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2018/12/04

コーチング関連本を読んでるよ Week 4

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「やってみよう!コーチング―8つのスキルで子どもの意欲を引き出す」石川尚子
著者が高校生に対して行った,高校生向けのキャリア相談の事例がたくさん盛り込まれた内容。傾聴,承認,質問,Iメッセージ,リフレーミング,フューチャーペーシング等のコーチングのスキルが,事例を交えながら生き生きと紹介されている。
「相手の可能性を信じる」。このスタンス・あり方を著者は実践しているのが伝わってくる。だからこそ,高校生は著者に対して心を開き始めるし,何かをやろうという気になれる,頑張れる。信じてくれる人がいるということは,どれだけ心強いことだろう。私の好きなアニメ「ユーリ!!! on ICE」の7話はまさにそういうことなのだよ。極度のプレッシャーに潰されそうな勇利くんがコーチのヴィクトルに泣きながら訴える「僕が勝つって僕より信じてよ。黙ってていいから離れずにそばにいてよ」。当時の私の気持ちと相まって,初めてこのシーンを観たときからずっとずっと神セリフだと思っていたが,コーチ,教育者はこの言葉を真摯に受け止め,「信じる」ことを実践していくことが求められると思う。

◇「自分を変える習慣力 (Business Life 1)」三浦将
良い習慣を身につけることから自己変革を始めよう,ということで,習慣を身につけるためのtipsが丁寧にわかりやすく書かれている。企業の人材育成や組織開発,「習慣力」を身につけてもらうためのコーチング等を行っている著者による本。心理学関連の知見も盛り込んで理論にも触れているが,あくまでも実践を重視する三浦さん。知らない→知っているへ。知っている→できるへ。できる→やっているへ。習慣とは,それをすることが当然だと自動化されている状態,つまり,やっているの状態である。そもそも習慣を身につけることはそう簡単ではないことを主張しつつ,新しい習慣を身につけるための,取り組みやすいほんとに小さな第一歩を教えてくれる。
この本を読んでいて,個人的に身につけたい習慣が出てきて取り組み始めた。亀の歩みでも日々実践あるのみ。

◇「相手を変える習慣力 (BusinessLife 6)」三浦将
今回は,「相手を変える」ことに目的が置かれている。先の著書はセルフコーチング色が強かったのに対して,今回のは相手へのコーチング色が強い。といっても,承認,傾聴といった,コーチングの超基本事項を丁寧に話すことをメインとしており,そういうことが習慣になっている自分になること,そしてその自分と接するから相手も変化していく,という意味で「相手を変える」と言っている。決して強制的に相手を変えることをするわけではない。
「相手へのレッテル貼り」についてが印象に残った。人はついつい相手のことを勝手に解釈してしまう。だから「相手の現在の状態と相手の本質を切り離す」。また,相手がいることを想定して会話を再現し,そのあと,座る位置を変えるなどして相手の位置に身をおき,先程の言葉を浴びせられたときの感情や浴びせている自分がどう見えるかを観察する。そういうのを通して相手への思い込みを減らしていく。これもまた積み重ねあるのみだな…。

◇「才能スイッチ」三浦将
潜在意識を活かすためにリフレーミングを行うこと(認知のゆがみを修正していくこと),さらには創造性を生むための手法や高パフォーマンスの組織をいかに作っていくか等について書かれている。コーチングの基本姿勢ほか,著者の考え方のベースになっているアドラー心理学の内容も見られる。
潜在意識は,著者によれば,顕在意識を凌駕する力がある。そして,潜在意識の最大の欲求は「安心安全」。安心安全を脅かされたくないがゆえ,潜在意識は現状を変えることや変化することを嫌うという。つまり、潜在意識が安心安全を感じている状態を維持したまま気づきを起こしたり,行動を変えていかなければ,潜在意識の抵抗に会い,骨折り損になるうえ,劣等感等のネガティブ感情が増す結果となる。
ちなみに,潜在意識が危険を感じる状態とは,過度なストレスやプレッシャーのある状態・環境,悲観的になっている状態,勇気がくじかれている状態とのこと。自身ではリフレーミングによって,対人ではそういう状態にさせないような接し方をすることで潜在意識は守れる。 

