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2018/02/14

「レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル」に行ってきた!

先日,「レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル」
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/LeandroErlich2017/)に行ってきた!彼のことよく知らないまま,友人に誘われるまま,これといった先入観も持たずに行ってみたのだが,あっと驚くようなユニークで凝った作品が集まっていて,すごくすごく楽しい時間を過ごした。

「反射する港」
今回展示してあった作品は,「そうくると思ったでしょ?でも実は違うんだよねー」というのが多い。私たちは日常生活で実際に目にしたものをたくさん記憶に残している。作品を見ると,それらの記憶が呼び起こされて,私たちは見たものが何なのか理解する。でも,よくよく見ると,実際に触ってみると,思っていたのとは違うことに気づく。なぜならそれらは,意図的に,人工的に作られたものだからだ。
例えば,最初の展示物の「反射する港」。普通に見ると,水面に浮かんでいる手漕ぎボートだ。それこそ井の頭公園にありそうな…。しかも,少し揺れていて,じっと見ていると,風のせいで揺れているように思えてくる。でも,このボート,本当は水に浮いていないし,会場に風も吹いていない。水面に反射しているように見える部分は作られたもの。ボートの形や色だけでなく,オールまで,反射したらどう見えるかが再現して作られている。揺れがどのように起こされていたのかは私には分からないが,それも人工的に作り出されたものだ。
「美容院」
「美容院」もそんな作品の一つ。普通に見ると,美容院のよくある光景。施術椅子とその前にある大きな鏡,鏡の前の台にはタオルやボトル,ブラシなどの美容院グッズが置かれている。でもこの場所,実は鏡がない。ただ枠があるだけなのだ。枠を隔てた向かい側に,鏡に写ったように見えるように椅子やタオル,ボトル,ブラシなどが置いてあるだけ。作品内には施術ブースがいくつかあるのだけれど,一部は先に書いたような鏡のないブース。でも,ちゃんと鏡があるブースもある。どっちがどっちか,見ていると混乱してくる。さて,写真に写したのはどちらのブースでしょう?

「眺め」
「反射する港」や「美容院」とは少し作風が違うのだけど,「眺め」という作品も好きになった。ブラインドがかかっている窓を覗くと,窓のようなもの(実際はスクリーン)がいくつかついているアパート(マンション?)のようなものが現れる。そこのスクリーンで流されているのは,アパートの一室で繰り広げられる光景。その部屋で何が起こっているのか,住人たちが何をしているのか,覗き見できるというわけだ。ある部屋では夫婦が卓球を楽しみ,ある部屋ではヌードモデルがベッドに横たわって画家に絵を描かせ,また別の部屋では,口論しているカップルがおり,空き巣に入られてる!?みたいな部屋まである。どの映像も違うから,がんばっていろいろ見ようとするのだけど,ブラインドが邪魔をしてよく見えないのがまたもどかしい…。覗くのって楽しいのねと思った瞬間だった。

他にもいろいろな作品があるので,ぜひぜひ足を運んでみてほしい!それぞれの作品にはいろいろ仕掛けがされているから,作品を見たり体験したりしながら,驚いたり発見したりできること間違いなし!!そぅそぅ,「試着室」では迷わないように注意してくださいね…

全部の作品を鑑賞し,改めて本展示会のロゴを見ていたら…あっ!彼の作品にちなんだシンボルがロゴにいろいろ含まれているではないか!なんてオシャレで可愛いロゴなのだ…!作品を思い出しながらニヤニヤしてしまった。
雲,階段,ボートが!
エレベーター,プール,階段が!

ちなみに,「レアンドロ・エルリッヒ展」のチケットを購入すると,その下のフロア(52F)にある東京シティビューにも入場できる。こちらは,展望台になっていると同時に,いくつかのアート作品も展示されている。天気がとても良かったので,これぞ東京!って感じの贅沢な眺めを堪能できた。見渡すかぎりビル,ビル,ビル!
東京タワーとビル!
遠くにスカイツリー,そしてビル!

