームコーチング――集団の知恵と力を引き出す技術」ピーター・ホーキンズ
コーチングというと,個人相手になされることが多い。組織内でのコーチングも,組織の構成員それぞれに対して行うのが一般的だ。本書は,組織のコーチングは,個人に対して行っても意味がないとする。個人ではなく,チームに対して行わなくては。チームの構成員ほか,顧客や株主,取引先などさまざまな人との関係の中で,チームが最大限力を発揮し,高業績を上げるためにコーチングを行う……その方法を解くのが本書である。
高業績を上げるチームに不可欠な5つの原則(任務を与える・明らかにする・共創する・つなぐ・コアラーニング)や,コーチングプロセス(CID-CLEARモデル),コーチングに使える測定ツールなどを提供する。
本書で何度か出てきたワードで気になったのが,アンラーン(unlearn)。現状効果的ではない知識や習慣,スキルなどを働かせないようにすることだ。それらがあるせいで,何か新しく身につけよう,学ぼうとしても上手くいかない。アンラーンをいかに促進させるかも,効果的な学習のための鍵だと思う。

◇「教師のほめ方叱り方コーチング」神谷和宏
中学教師経験の長いプロコーチの著者によるコーチング本。児童・生徒に対して,コーチングに基づいてどのように褒めと叱りを行うか,を見開き1トピックで紹介する。単純化しているきらいがあるものの,イラストも豊富でわかりやすい。著者は,コーチングを自身で取り入れてから,生徒たちとの関係がうまくいくようになったようだ。そして,褒めと叱りは7:3くらいの割合がちょうどよいとしている。
これまでの経験から、私自身は叱ることが難しいと感じている。ここは叱るべきところなのか?と考えてしまうことが多いからだ。つまり,自分の中で,こういうときは叱るという基準が定まっていないからだと思う。叱るということについて,試行錯誤していきたいと思った。

◇「ザ・コーチ2 ― 神様からのギフト」谷口貴彦
人生にちょっとした行き詰まりを感じている女性が主人公。会社の研修を通じてコーチと出会い,コーチングを体験する中で,会社内での人間関係や家族との関係を改善し,自分に無理せず,前向きに生きていくようになるまで描く。主人公の心情や人間関係がどんなものか,物語の中でしっかり描写されていたこともあり,読んでいる途中で感情移入していることに気づいた。描かれているコーチングのベースとなる考え方や手法も理解しやすく,物語を読みながらセルフコーチングすることも可能である。
本書で展開されているコーチングでは,まず,自分の現状を確認する。今の自分が,仕事や家族などの面でどのような状態かである。そして,現状を変えるためには,まず自分の基盤を整えることが必要と説く。そのプロセスは,自己受容→自己信頼→自己尊重である。自己受容はあるがままの自分をすべて受け入れること,自己信頼は叶えたいことや成し遂げたいことは自分でできると自分に任せること,自己尊重は自分を守り,尊び,労ることである。自己の基盤が整ってきたら,次はエネルギーチャージである。これには,夢や目標,そこに向かう動機や価値観がいる。また,夢や目標には賞味期限があるため,しょっちゅう描かないといけないとも説く。夢や目標があれば,あとはそれを達成するための知識やツールを得て,行動するのみだ。もちろん,そうトントン拍子に事は運ばない。本書では行動や成長をストップさせる阻害要因についても触れられており,主人公が阻害要因を取り払っていく様子も描かれている。

物語なのでうまく出来すぎているキライはあるかもしれない。でも,読んでいてほっこりとした温かい気持ちになった。そして,読みながら主人公の疑似体験ができるためか,今まで読んだどのセルフコーチング関連本よりも,当事者意識を持って読めたように思う。