◇「コーチングのプロが教える 「できる自分」を呼び覚ます一番シンプルな方法」三浦将
今回のは,自己肯定感に関する内容。日本人の自己肯定感の低さはよく言われていることだが,著者は,自己肯定感は元々どんな人にも十分に備わっているというスタンスをとる。それが生きていく中で,教育や文化などの環境要因によって削られていく。「~でなければならない」という思い込みは,自己肯定感を低くする大きな要因になるとのこと。それがその人を苦しめる。ということで,自分の中の思い込みをあぶり出し,リフレーミングし,リフレーミング後の行動を習慣化していくことで自己肯定感を徐々に高めていきましょう,と提案する。これまでの著者の本に書かれていたことの核となることを抽出し,それらにさらなる説明と新たな行動提案を加えた内容だった。行動を起こす前のマインドの問題を詳しく扱っているので,個人的にはこれまでに読んだ4冊の中でいちばんオススメ。
本書には自己肯定感の低い人の7つの特徴がまとまっているのだけど,身に覚えがありすぎてヒィィ……となったよ。ま,でもこれから変わっていけばいいのだしね。

◇「チャイルド・スタディ・コーチング―成績向上のための新しい秘密」ペガサス・プランニング
パソコン学習るコーチング兼学習のさせ方本。その子の習熟度に合った学習を自主的にさせるためにはどうすればいいか,が著者たちの経験に基づいて書かれている。
著者が大事にするのは,問題を解いたりノートにまとめたりするアウトプット学習である。分からない問題が出てきたら,分かるところまで戻って問題を解き理解していく。ノートに書くこと自体が学習になり,それを使って復習させる。
また,著者が塾のロールモデルとした松下村塾についてもページが裂かれている。松下村塾では塾生一人一人に合った臨機応変なものであり,内容や時間は塾生主体。先入観を捨て,塾生と平等な立場で接する,褒め上手でありつつ叱ることも徹底してなされる,塾生同士を競わせる,というのも松下村塾の特徴とのこと。

◇「対人援助のためのコーチング―利用者の自己決定とやる気をサポート」諏訪茂樹
医療・福祉現場で働く人をターゲット読者としたコーチング本。教科書・マニュアル的な要素が強い。事例もやや紋切り型感がある。著者は,開かれた質問(yes, noで答えるタイプではない質問)こそがコーチングの最も大切なことという。
プロセスレコードの手法(コーチングで行った会話を書き出し,複数人でその会話を振り返る)は自身のコーチングの振り返りや改善に使えると思った。

◇「コーチングの技術」菅原裕子
子育てコーチング本を書いている著者による,組織で行うコーチングに関する本。菅原さんの子育て本はこれまでに3冊読んだが,対大人向けコーチングということで趣は異なるものの,こちらもわかりやすく書かれている。
相手の話を,相手の意図を組んでそれを殺さないようにしながら聞くことは本当に難しい。相手の答えを聞く前に話し始めたり,意見を押し付けたりしてしまうこともしばしば。筆者の言葉を借りれば,聞くことの「待つ態勢」から「攻め態勢」になってしまうのだ。この本では,親子の会話を例にとりあげてさまざまな「攻め」パターンの反応を提示している。質問型・脅迫型・非難型・否定型・詮索型・ごまかし型・肯定型・説教型・命令型・忠告型・激励型…。私もついついやってるよなと身につまされる。そして,自分が誰かからそういう反応をされたときのことを思い出して,あぁ確かにすっきりしない気分になるよな…と思う。著者は,コミュニケーションの本来の目的は「相互理解」だという。そして,どういう反応・質問をするのが「相互理解」を促すのかを教えてくれる。

◇「怒ってばかりの子育てが変わるコーチング」最上輝未子
コーチングを取り入れた子育てで,イライラから抜け出そう!という,ママ向けの子育てコーチング本。著者はプロコーチである。
この本では,アサーティブコミュニケーションにも触れている。著者によれば,アサーティブコミュニケーションとは,「相手の権利を侵害することなく,自分はどうしたいのか
,何が必要なのか,そしてどう感じているのかを,相手に対して,誠実に,率直に,対等に,自信をもって伝えることのできる,コミュニケーション方と方法論のこと」。「子育て時には,親が自分の感情を整理して,伝えたいことを率直に,子ども対等な関係で伝える必要がある」。そのためには,事実と感情を分けること,特に,自分の一次感情(その出来事があった直後に沸き起こってきた感情)を的確に掴んでそれを率直に伝えることを勧めている。
アサーティブコミュニケーションは,何も子育て場面に限ったことではないよなと思う。表面的ではない人間関係を築きたいなら,対人全般で有効だろう。ただ経験上,一次感情は掴むのも,それを人に伝えるのもどれだけの勇気がいることか…,と最近思っている。

◇「コーチングのプロが教える質問の技術」 齋藤 淳子
コーチがクライアントに適切な質問を投げかけることは,コーチングのプロセスにおいて軽んじてはいけないことの一つである。クライアントは,その質問によって考えることをし始め,それは次の行動へとつながっていくからだ。そういうわけでこの本は,コーチングにおける”質問”をメインテーマとし,質問の種類や質問の仕方などを会話例を紹介しながらまとめている。
質問に関していろいろ書いてあるが,つまるところ,”相手のことを知ろう”という気持ちと”相手は答えを見つけられる/考えられる”と思う気持ちを根っこに置き,そこから放たれた質問が望ましい質問と解釈できる。