アート作品は,テクノロジーを使ったものが多かった。ピアノの鍵盤をたたくと,その音に紐付いた香りが漂う仕掛けの楽器とか,地球に見せた球体の中心部をストローで吸うと水も緑もなくなって,荒廃してしまうのとか。
人がいっぱいだよ!
平面だよ!
視覚トリックを使った作品(右)と人形の光が動いていく作品(左)が印象的だったかな。右の作品は,平面に映像を流して,山の季節の移り変わりを表現したものなのだけど,そもそも山に何本も線が引いてあって,その線同士の幅の違いや線同士が作る形を利用して山を立体的に見せてもいる。左の作品は,光を使ってネットの筒(多分)のようなものに人形を映している(多分)のだけど,光の当て方によって,人形が筒の形状に沿って動いていく。大きくなったり,小さくなったり,人が増えたり減ったりして,ちょっと幻想的な光景だった。

本当にいろんな人がいろんな作品を作っているなと思った。いろんなアイディアに触れられた。

※レアンドロ・エルリッヒのインタビュー記事と作品のいくつかが見られます。
https://numero.jp/interview67/

2018/02/07

読書記 三浦しをん「舟を編む」

久しぶりに小説を読んだ。三浦しをんの「舟を編む」。暖かく優しい気持ちが漂う読後感。そして,だんだん自分が使っている言葉が気になり始める…そんなお話だった。

「舟を編む」は,ある出版社の辞書編集部の面々が,『大渡海』という1冊の辞書を作り上げていく過程を描いたお話だ。企画から完成までに15年。たくさんの人が執筆,校閲,製本,販売戦略に携わって『大渡海』が完成する。辞書がどのように作られるかなんて考えたこともなかった私には,辞書づくりのプロセスを知ること自体とても新鮮だった。そして,辞書づくりに真心を込める登場人物たち。彼らが本当に愛おしい。

登場人物たちの会話には穏やかな時間が流れていて,でもときに滑稽で,笑いを誘う。主人公は,言葉に敏感で辞書作りに抜群のセンスを発揮するも,人間関係は不器用で失笑を買うことも多い男性。言葉を聞いて,言葉を見て,その言葉の語義や似た意味の言葉とどうニュアンスが違うのかを思い巡らしては,自分の世界に入っていってしまうような人だ。彼が後に結婚する女性に宛てたラブレターは,実際もらったらとまどうだろう…,というくらいにおかしい。でもお話を読んでいると,彼が,不器用でも一生懸命なことや,誠実なことが伝わってくるから,私も彼が好きになった。そんな彼を,いつでもどこでも用例採集を欠かさない先生や,辞書編集部を退職した主人公の元上司,対外交渉には頼もしいちょっとチャラい同僚,挫折しそうになりながらも辞書づくりにはまっていく新人さん,ちょっと辛口だけど思いやりある女性などが支えながら辞書づくりは進んでいく。

チャラい同僚や新人さんが,主人公と関わり辞書づくりに関わっていく中で変化していく様もステキだった。何かに一生懸命なこと,何かをとても愛していることをどこかで憧れつつもごまかしていた同僚は,そんな自分に終止符を打っていく。花形のファッション編集部から辞書編集部に異動させられ,これまでとは全く異なる同僚,仕事内容,環境にとまどって新人さんは,辞書づくりを,言葉を大切にするようになっていく。

「舟を編む」の登場人物たちは,辞書を利用する人たちのことをとてもよく考えているのも印象的だった。掲載語の選定,語釈はもちろんのこと,辞書に使う紙の選定や装丁まで,『大渡海』を使う人がそれを読んだらどう感じるか,『大渡海』を使いやすくするにはどうしたらいいかなど利用者の身になって考え,改善していくことを決して疎かにしない。最近めっきり紙の辞書を使わず,電子辞書ばかりの私だが,辞書に使う紙の選定や装丁の場面を読んでいるときには,利用者への配慮や『大渡海』のアイデンティティのようなものを感じられ,小中学生の頃使っていた紙の辞書のことを思い出した。

また,「舟を編む」には聞いたことのない言葉(私が知らないだけかもしれないが…)やいくつかの言葉の辞書の語釈も出てくる。聞いたことのない言葉は,都度都度辞書を引きながら読み進め,語釈については,へーそういうふうに定義するのか,そういう意味もあったのか,と興味をひかれながら読んだ。

