岩波ホールは初来場でした |
この映画はドキュメンタリー。3時間超えの長編だが,内容はNYPLで行われている著名人を呼んでのトークイベントや,就職イベントや音楽ライブ,子どもたち向けの放課後講座や科学講座,朗読会,読書会などのイベント,NYPL職員たちによる予算の割当会議,図書館利用者の様子,カスタマーサービスやリファレンスサービス,蔵書のデジタル化作業や機械による運搬,写真やイラスト資料の配架の工夫などの抜粋映像で構成されている。NYPLは本館・分館合わせて92個あるらしいが,分館の様子もその地域の街並みやそこで暮らす人々の姿とともに映し出され,観光ガイドなどで見るNYの一般的なイメージとは異なる雰囲気も感じられる。進歩的でオシャレでかっこいいNYよりも,多様性の受け入れ,寛容さの実現,社会的弱者への支援,そういうのが全編を通して感じられた。
NYPL職員たちによる予算割当会議の抜粋映像は映画の中でも1/3近くを占めているんじゃないだろうか。NYPLは税金と寄付で賄われており,力を入れているのは教育関連の企画と,市民のデジタルデバイドの解消である。教育関連の企画では読み書きや数学を子どもたちに教えたり,ロボットを作って動かす講座など。デジタルデバイドについては,調査によるとNYでネットにアクセスできない人は全体の1/3いるらしく,その人たちへのネット環境の提供に奔走していた。また昨今では,多くの仕事がパソコンを使うから,時代に求められるものに合わせて内容をアップデートしていくパソコン講座を開くことなども話に上がっていた。そして,一時期減った公からの資金が昔の水準に戻ったことを受け,市が求めているものをやりつつ,寄付金を増やしていくにはどうするか,等も話に挙がっていた。
ところで,リファレンスサービスでは,やはりというか期待通り,ユニークな問い合わせが来ていた。問い合わせに訪れたのは,ある家系について調べている女性。その家系がどこの町出身かを知りたいという。それに対して職員は,調べ方を順序だてて細かくレクチャー。移民,帰化資料,年代など資料検索に必要なワードがポンポン飛び出してきて,図書館が有している膨大な資料量が伺い知れた。
リファレンスサービスがしっかり機能している図書館は,研究や調査目的での利用者にとって非常に助かる存在だ。日本の図書館の代表,国立国会図書館は全国のいろいろな図書館でのリファレンスをツイッターで公開している(https://twitter.com/crd_tweet)私は好きでたまに見ているのだが,ホントに実にいろいろな問い合わせが来ている。全く予想もしていないような情報ばかりで,世の中の広さを実感するばかりである。リンク先の回答には,検索のプロセスも示されていて参考になる。
静かで,本の匂いがして,誰かから干渉されることもなく,座って落ち着いて過ごせる場所。私は図書館が好きだ。いつかここの図書館も訪れてみたい。
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