◇「チームリーダーのコーチング 基本とコツ」本間正人
以前読んだ,「図解 コーチングの「基本」が身につく本」とほぼ等しい内容。組織におけるコーチング本。端的にまとまっていてわかりやすい。
本間さんの本は,GROWモデルが登場する。GROWモデルは,コーチングステップを表している。クライアントはコーチングプロセスにおいて,G(goal)を明確にし,R(reality)を把握する。そしてGを達成するための(resource)を見つけ,O(options)を考える。そして,W(will)を確認しつつ実行へ移す,という流れである。ちなみに,選択肢を考えるときには,過去で1番上手くいった方法や,まだ試したことのないやり方,何かと何かの組み合わせ,逆に考えたらどうなるか……,こんなことはありえない!という極論,最もオーソドックスな方法とは……といったことを考えてみるのも手のようだ。コーチは,それぞれのプロセスにおいてクライアントとコミュニケーションをとり,”行動させる”。GROWモデルは,もちろんセルフコーチングでも活用可である。

◇「<【図解と実例】「初歩」からわかる!コーチング」本間正人
先に読んだ,「チームリーダーのコーチング 基本とコツ」と「図解 コーチングの「基本」が身につく本」とほぼ等しい内容。
この本に書かれていたほめると叱るについて少し取り上げると,著者によれば,ほめる=「事実に基づいて,本当のことを伝えること」で,叱る=「然るべきビジョンを示す」とのことである。ほめるとおだてるは違う。あくまでも事実を伝えるのが褒めの基本だそうだ。ということは,相手のことをよくよく観察し,相手の行動をやって当然,出来て当然というふうに考えないように心がけなければ。自分にとって出来ることだとなかなか難しいことではあるが。そして,叱ると怒るも似ているようで異なる。怒るのは感情的な行為であり,相手の行動を止めてしまうらしい。だから,ダメ出しではなく,うまくいっている状況が頭の中に描かれるように伝える。これが叱ることとのこと。ただし,フォローは忘れずにとな……

51/122 読了

2018/11/27

コーチング関連本を読んでるよ Week 3

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「ドントウォーリー! ビーハッピー!! 松岡修造の生き方コーチング」松岡修造
ピンクの表紙と,ピンクのセーターを着た松岡さんのインパクト大!な本書。ネットに寄せられた女性からのお悩みにアドバイスするという流れで進んでいく。といっても,一つ一つのお悩みに丁寧に答えていく,のではなく,女性から寄せられた具体的なお悩みはいくつかのカテゴリーに分類され(将来が不安,人間関係がうまくいかない,結婚について悩んでいる,等)そのお悩みカテゴリーに対して松岡さんが持論を述べる,という感じ。なので,お悩みの分類がおざなりなせいか,お悩み主が聞いていることとはずれたアドバイス・持論が載っているところ数箇所あった。
女性からのお悩みはいろいろあったよ。共感できるものもあるし,なんでそれ悩む?ってのもあるし。松岡さんのアドバイスは,「自分らしく生きる,自立する」というのが根底にあるように感じた。本書に登場する筆文字による松岡さんの一言アドバイスは,自筆だそうで…見ると引き締まる思いがしました。

◇「コーチング以前の上司の常識 「教え方」の教科書」古川裕倫
部下をどうやって働かせるか,どうやって一人前にしていくか,を考えたとき,コーチングよりもまずはティーチングを…そんな考えをもとに書かれた本。商社や芸能事務所での経験がある著者の提案・文章は明快だ。
コーチングとは,クライアントに質問しながら答えを導き出させることを主とするが,そもそも答えを導き出せるだけの,知識・経験なりのストックがなければ,導き出すことはできないのである。まぁ,クライアント自身の人生等に関することならそれでもいいだろう。だが,ビジネス場面となると話は別。仕事は待ってくれないし,基本的なやり方,常識,共通認識がある。それらがわかっていない人に考えさせたところで,周りの負担が増えるうえに,本人にとって仕事しづらい状況になってしまうのである。だから,著者はまず教えよというのだ。だからといって,命令だけせよとも言っていない。教え方の基本を提示しつつ,部下の癖や性格に合わせてた教え方や,部下への承認の必要性も述べている。つまり,コーチング場面におけるコーチの姿勢も組み込まれている。
私は著者の意見に賛成。目先の利益,自分にとっての利益ではなく,部下の○○年後を見据えて指導しようというスタイル,教育にとって外せないことだと思う。

