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2014/09/03

本レビュー エレーヌ・フォックス「脳科学は人格を変えられるか?」

今夏出版された、「脳科学は人格を変えられるか?」エレーヌ・フォックス著
(原題:Rainy Brain, Sunny Brain The New Science of Optimism and Pessimism)を読んだ。楽天主義者と悲観主義者の脳の特徴と、脳の可塑性について、さまざまな実験や調査、脳の画像の観察をもとに論じている。本の内容を踏まえて、原題とはかけ離れたやや商売っ気を感じる邦題の問いに答えるなら、答えはYESだ。人格は固定したものではなく変化する。そして、脳に関する知見を応用すれば、人格を意図的に変化させることも可能である。

著者はまず、人間の脳内にある2つの回路(機能)Rainy BrainとSunny Brainを説明する。Rainy Brainとはネガティブな心の動きを司る回路のことで、Sunny Brainはポジティブな心の動きを司る回路のことだ。Rainy Brainの中心は、扁桃体と前頭前野を結ぶ回路である。扁桃体は恐怖に反応し、恐怖から身を守るための指令を出す所だ。扁桃体が恐怖に反応したあと、前頭前野はその恐怖を恐るるに値するものか判断する。扁桃体→前頭前野の経路数が前頭前野→扁桃体の経路数よりも多いと、恐怖に飲み込まれやすいという。一方、Sunny Brainの中心は、側坐核と前頭前野を結ぶ回路である。側坐核は快楽に反応する。側坐核は刺激を受けると、神経伝達物質ドーパミンとオピオイドが分泌され、より快楽を欲するようになる。前頭前野は、快楽追求に歯止めをかける役割を担っている。
人間はこの両方の回路を持っている。しかし人によって、どちらがどの程度活発に働くかは異なる。この2つの回路の働きがものを認識するためのフレームを作り、ひいてはそれが人格になっていくという。Rainy BrainとSunny Brainの働きに関わるのは、遺伝子と環境である。それぞれの回路に特有の遺伝子があるかないかは定かではない。しかし関係があるものとして、例えばセロトニン運搬遺伝子は発現量が低いと、発現量が高い人よりも周りの環境に影響されたり反応したりしやすい。つまりネガティブなことにもポジティブなことにも敏感に反応する傾向があるという。しかし遺伝子の機能は固定化されたものではない。遺伝子は、自身の発現の有無や程度について環境から影響を受けるのだ。これはエピジェネティクスと呼ばれている。
この、人格形成に関わるRainy BrainとSunny Brainの働きは変化させることができる。脳内の神経細胞同士のつながりは、人間の環境に対する反応によって消えたり組み替えられたり生まれたりする。また神経細胞は年をとっても新生する。つまり、環境に対する自身の反応を意図的に変化させることによって脳内のつながりが変化し、ひいては人格変容へとつながる、ということである。

人格形成については前から興味があった。おそらく発端は自分についての謎である。なぜ私はこう思い、こう感じ、こういう行動をとるのか、そしてそれらを他人と比較したとき、同じものを見ているはずなのになぜこうも違うのか、こんなことから人格形成について興味を持った。私の人格を作っているものは何なのか、と。それもあってか、人格形成について述べられたこの本はおもしろかった。Rainy BrainとSunny Brainはおそらく、進化の過程で生まれてきた、人間の精神の働きの根本的なものである。これらの機能が人格の根幹を成しているという説は納得のいくものである。
しかし今回、人格形成についてはまだ分からないことだらけ、ということを改めて認識させられることとなった。楽観主義者と悲観主義者の脳で起こっている現象についての言及はなされているが、その現象の起きるメカニズムの詳細は触れられていない。私も、遺伝子と環境が人格を形成すると考えているが、遺伝子と環境の絡み合いは常に流動的で複雑すぎる。このメカニズムが解ける日は来るのか…。

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