◇「子供を伸ばす教育現場」和田秀樹
精神科医の和田秀樹氏による,教育現場で働く12人へのインタビュー集。インタビュー相手は,私立中学の校長や塾・予備校の代表,音楽教育や体育教育,合気道による教育を行う機関の代表等である。
本書の中で,和田氏自身は日本の公教育について危機感を抱いている。この本が発行されたのは2009年。ゆとり教育の燦々たる結果が出て,ゆとり教育やめよう,となっていた頃のことである。インタビュー相手は自身の教育に信念を持ち,子どもたちの能力を生かしていこう,とする人ばかり。ゆとり教育によって,上位層を活かすことも下位層を底上げすることもできず,ただただ生徒全体の学力が低下してしまったこと,子どもに様々な体験をさせ,コレ!というものに出会わせるうようにしていくこと,競争による弊害ばかりでなく,いろいろな競争をさせて自分の得意を見つけたり,できる人に追いつこうと努力するという益を生かしていくこと,などが印象的だった。

◇「教師力アップのためのコーチング入門―子どもを伸ばすコツと会話術」河北隆子
ビジネス現場でコーチをしてきた著者。現役教師への取材をベースに,学校現場でどうコーチングを展開するかを述べている。コーチングに基づいた,ベースとなる生徒への接し方・関係の作り方に始まり,シチュエーションごとにどう対応するかのケーススタディもある。
生徒と教師はパートナー。安心・信頼のある関係の構築を。生徒自身の気づきを促すような言葉がけを。思い込みで生徒やクラス全体を見るのをやめ,現状を正しく,様々な人やことが関連し時間とともに変化していくシステムとして把握すること。教師間・教師保護者間でのコミュニケーションおよび良好な関係構築の重要性が心に残った。

◇「図解&会話例でわかるプロ教師の「最強」コーチング術 入門編 」中土井鉄信・井上郁夫
コーチング本でありながら,発達心理学やアドラー心理学,人が社会化していく過程などの心理学分野の知見が本書の半分くらいを占めている。心理学分野ので研究されてきた人間観をベースにして生徒をとらえつつ,コーチングによって彼らの力を引き出していきましょう,というわけだ。
アドラー心理学については,人の行動にはその人が達成したい目的が内在している,ということが私的にはいちばんの核だと思っている。個人個人はその目的を達成するために行動しているため,傍から見たら意味不明な行動も,本人的には理屈の通った行動なのである。自分および他者の目的を正しくはっきりと捉えられれば,人間関係の構築が今よりしやすくなるに違いない……。
会話例に載っていた,宿題をやってこない子に,やってこないことで先生ががっかりする→そういう気持ちを他人に起こさせることはいけないと思わせる→宿題をやるようになる,という話については,おかしいと思った。先生の機嫌とりのために宿題やるの?他人(の期待に沿わずに)をがっかりさせるのは悪いこと?そうやって子どもをコントロールするのは何か違くないだろうか。

◇「先生のためのセルフコーチング 自分への問い方次第で教師人生は変わる!」大前暁政
セルフコーチングの手法を記載した本。ベースとなるアイディアは,なりたい自分を強く強く思い描き続けることで,そうではない現状の自分に違和感を感じ,なりたい自分になるための行動が生じてくるという,苫米地英人氏が提唱するものである。理屈でガツガツ攻めてくる内容であった。個人的には,なりたい自分像を描くことの難しさ,自分を抑える存在の強固さを体感しているので,この方法でセルフコーチングが成功するとは思えない。
参考になった点は,よく聞く○○力の中身を解説してくれていることだ。本書では,教師特有の職業的知識や技能(学級担任向け)として,授業力・学級経営力・子どもへの対応力を提示し,それぞれの力とはどんなものかをさらに箇条書きで提示している。

◇「ベーシック・コーチング実践ワークブック」土岐優美
コーチングの基本を見開き1ページで教えてくれる本。ページ左側は穴埋め式のワークがついていて,コーチングの知識に関する自分の理解度を測ったり,自分だったら相手のその発言にどう返すかを手を動かしながら考えられるようになっている。また本書の後半では,コーチングがあらゆる場面で生かせるとして,会社の上司-部下関係のみならず,営業や接客,キャリアコンサルティング,介護,親子・夫婦関係,恋愛関係,資格取得・スキルアップ等への活かし方の概略を記載している。
本書で学んだことの1つは,目標は自分との約束であるということ。私はといえば,目標を立てる際はいつも外を向いていて,自分との約束と捉えたことはなかった。自分との約束は大切にしたい。