◇「キッズコーチング」後藤英郎
子ども向け研修を行っている著者による,子育て本。子育てにおいて,親がしたほうがよいこと,しないほうがよいことがたくさん書かれている。それぞれ簡潔にまとまっているのでわかりやすいが,若干杓子定規感を感じる印象。子育ての基本方針のようなものの記載がないので,それぞれの提案は若干バラバラした感じがあるが,著者によれば,ありがとうと言える,挨拶のできる,靴を揃えられる,親に感謝できる,自分の良いところをたくさん知って自分のことが好き,の5つが子どもの心に根付いていると,大人になってからも人から愛され,人間関係の良い人になる,とのこと。
tipsで印象にのこったのは2つ。まず,子どもにお金について教えること。私自身,親からお金に関して,さらには社会の仕組みに関して教わった記憶がなく,数年前,このあたりのことをちゃんと教育されたかったなと思ったことがあった。学校生活など人生の1/4程度。残りの時間は教わるよりも自ら考え,何かを作り出し,社会の中で自立して生きていく。であるなら,3/4の時間に役に立つことを小さいうちから教えてほしい。もう1つは,学校の勉強が何の役に立つの?の答えに勉強する習慣を身につけることが大切,と返すこと。質問に正しく答えていないような気もするが,あぁそういう答え方もあるのか…と思ったよ。

◇「人を育て、動かし、戦力にする実戦コーチング・マニュアル」伊東明
コーチング,とりあえずやってみましょう!と主張する内容。コーチング的な会話と,そうではない会話の比較や,コーチング的な会話で使えるフレーズ260個も掲載。コーチングに懐疑的な人から寄せられた質問への回答も掲載しているのは,この本の特徴の1つ。
著者は心理学者だ。心理学の理論を通してコーチングを見たとき,それがいかに目標の達成に向けて機能するかも述べている。例えば,リアクタンス。人は特定の行動をするよう圧力をかけられると,反発心を覚え,その行動をとらなくなる,もしくはいやいや行動するということが起こるが,コーチングは自らが答えを出すように導くのでリアクタンスは生じにくい。自己説得の理論もこの点に関係している。人は,他者から教えられたよりも自らがその行動の意味を見出した場合のほうが動く。さらには,最初は小さな要求をし,受け入れたっら要求を釣り上げるfoot in the doorという説得理論。コーチングの過程で自分ができることを答えたり,してみたりすると,そこから抜け出さなくなり,それ以上のこともついついしてしまう人間の心理にもかなっているというわけだ。

◇「教師のための「続ける力」コーチング」
 神谷和宏
つまるところ,成功する人は続けることができた人,そして続かない原因は,その人の意志や精神力だけのせいではない…そう主張する著者による,何かを続けるためのコツの提案本。コーチングをベースとした,何かを続ける子どもにするためのコツは,もちろん大人である私たち自身のためにも使える。
この本で一番印象に残っているのは,「おわりに」に書かれていた内容。「誰でもできることを,誰もできないくらい続ける」特別なことや,難しいことをするのは難しい。でも誰でもできることをする。そしてそれを続ける…これができたとき,成功へ近づくのだ。これをエジソンのエピソードを交えて述べていた。
ちなみに,誰でもできることをするには,掲げた目標(具体的な目標)を達成するまでの目標,それを達成するまでの目標,またそれを達成するまでの目標…というように負担を感じないくらいまで(日々実行可能な程度にまで)目標・やることを分割していくのがよい。そしてそれをひたするら実行していくのだ。そうすると行動グセがついていく。途中,あせってしまったら落ち着くまで待ち,気持ちをはやらせることなく平常心で,やることに押しつぶされそうになっても丁寧に取り組む…そうやって続けていくと,いつか目標を達成できるのかもしれない。
著者は,続かない人は好奇心が旺盛だからと述べていた。続かない=飽きっぽいと考えている人が多いと思うが(私もだ!),好奇心旺盛で興味が他に移っていくととらえている。なるほど!と感じた発想の転換であった。

