「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」の原題は「The Influential Mind What the Brain Reveals About Our Power to Change Others」。脳のあり方をふまえ,人が影響されているとき脳はどういう状態なのか,どうすれば人を動かせるか,いかに人が他者から影響されているか,を実際に行われたたくさんの実験や,エピソードを交えて丁寧に解説している。笑ってしまう話や,あ~そうだよね~,えっホントに!?など,自分の日常やこれまでそうだと思っていたことと照らし合わせて,いろいろな気持ちを味わいながら学ぶことができると思う。下記に述べるtipsだけを考えるとそれほど目新しいものではないかもしれないが,あちこちで言われている断片的なことを1冊にしてくれた感がある。また,脳の反応がエビデンスとして紹介されているので,ただのノウハウ本よりも信用がおける。
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「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」の原題は「The Influential Mind What the Brain Reveals About Our Power to Change Others」。脳のあり方をふまえ,人が影響されているとき脳はどういう状態なのか,どうすれば人を動かせるか,いかに人が他者から影響されているか,を実際に行われたたくさんの実験や,エピソードを交えて丁寧に解説している。笑ってしまう話や,あ~そうだよね~,えっホントに!?など,自分の日常やこれまでそうだと思っていたことと照らし合わせて,いろいろな気持ちを味わいながら学ぶことができると思う。下記に述べるtipsだけを考えるとそれほど目新しいものではないかもしれないが,あちこちで言われている断片的なことを1冊にしてくれた感がある。また,脳の反応がエビデンスとして紹介されているので,ただのノウハウ本よりも信用がおける。
本書で提示されていた人を動かすためのtipsは以下のとおり。これらのtipsを,人を動かしたい状況,相手などに合わせてどう具体的に表現していくか,が腕の見せどころか。
・人が「正しいと信じている信念」に対しては,決定的な反対証拠も役に立たない。拒絶されるたり,逆に,正しいと信じている信念がいかに正しいかを説得させられることになる。
・メッセージが相手に伝わるには,相手の感情に働きかけること。自分と相手の気持ちが共有されている状態に。
・罰や脅しなど,恐怖を喚起するものは説得にはマイナスに働く。むしろ,褒めや報酬など快を期待させることが行動を促す。
・喪失への不安は行動を止める。
・「自分がコントロールしている」という感覚は満足感を高め,人を行動へ向かわせる。コントロール感を阻害する注意や警告,管理は人を不安にさせる。
・情報を伝えるときは,相手の知識のギャップを示し,それを埋めるようにする。
・メッセージはポジティイブな観点から伝える。良いことが起こる可能性を強調したメッセージのほうが人の注意を引くことができる。人は自分が後で傷つくとしても,悪い知らせを避ける。
・相手の心の状態によって,メッセージの受け取られ方は変わる。ストレス下や恐怖下では,リスクを避け,無難な行動をとる。
本書後半は,人は(気づかないうちに)他者に影響されている,ということについて。人は生まれた日から周りを見て学習を始める。他人は自分が持っていない情報を持っていると思って,本能的に他人の選択をなぞってしまう。他人の意見によって,記憶の痕跡は物理的にも変化する。さらに,変化をもたらすにはたった一人の異端で十分,などが様々な実験とともに伝えられる。
さらには集合知についても言及している。たくさんの人の意見を集約して平均するとだいたい正しいと言われるが,お互いがお互いに影響を与えている社会でそれはいつも成り立たない。成り立つには工夫が必要である。まず第一に,たくさんの人がそれぞれできるだけ独立して意見を言っている必要がある。また,一人の意見でも時間を空けて出された複数の意見を集約したほうがいい。いずれにしても,誰がどんな状態で述べた意見なのか知らずに,みんなの意見の平均を鵜呑みにするのはよろしくないということである。多数派に走ってしまう本能を適宜抑えなくてはならない。
そんなわけで,私の備忘録も兼ねたくて全体を簡潔にまとめてみた。興味を持った方はぜひ手にとってみてください!