◇「もっとその気にさせるコーチング術」高畑好秀
子どもたちにスポーツを指導するコーチ向けのコーチング本。子どもたちとの関係構築の仕方やモチベーションの高め方,練習のさせ方,試合前後のメンタルの支え方などを掲載している。実践的で,すぐにでも取り入れられることが多い。
スポーツ関連コーチング本ではあるが,英語学習もスキル習得だからだろうか,これ取り入れたら役に立つだろうなというtipは複数あった。印象に残ったのは,子どもたちと指導者側での認識のズレをいかに埋めていくかに関して。子どもたちと指導者では見ている視点が違う。そして,それぞれが発する言葉に込められた意味も微妙に違う。例えば指導者が7割の力でボールを投げるように,と言って,子どもたちが7割のチカラでボールを投げても,それが果たして指導者の意味するところの7割と一致しているとは限らないのだ。だから,言葉だけでなく,実際にやらせながら指導するなどしてズレを修正して導いていく。
この手のズレは日常生活におけるさまざまな人との会話でも生じているに違いないので,ズレを小さくする伝え方,受け止め方を心がけたい。

◇「コーチングのプロが使っている質問力ノート」ルパート・イールズ=ホワイト
原著タイトルは「Ask The Right Question」。どのような質問をすれば,会話をすれば,相手にも自分にも有益な関係を作れるかに焦点が当てられた内容である。
本書では,質の高い人間関係を築くための会話は,目的を持った会話であるとする。それは,会話を始める→問題を明確にする→議論を発展させる→問題を解決する→行動を決める,と進行する。焦点を絞り,会話の参加者が会話後にどんな行動を起こすべきか理解することが求められる。それによって,達成感の共有がなされるのだ。
本書に示されている会話例で印象に残ったのは,相手の中にある1段階深い理由や目的を出させているところだ。これは,問題の明確化に当たる。人が何らかの行動を起こすとき,それなりの理由や目的が存在する。だが,理由や目的というのは自分の中のちょっと深いところに潜っているもので,問われて反射的に出てくる理由や目的だけでは的を得ていないことが往々にしてある。そこで,本書の会話例では,他にはどんなことがあるの?とか,何か別に問題があるんじゃない?などと,相手の発言内容を少しだけ掘り下げる質問をしているのだ。
また,質問の仕方一つで相手に考えさせる内容や答えが随分変わることを実感した。

114/122 読了

2019/06/09

コーチング関連本を読んでるよ Week 27~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。ついに残り30冊となりました。

◇「仕事は「外見」で決まる! コーチングのプロが教えるプレゼンスマネジメント」鈴木義幸
目線,相手との距離,話し方,顎の位置,姿勢などのノンバーバルな要素は,コミュニケーションの印象に大いに影響する。だから,それらをコントロールし,相手に誤解を与えないように,また,良い印象を与えられるようにしていこう,という目的で書かれている本。どのようなノンバーバルコミュニケーションが良い印象を与えるか,そして,どのような練習によってコントロールすることができるようになるか,がまとめてある。
個人的に練習したいのは,眼のコントロールと話し方。人ともう少し目線を合わせて話をするようにしたいし,言いたいことを分かってもらい,共感してもらいたいから。