人に何かを伝えるとき,何かを考えるとき,言葉を正確に使うことはとても大切だ。言葉が違えば,どんなに意味が似たものであってもそこには差異がある。言葉のもつそのニュアンスを汲み取るには,辞書の助けを借りつつ,自分で咀嚼し,実際にその言葉を使いながら身体に染み込ませていくことなのかなと思う。簡単なようで難しい「言葉」。言葉を大切にしよう!と思い始めている。

少し前にアニメが放映されていたようなので,今度見てみよう!
http://www.funewoamu.com/

2018/01/26

拡散的思考傾向とOpenness特性の関連

少し前に,思考方略と性格特性の研究を行った。拡散的思考傾向は,Openness特性とどれくらい関連があるかである。

背景
拡散的思考(divergent-thinking)とは,1967年にアメリカの心理学者Guilfordが提示し思考方略の1つである。彼は,彼は思考方略を,拡散的思考(divergent-thinking)と,収束的思考(convergent-thinking)の2つに分類した。拡散的思考は,解を1つに絞ることなく,さまざまな解決可能性を探索していく思考だ。

Openness特性とは,Big Five理論で提示されている性格特性の1つで,馴染みのものにとらわれず,経験を積極的に求め楽しむような特性を指す。ちなみに,Big Five理論は近年の性格研究においては主流となっている理論で,外向性(Extraversion), 調和性(Agreeableness), 誠実性(Conscientioiusness),神経症傾向(Neuroticism), 開放性(Openness)の5つの特性で性格は構成されている,とする理論である。

方法
拡散的思考傾向とOpenness特性の関連を調べるにあたり,拡散的思考傾向を調べるテストと性格調査への回答を被験者に求めた。思考テストは,アイディアの量,多様性,独自性の観点から評価して,それぞれの回答について得点を算出した。性格調査は,被験者の回答から,Openness特性を創造性,賢さ,感情の豊かさ,好奇心,に下位分類した。これらを用いて,相関を調べた。

結果
拡散的思考傾向とOpennessの間には,有意な正の相関があり,Openness特性の中でも創造性と関連があるということが分かった。また,拡散的思考の指標であるアイディアの量,アイディアの多様さ,アイディアのユニークさのいずれにおいても,Openness特性と関連があり,その中でも特に創造性と関連があることが示された。

もう少し詳しい内容は下記にて。ファジィ学会のワークショップhttp://kanto.j-soft.orgでの発表の際に使った資料(改)です。


参考文献
Guilford, J. P. (1967). The Nature of Human Intelligence. McGraw-Hill Book Company.
和田さゆり(1996). 性格特性用語を用いたBig Five尺度の作成 心理学研究, 67, 61-67.
藤島寛・山田尚子・辻平治郎(2005). 5因子性格検査短縮版(FFPQ-50)の作成 パーソナリティ研究, 13, 231-241.
佐藤三郎・恩田彰(1978). 創造的能力―開発と評価― 東京心理
住田幸次郎(1966). 創造性検査尺度の構成と吟味 京都大学教育学部紀要, 12, 29-45
西康隆(2001). 小学生の創造的態度についての研究―体験・学力・創造的思考との関連を通して― 兵庫教育大学大学院,14
下仲順子・中里克治・権藤恭之・高山緑(1998). 日本版NEO-PI-Rの作成とその因子的妥当性の検討 性格心理学研究, 6, 138-147
矢野正晴・柴山盛生・孫媛・西澤正己・福田光宏(2002). 創造性の概念と理論  国立情報学研究所

2018/01/10

2018年ことはじめ


2018年が明けて早1週間…。昨日やっと今年最初の大仕事?である論文の執筆を終えた。執筆を始めてから1ヶ月弱,提出日3日前にしてようやく,ようやく形になりました。とりあえずホッとしている。

今回論文にしたのは,企業ロゴの印象について。いくつかの外国企業の企業ロゴを調査参加者に提示し,それぞれのロゴに対して,質問項目にあるような印象をどの程度感じるか評定してもらった。また,各企業ロゴを色や形,フォント,大きさなどのいくつかのルールに基づいて評価した。そして,それらのデータを因子分析&ラフ集合分析して,どのようなデザインがどのような印象を人に与えるか,をまとめた。
本研究の個人的なハイライトは,ラフ集合分析をやってみたことだ。因子分析は何度かやったことがあったが,ラフ集合分析は聞くのもやるのも今回が初めて。本を読んで基本をおさえ,かなり付け焼き刃な状態で取り入れた。企業ロゴの評価データ最初にしっかり用意しなかったせいで何度も分析をやり直すことになったが,そのおかげでラフ集合分析はけっこう使えるようになったし,因子分析のみで明らかになったこと以上のことが明らかになったので,やってよかった。