◇「松下幸之助とEQコーチング―時代を超えて生きる「信・認・任」の知恵」本間正人,高橋仁
「松下幸之助はコーチングの達人だった」らしい。彼は,コーチングの手法,言葉が日本に浸透するずっと以前に,もうすでにそのエッセンスを実行していたようだ。本書では,現在でいうところのコーチングスキルがふんだんに含まれた,彼の元部下や松下政経塾の元塾生への接し方をエピソード付きでまとめている。
松下幸之助のコーチングで発揮された彼の特に重要な素養は,本書によれば,楽観性(未来の明るい面を見て,前向きにとらえる),ストレス対処(ピンチをチャンスと受け止める),柔軟性(我を譲り,相手のペースに合わせて話を聴く),状況モニタリング(場の空気を読み,人の行動パターンを的確に察知する),共感的理解(相手の気持ちが分かる)であった。これらの素養が,本書でいうところのコーチングの基本,「信・認・任」(人の無限の可能性を信じ,一人ひとりの多様な持ち味,成長を認め,人を活かす)で十分に発揮されていたようだ。
本書には,たくさんの松下幸之助とその元部下や元塾生とのやりとりが載っている。松下幸之助の発言の深さ,ユニークさはさることながら,それを聞いた元部下や元塾生の行間を読む力,解釈力も(私的には)半端ないと思った。松下幸之助の意図を正確に汲み取れるって…おそらく,松下幸之助という人を知り,信頼し,常に考えているからこそできるのだろうな。そして,松下幸之助自身も,相手のことを知り,信頼し,常に考えているからこそそういう発言を普通にできるのだろうな。表面的ではない,踏み込んだ人間関係が築かれている。一方から一方ではなく,双方の相手に対する想い,感情がなければこんな関係は築くことができない,というのをまざまざと感じた。

◇「顧客サービスはコーチングで変わる!―一流の接客プロフェッショナルを育てる法<」ロン・ゼンケ,クリスティン・アンダーソン
接客サービスに携わるスタッフに対して,リーダーやマネージャーはどうコーチングしていくか,に特化した内容になっている。具体的な事例もたくさん登場するし,マニュアルのような詳細さで,状況ごとにどう対処するのがいいか説明している。情報量が多いため,読むのがなかなか大変だった。
でも事例が面白い。スタッフとリーダー・マネージャーとの会話調になっているのだけど,原著がアメリカというのも関係しているんだろうか。ストレートな物言いがたくさんあってよい。また,著者はたまにユーモアも飛ばしてくる。これまでに読んだ日本人の書いた書籍は,事例がどこかリアルさに欠けていたり,ややかしこまった感があったので,この本は新鮮に感じた。

◇「パフォーマンス・コーチング―会社が変わる・組織が活きる」石川洋
通常のコーチングでは,組織全体で高い成果を出すには足りないと考えている著者。そこで,コーチング+メンタリングでパフォーマンスを向上させることを説く。
メンタリングとは,古代ギリシア時代の賢人メントールが行っていた指導法・支援法をもとに欧米で確立・普及した「人間力を重視したリーダーシップ手法の集大成」らしい。メンタリングにおいて,メンタリングする側のメンターに求められるのは,課題・問題解決の支援者であること,メンティー(メンタリングされる側)の悩み相談役であること,メンティーのキャリア意識を高める指南役であること,過去の貴重な体験や将来イメージの語り役であること,人脈ネットワークの道案内人であること,だそう。なんというか,相手の自立・成長を促すために,あらゆる方向から支援を提供する人とでも言おうか…。
本書も情報量は多め。図表もたくさんあるものの,正直読みにくい。図表にも情報量が多いことと,図表と本文がちょうどよく配置されっていないの問題だと思う。本文を読もうとするとページをめくらねばならない,図表が本文を先取りしていて図表を見てもなんの話かわからない,というのが多々あった。

◇「コーチングの教科書」伊藤守
タイトル通り,コーチングの基本事項,要点がまとまっている。初学者にも使えるが,コーチング実践者がコーチングで困ったとき,基本に立ち返りたいときに見返すのにも使える。コーチング関連本をたくさん書いている著者の本。
コーチングでは傾聴が超基本だが,なぜ傾聴が大切なのかをここまではっきりと書いているのは,これまで読んだ中で本書が初めて。人が新しく行動を起こそうとするとき,具体的なイメージを持つことで行動がより起こしやすくなる。具体的なイメージは,情報量を増やすことで持てる。それにはコミュニケーションを増やすことが必要。というのも,情報量を増やすには,情報を外から取り入れるだけでなく,自分自身の内側の情報をアウトプットすることで初めて自分の中にある情報を認識することができるから。よって,アウトプットする機会を与えるためにも傾聴が求められるというわけだ。
「オープン・シークレット」という言葉も本書で初めて知った。誰もが知っているような当たり前のことなのに普段忘れられていること。自分に非があるときは謝ること,一人ひとりはその人の人生の主役であること等。オープン・シークレットが多い場では信頼関係は築きにくいだろう。