◇「世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方」岡田昭人
英・オックスフォード大学大学院出身の著者による,オックスフォード大学での教育の仕方やオックスフォードの文化(どういう人が集まっているかなど)を紹介している。
オックスフォードの教育は,チュートリアルが主流。教員と学生が対話する中で, 知識や理解を深めていくという。 チュートリアルでは まず教員から自分が選んだ文献について えられた知識や それが自分の研究テーマとどう関わってくるかを尋ねられる。 一週間あたり最低でも5から10点の文献を読み込み知識を吸収すること, そしてそれをもとにエッセイを書くことが求められるとのこと。 次に 自分の書いたエッセイをもとにして,教員からの質問にすべて答えなければならない。 質問はあらかじめ与えられていた課題に関するものである。 例えば言葉の定義やそのように考えた根拠やデータ,批判的な議論がなされていないなどの指摘を受ける。 次の時間が終わると, 今回のチュートリアルで何を得たかや今後どのような展開をするかについて教員と学生は話し合いを行う。 これは討論ではなく 互いに協調する形での意見交換とのこと。
またオックスフォードでは,常識を打ち破る思考について日々訓練されているようだ。 それは,常識と思われることの真逆のことを考える→ 常識によって導かれている行動を批判する→ 常識を批判する場合の対策を考える→ 新しい常識の構築と効果の検証,という順でなされる。
また,3人1組で議論させる授業では,最初の1人は意見を述べ,2人目は1人目の意見を批判し,3人目は2人の意見を批判する。そして,最後にクラス全体で何を議論したかを話し合うという。 ”批判することは議論を深めることである”ということが 腹落ちしていないとなかなか難しいのではないだろうか。 そしてそれを楽しめるかどうかも。

◇「上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン」向後千春
向後さんには,大学時代に彼のサイトにお世話になった。統計や三角ロジックをだいぶ噛み砕いて教えてくれたからだ。本著も非常にわかりやすい。イラストを多用し,トピックごとの説明は完結,章末に確認テストがあるので理解度を自己評価できる。行動心理学・認知心理学・社会心理学の知見が散りばめられている。

◇「あなたを活かすコーチング―いつも「うまくいく人」の会話術」吉田典生
コーチングスキルとはどんなものかを,日常の会話や自身がコーチとしてどう対応したかのケーススタディなどを交えながら説明していく内容。マニュアルらしさはなく,コーチングってこんな感じか!という雰囲気を掴むのによいと思う。
自分と相手は違う,それぞれの相手に響くコミュニケーションを考え生み出していくこと,人が頑張るのには他人からの受け止めやサポートがいる,人は演じる動物である,を心に留めておく。

◇「コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで」ジョセフ・オコナー,アンドレア・ラゲス
コーチングの歴史に始まり,世界で展開されているコーチング手法のいくつか,人間の発達,異文化間でのコーチング,コーチングの未来などについて述べた本。タイトルどおり,コーチングに関してこれまで読んだどの本よりも多くの内容を扱っている。
これまで読んだコーチング本で,その手法に細かな違いがあることは分かっていたのだが,あるものはある流派を踏襲しており,あるものはその人独自のものなんだろうな,ということが分かって,私の中のコーチングに関する知識基盤を補強していくれるような本であった。とはいえ,全体を通して厚みのある内容なので,折に触れて読み返したいと思う。

◇「部下の行動が1カ月で変わる! 「行動コーチング」の教科書」石田淳
通常のコーチングは,クライアントの気持ちを高め,前向きにやる気にさせることは可能だが,目標達成という結果にどうも結びついていないんじゃないか?と主張し,結果を出すためのコーチングを提唱する。著者は,アメリカで行動分析を基にしたマネジメントを学んでおり,クライアントを”行動させる”ことに主眼を置く。行動して,結果が出て,だから,また行動するという好循環を回すことで成長を促すのである。
主張も手法も明確で分かりやすい。肝は,目標の裏にある動機づけ条件を正しく把握すること,目標達成のために必要な行動は,クライアントがちょっと頑張ればできるくらいの行動まで細かく細かく分解し,その行動をひたすらこなしていく。通常のコーチングでは行わないことの多い,どんな行動をすればよいか等のアドバイスも行う。つまり,行動するまでにクライアントがぶち当たるであろう障壁(何をしたらいいかわからない,自分にはそれができるとは思えないなど)をことごとくつぶし,実際の行動へと促すわけである。それでも行動しないとしたら,それはもはや動機づけ条件が誤っているということだ。また,行動したところで目標達成していないのだとしたら,それはすべき行動が間違っていたということである。と,結果が見えるから検証もしやすい。
共感できる内容であった。

