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2014/10/19

認知症のあれこれ

先日、NHKスペシャルで認知症の特集を放送していた(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0720/)。―認知症に対して、どういった治療法が効果的なのか―薬や認知症者への対応の面から、最近得られた知見を解説していた。
厚労省が公表している統計によると、平成22年現在、65歳以上の認知症有病者数は推計439万人(全体の15%)にのぼり、正常と認知症のはざまにあたる推計人数は380万人(全体の13%)になるという(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kaiken_shiryou/2013/dl/130607-01.pdf)。またWHOは、むこう40年間の間に世界的に認知症者が増加することを予測している。認知症への注目は今後も続くだろう。

認知症と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるだろう?私は認知症を、忘れっぽい、思い出せない、徘徊する、などとイメージしていた。しかし、調べてみると認知症は単純なものでも、型にはまったものでもないことが分かった。

そもそも認知症とはどんな病気なのだろう。認知症は脳の障害である。脳の障害によって起こる症状は、認知症の基本症状(中核症状)と呼ばれており、記憶障害(もの忘れ、記銘力の低下)、自分の置かれた状況がわからなくなる見当識障害、認知障害(理解・判断力の低下、計算力低下、言語機能低下、学習能力低下など)、情動・行動の抑制力の障害、感覚機能に異常がないのに、ものを正しく理解できない失認、運動機能に異常がないのに手順通りに物事を行えない失行などがある。
脳はその場所ごとに、どんな機能を主に担うかが明らかになっている。例えば後頭葉は視覚情報を処理し、側頭葉は言語能力を担う、といった具合に(参考:http://www.sakurai.comp.ae.keio.ac.jp/classes/humansystemb/lesson02/Slide21.gif)。認知症では、脳のどの部位が侵されるかによって、生じる基本症状にばらつきが見られる。

認知症には、基本症状の他に周辺症状と呼ばれる、行動・心理症状(BPSD)がある。身体的、精神的苦痛や合わない薬の長期間の使用、日常感覚から遠ざかることなどにより起こるものだ。症状には、徘徊、多動、幻覚(幻視、幻聴)、妄想、介護への抵抗、叫声、食行動異常、睡眠・覚醒障害、抑うつ気分などが挙げられる。何がどれくらい現れるか、個人差が大きい。

また、ひとくちに認知症といっても、認知症を引き起こす原因によって複数に分けることができる。代表的なものをいくつか挙げると、①神経細胞が徐々に衰え死滅していく、アルツハイマー型認知症、前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症、②脳の病気や障害などで生じる、血管性認知症である。他にも、アルコール飲料の長期間にわたる多飲が原因で生じたり、ビタミンやホルモンの不足が引き金となって生じるものもあるという。


また、認知症者の精神状態は病気が進むにつれて、とまどい・不安→否認・怒り→焦り・抑うつ→無欲・安穏、と変化するという。キュブラー=ロスが提唱した「死の受容プロセス」によく似ている。自分では受け入れられないことが生じ、かつそれが回避不可能であった場合、このようなプロセスをたどるのだろう。

今回認知症について勉強してみて、人間の情動、感情への興味が高まった。上記の心理変化プロセスにおいて最終段階である、無欲・安穏の時期に至っても、快・不快の情動は残るという。快、不快の情動は主に扁桃体が司っており、脳の内側に位置する。大脳で起こる脳の障害には侵食されないため、残る機能と考えられるが、快・不快というのは、ヒト延いては動物が生きる上で必要不可欠であり、行動の源泉のようなものでもある。


参考文献
「脳からみた認知症」伊古田俊夫 
「認知症のすべて―あなたはわかっていますか」十束支朗
「図説 認知症高齢者の心がわかる本」平澤秀人