◇「サッカーコーチングレポート 超一流の監督分析 【特別対談】岡田武史」小野剛
サッカーチームの超一流の監督とはどんな人物でどんな特徴を持った人なのかに迫る本。著者はJFAによるサッカー指導者の最高ランクである公認S級コーチの講習会のインストラクター経験もあり,その講習会の中身や,監督・コーチの養成,という視点での話もしている。そして,最後には岡田監督との対談も収録されている。
超一流コーチがもつ資質は,著者によれば,サッカーへの情熱と進歩への向上心・テクニシャンでありマネージャーでありリーダーであること,勝っても負けても次を考えられるメンタリティとのこと。これらの資質が,各監督の持つ固有のパーソナリティや価値観と融合し,個性豊かな唯一無二の監督・コーチになるのだ。
対談も興味深い。「監督の手法に万能レシピはない」ということ。サッカーは相手との関係で常に流れが変わるため,要素分解からの分析はあまり使えず,全体を見ることが必要で,そこには必ず勝てる方程式は存在しない,だから常に変え続けなければいけない。そして「リーダーで一番大事なのは登るべき山を持つこと」で,「自分の山に必死に登っている姿を見せること」。リーダーのそういう姿に人はついていく,と岡田監督は語っている。

39/122 読了

2018/11/20

コーチング関連本を読んでるよ Week 2

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「見抜く力―夢を叶えるコーチング」平井伯昌
2章途中あたりからグイグイ引き込まれる内容で、上がり気分で読み進めていた!水泳の北島康介選手や中村礼子選手をコーチしてきた著者による、自身の指導経験をまとめた本だ。タイトルは見抜く力とあるが、見抜く力に関して直接的に書かれていることはそう多くない。選手のことをより多く、正確に知っていないと適切な指導ができないから、そういう意味では見抜く力が彼の指導の根幹にある、だからこのタイトルなのか?という感じである。
何に引き込まれて上がり気分で読んでいたかというと、北島選手や中村選手が結果を残していくプロセスが丁寧に書かれていたことである。選手たちの性格、能力、身体、生かすべきところ、改善すべきところをそれこそ見抜き、カスタマイズされたトレーニングをどう使って結果を出すまで導くか、を垣間見ることが出来た。そして何より、北島選手のようにオリンピックでメダルをとったほどの選手でも、もっと上を目指すならば目指すことは可能である、つまり、伸ばすべきポイントや改善すべきところは尽きることなく見つかり、トレーニングしていけるというのを、読んでいて現実性を伴って感じたことだ。それが見つからないというのは、詰まるところ向上心の欠如と怠慢いうことなのだろう。
加えて、失敗時だけでなく成功したときの振り返りの必要性やその成功パターンに固執すべきではないこと、目標がプレッシャーになるのは、目標と気持ちにギャップがあるとき、といったことも心に残った内容である。

◇「図解 コーチングの「基本」が身につく本」 本間正人
部下をもつ,チームリーダーやマネージャー向けに書かれた本。コーチングの基本方針やテクニック,GROWモデルほか,10個のケーススタディやコーチングスキルUPのための4つの提案が載っているのが特徴。
ケーススタディでは,やる気満々のメンバーへのコーチング,反抗的なメンバーへのコーチング,年上で扱いにくいメンバーへのコーチング等,職場にいがちな部下向けのコーチング手法が記載されている。ケースごとに会話例を紹介し,goodポイントとbadポイントもまとめているのでとてもわかりやすい。
スキルUPの提案では,コーチングに関して自分が誰に何をどれだけ(時間)やったかを日々記録していく方法や,実際にプロのコーチングを受けてみる,というのがあった。記録をつけていくメリットは,私自身も日々感じることだ。私の場合はコーチングではなく,この企画やマインドフルネスに関して進捗を記録しているが,記録すること=可視化で成長してきた点や今後気をつける点が浮き彫りになるし,自分が「やっている,続けている」と自覚できるから自信にも多少貢献する。プロのコーチングを受けることも非常に勉強になるだろうなと思う。クライアント側の気持ちを体験することは,コーチとしてクライアントに関わっていく際に使える情報を得ることになるだろうし,よいコーチの真似をすることで体得できることも多いだろうから。

◇「EQコーチングのスキル」 上村光彌,松下信武
コーチングというと,傾聴や質問のテクニックに走りがち…そんな状況に喝を入れる本である。テクニックがあっても土台がしっかりしてなきゃ意味ないでしょ,と。土台とは,コーチングする側とされる側間に信頼があることである。全くそのとおりである。そもそも信用してない相手に,なぜ心を開いて自分のことを話さなくてはいけないのか。そういう相手には話す理由も話すこともない。そういうわけで,この本では信頼感を構築することを含めたコーチング手法を論じている。
で,信頼感を構築するにはどうすればいいか?だが,端的にまとめれば,形から入るということではないか。著者は,擬似的信頼を信頼にしていく,という話をしている。相手に好意をもつ,明るくいきいきした表情,プロであることを示すこと,約束を守ること,ポジティブな感情を持ち続けること,そういうことの積み重ねで相手は好意を持ち始め,信頼を築いていくと。確かにそのとおりだろう。が,このときコーチ自身もクライアントに対して信頼をもつようになっていなければ(少なくとも,コーチがクライアンを信頼していないと思わせないようにしなければ)ならないのは当然のことである。ちなみに,相手を信じるためにはまず,自分の可能性を信じるようにと述べている。また,信頼関係を築けていない関係でコーチングをするときには,まずこれまでの対応について相手に誠実に謝罪することを求めている。
信頼に関してのほか,コーチの自身の感情との関わり方についても書いてあり、感情がコーチングにとって避けられない対象であることを感じた。
ところで,「話を聞かないことは最大の侮辱」という見出しには,頭をガツンと打たれました。