◇「潜在能力をひきだすコーチングの技術」ジョン・ホイットモア
ティム・ギャルウェイのコーチング「インナー・ゲーム」の流れを組んだコーチングについての本。コーチングは,クライアントに主体性と責任を持たせるための手段とする。いずれもクライアントから生まれるものであり,他人からの強制はできない。そして,この2つを補完するのが「意識」である。問題に関連する情報を収集して知覚し,どう関連するか判断する,自分が経験していること,自分の身体の感覚を認識する,また自分の欲望や感情によって知覚がどう歪められるかを認識する…。要するに,現実の正確な把握である。意識を十分に稼働させることで,主体性は保たれる。よって,クライエントが自身の意識を高め,責任を引き受けるように,質問や行動計画づくり,態度でサポートしていくのがコーチングである。
チームコーチングに関しての記載もあり。組織内で成員の意識が帰属→自己主張→協力へと成長していく,というのを学んだ。
正直読みづらい本であった…。

◇「奇跡のコーチング クラウディオ・ラニエリ伝記」ガブリエル・マルコッティ,アルベルト・ポルヴェロージ
イギリスのサッカーチーム,レスターを優勝させた,クラウディオ・ラニエリの歩みをまとめた本。幼少期に始まり,選手時代,選手兼監督時代,監督時代と時系列で彼のエピソードをまとめている。著者はどちらも記者である。
欧州サッカーに門外漢の私が読むには難儀な本であった…。大量のカタカナの名前やサッカーの試合の展開など,内容のイメージ化があまりにもできなすぎて,流し読みになってしまった。なのでろくなコメントができない。

◇「コーチング・バイブル―本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション 」ヘンリー・キムジーハウス,キャレン・キムジーハウス,フィル・サンダー
こちらの本,今回読んだのは3rd edition なのだが,実はこの企画を始めたばかりの頃に(おそらく)前の版を読んでいた。結構内容が変化している,というのが読後の印象。前の版では、自分の成長を妨げる「グレムリン」の存在が私にとってはとても印象的だったのだが,今回の版では「グレムリン」という言葉は出て来ず,ほぼ同じ概念を表す言葉として「サボタージュ」という言葉が登場した。
で,「コーチングのすべて」を読んだ今,やっと私の理解が追いついたのだが,こちらの本は、コーチングの中でもCo-Activeコーチングと呼ばれる流派の考え方や手法をまとめたものである(前の版を読んだときには、コーチングの他の流派との絡みで捉えていなかった)。Co-Activeコーチングの基本は,クライアントとコーチの関係は,クライアントの目的を満たすことを目的として結ばれた対等なパートナーシップ(同盟)だということ。ここをベースに,人生における充実感(フルフィルメント),欲望や行動におけるバランス,クライアントに変化が生じるまでの一連のプロセスに着目して,コーチングを展開していく。コーチングに必要なコーチのスキルは,傾聴・直感・好奇心・行動と学習・自己管理である。
Co-Activeコーチングでは,クライアントの問題解決にのみ焦点を当てるのではない。その問題や課題がそのクライアントの人生とどのように関わっているのかといった,その人自身やその人の人生などその人全てに着目していく
また,クライアントは,自身の価値観に沿って生きることでの充実を得られるようサポートする。これらのことは共感できるポイントであった。

◇「コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目」青木安輝,小野仁美,髙原惠子,本間正人
日めくりカレンダーのように,1日に1つ,コーチングに関する小話を提供する本。4人のコーチが3ヶ月分ずつ担当しており,文体や内容にそれぞれのコーチのカラーが反映されているのがまた面白い。他者に対してコーチをしている人も,自分で自分をセルフコーチングするときにも参考にできるtipsがたくさんある。それぞれがストーリー仕立てになっているのでまとまりがあって読みやすい。ただ1話の分量は,新書サイズ半ページで収まるくらいの量で少なめ。なので,しっかりじっくりコーチングについて学ぼう!とするときよりも,基礎的なことを確認したい,要点を知りたい,ちょっと息抜きしたい,ときなどに手に取るとよいかと思う。


102/122 読了