◇「コーチングのプロが教える リーダーの対話力 ベストアンサー」島村剛,渡邊有貴
著者たちの基本思想は,「答えは自分の中にある」ということ。これはコーチングの基本思想でもある。それをいかに引き出し,行動に結びつけていくか,ということを述べていく。そのプロセスはそんなに複雑ではない。まとめると,現状把握と考え方の転換がカギである。現状把握とは,自分が今どんな状態であるかを把握すること。感情面,身体面,自分の思考がどこに向かっているかなどだ。そして,ネガティブな感情や思考がポジティブなそれらよりも優勢だった場合,ポジティブな感情を誘発するような視点どりをすることで,ポジティブ優勢にしていくとする。(例えば,やりたくない仕事を前にしたら,その仕事の魅力は?その仕事が終わったらどんな気分になっている?その仕事に何を望んでいる?その仕事の可能性は?などの質問をしたり,今これをやったら将来役に立つかもしれない,自分が成長できるかもしれないといった考えにいくようにする)カウンセリングでいうところの,認知療法のやり方に近いと思われるが…。
だが,これをデフォルトにするにはけっこうな努力が必要じゃなかろうか。やれって言ってすぐできればコーチングが必要な事態にはなっていないだろうし,リーダーがこういった質問をして習慣化していくにも,忍耐が必要。この辺りのことを考えていないリーダーや,部下の発言を受け止められないリーダーが部下と対話したところで違和感たっぷりな状況になるような…
というわけで,読了後の感想はうーん…という感じだった。

◇「お父さんのための子どもの心のコーチング」菅原裕子
タイトル通り,お父さん向け子育て論。この著者の本は先週から読んでいるが,主張に大きな違いはない。だが,お父さん向けということで,子育てにおける父性の必要性を論じている。
著者は父性を,「甘えを断ち切り,世間において一人の人間として,自立して暮らすために必要なことを伝える存在」「社会の規範や倫理的なもの,つまり人として何がよくて何が悪いかを教えるもの」としている。甘えを許して依存させ,子どもとの距離が近く,近視眼的な子育てをしがちな母性ではまかなえない部分を,父性が担うことで子どもの自立を促すのである。フロイトの去勢の話を思い出した。
この本には,実際に起った,子どもに対するお父さんとお母さんの対応の違いが書かれている。レストランに行くと,お母さんはいつも5歳の子どもに,おしぼりの袋を開けて渡してあげているのだが,あるとき,子どもが自分で袋をやぶいていたのを見たらしい。そこでお母さん,あらできるのね!と子どもに話しかけたら,お父さんと行くとお父さんはいつも私にやらせてくれる。お父さんは私ができること知ってるの!と答えたそう。ついつい子どもを助けたくなる母性と,子どもの課題は子どもに任せ責任を教える父性の例が興味深い。また,親同士の集まりの話も興味深い。母親同士が集まると自分の子のことに焦点をあてて話をしていくそうだが,父親同士が集まると,よりよい子育てのために地域にどう働きかけようか,といった話題になるそう。 
父性と母性,子育てにはどっちも必要なのだろう。
※著者は、父性=父親,母性=母親としていないことを一応書いておく。

◇「おかあさまのためのコーチング」あべまさい
プロコーチ兼母親の著者による,実体験話満載のコーチング本。母親向けと記載があるが,著者自身がクライアントして受けたコーチングの話や,著者が行った大人向けのコーチング経験の話も載っていて,母親以外が読んでも学びや発見があるように思う。全体を通して,誠実さと謙虚さがあふれていて,語りかけてくるような文章だと思った。読後は私の中に,優しい気持ちが漂った。
コーチが内側から強くなるためには……というテーマで書かれていた章がいちばん印象に残った。物事をすぐ二分化して判断してしまうことを自覚しつつそこから自由になること、全ての感情を味わうと決めることなどが書かれていた。そう、決めればいいのだ。そして決めたことをやればいいのだ。

◇「教師のための子どもが動く! コーチング50」神谷和宏
小学校教諭,心理カウンセラー経験のある著者による,子ども(人間全般)の心理と,その心理特性を踏まえた上で,どう子どもを望ましい方向に導いていくか,を説いた本。タイトル通り,50個の方法が見開きで載っている。
子ども向けコーチングの本や子育て論の本を読んでいると,つくづく子供の頃にどんな考え方・習慣を身につけるかが大事だよなと思えてくる。もちろん,大人になってからでも身に着けられるものは多いが,子どもの頃に身につけられるものの多くは,その人自身の土台となるようなものが多いから,土台が違えばそのあとに得るものにも違いが出てくるわけで…。
「子どもはどんなときに意地悪になるのでしょう?」ー「その子のウィークポイントやコンプレックスを誰かが増強させ,ちょっとした痛みが走ったときです」。「ダメもとはあきらめを表しているのではなく,リラックスをしたらいいと訴えているのです」。というのを心に留めておこうと思った。
にしても,私も利用している作業興奮という現象,クレペリンが提唱していたとは!初めて知りました。

◇「バスケットボール選手のメンタルトレーニング」高妻容一,森億,小池一元,宍戸渉,梅嵜英毅

心技体,試合で勝つにはすべて重要。しかもアンケートをとってみると,心が最も重要と答える人が多いようだ。にもかかわらず,心に費やす練習はいちばん少ないのが現状。そういうわけで,バスケットボール選手がどうやって心を鍛えていくかのレクチャー本。主なトレーニングは,目標設定,セルフコントロールトレーニング,イメージトレーニング,集中トレーニング,プラス思考トレーニング。練習に,日常生活に組み込んで24時間メンタル鍛えていきましょう,という内容だ。
バスケットボール選手でなくても活かせる内容は多い。例えば,イメージトレーニング。イメージトレーニングをする際は,成功イメージを,五感をフル活用し,実際に身体を動かし,スローモーション,50%スピード,フルスピードで具体的にイメージする。集中力は,鼻から息を吸って口から吐く呼吸で。ポジティブな言葉によるセルフトークとコミュニケーションなど。これらを習慣化していくことで,メンタルはさまざまな状況下において安定していくこととなる。

◇「できる上司の部下指導はここが違う―これならわかるコーチング実例」古川英夫
コーチングの基本姿勢をベースにした,上司像を描いた本。こういう部下とはこんなコミュニケーションを,といったものから,上司はこういうことを知っておくべき,こういうことをするのがよい,といったことまで述べられている。銀行や経営コンサルティングの仕事を長年してきた著者による主張は明快,提案も明快。読みやすい。
個人的なびっくりポイントは,部下の気質を把握するとの項で,クレッチマーの3分類が出てきたことである。

◇「なぜ、だれも私の言うことを聞かないのか?」鈴木義幸,coach A
インパクトある本のタイトルだが,中身はとても穏やかに温かい雰囲気で進んでいく。組織の現場で実際に行われた会話を元に,ちょっとした解説をつけて,コミュニケーションのtipsを提示していく内容だ。
タイムリーにささったのは,「被害者」意識を捨てて,「創造者」になろうというtips。私自身,○○のせい,○○が悪いといった被害者意識>創造者で生きている自覚があるが,最近気づいたのは,被害者意識は一見楽な反応だがものすごくエネルギーを削られる,ということだ。被害者意識をずっと感じているととりあえず疲れるうえ,自分の無力感を感じざるを得なくなり,2重のダメージをくらう。負の連鎖が続くことは明らかだ。どうせ疲れるなら,「創造者」のがいい。創造の結果がどうであれ,創造することそれ自体で無力感から解放されるだろうから。

◇「コーチングの基本」鈴木義幸,coach A
その名のとおり,コーチングの教科書のようなもの。コーチングとは何かに始まり,基本的なスキル,コーチングプロセス,実際のコーチング例など盛りだくさんで,1冊読むだけでコーチングがけっこうイメージできる内容になっている。
今回初めて知った内容としては,コーチングの視点として,possession, behavior, presenceに注目するということ。中でもpresence(価値観,信念体系)は非常に重要と思う。おそらく,普段取り立てて意識することもないだろう。自分にすでに内在化している,つまり当然のものとして存在しているのだから。でも,何か問題が起こったときには表出するし,これらが自己成長を妨げていることは大いにありえる。
コーチングのプロセスには,目標の明確化と現状の明確化があり,それらがこれまで読んだ本よりも詳しく書かれていたように思う。著者は目標を3つに分けており,(憧れの目標,しなければならない目標,真に達成したい目標)コーチングの領域は,真に達成したい目標を達成するためのサポートである。とはいえ,これを把握できている人は多くなく,探し続けること,過去にある手がかりから導くことを勧めている。現状の明確化に関しては,自分を客観視することが基本。そのために自分自身を映像や音声に収めたり,周囲の人物,およびコーチからの評価を受けたり,もちろん自分で自分を振り返ることも必要。クライアントは,目標と現状を埋めていく行動をしていくわけである。

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