にしても,今回の論文執筆,振り返れば長い道のりだった…。テーマの選定から絞り込みまでに紆余曲折しまくり,結局収拾がつかず,先生の研究テーマの一つである企業ロゴについてやることになり,やることは決まったもののモチベーションは浮上せず,よってなかなか執筆は進まず,分析をしてもいまいちピンとくる結果は出ず,分析対象絞ったらいい感じになりそうだと気付いてまた分析をやり,結果が出たところで書き始めたら今度は規定どおりの図表を作るのにまた時間を要し,図表を完成させて考察を書き始めたら,データにボロが出てきて分析をやり直し,さらに考察も書き直し…という感じで完成した代物である。完成したとはいえ,今回の顛末については反省し学習しなければいけないことがたくさんあるので,そうしたい。

この1~2ヶ月間,主にゼミ室で分析や執筆を行っていたのだが,同じく論文を抱えてゼミ室に詰めていたM2の皆さんには本当に助けられた。分析や論文のストーリー展開のヒントとなるような助言をたくさんもらえたし,サブカル話や世間話でも大いに盛り上がり,ものすごい息抜きになった。サンリオピューロランド行こうとの突然の誘いにも付き合ってくれた。それに,なんといっても頑張っている人が近くにいるというのはとてもいい。私もやろう!って気になれるから。一人だとすぐ気が散ったりくじけたりしてしまう状態だったので,ゼミ室とM2の皆さんの存在は本当にありがたかった。感謝!

ところで,私の今年のテーマは「消費から生産へ」だ。論文が完成したことでとりあえず1つ生産できた。でも普通に生活していると,消費のほうが多くなりがち…。今後も生産がんばろー!

2017/12/26

年の瀬企画-第ニ夜- 2017年心にひっかかった本

こちらの4冊
さてさて2017年もあと1週間…年の瀬企画ー第ニ夜ーの開催です。
今回は,今年心にひっかかった本について。今年は多分50冊くらいは読んだのではなかろうか(漫画は除く)?その中でなんか心にひっかかった本を4冊ピックアップしてみた。写真左端を除く3冊は,本を読みながら自分はどうかと考えたときに生まれたひっかかり。左端は,純粋に書いてあることが理解できないことでのひっかかり。これらの本の内容とひっかかりは,このまま心に留めておいて来年も考えたり読み返したりしていきたい。

・ティナ・シーリング「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」
 理由:無駄遣い禁止!解放!解放!
再読本。読んだのは今回で3回め。以前読んだときはほとんど気にも留めずにすーっと通り過ぎていってばかりだったが,年をとって,状況も変わって,今になって心にビンビンひびいてきた。
この本を読んで実践していくことに決めたのは「自分に許可を与える」ということ。これに尽きる。結局,いろんな制限を自分に課しているのは自分なのだとつくづく思った。この本には,どこにでもありそうな身近なものを使って新しい何かを生み出したり,ちょっと思いついたアイディアを試したり,常識的に考えるとするのをためらうことをすることで,自分の夢をつかんだり,より充実した人生を送ることになった人の事例がたくさん登場する。彼らのはじめの一歩は,本当に些細なことで,多くの人にとってやろうと思えば簡単にできることだ。ただ,「やってみたらいいんじゃない?」と自分に許可を与えてやればよい。
この本を読んでいたら,なんだか自分を無駄遣いしているなとつくづく思った。私にはできたかもしれないことがたくさんあっただろう。でもそうしなかった。そう考えるとなんかイライラしてきた。だからもうこれ以上の無駄遣いは禁止なのである。

・山田ズーニー「あなたの話はなぜ「通じない」のか」
 理由:相手に何かを伝えるのって,相手のことを知ることって難度高っ!
彼女の文章は本当に分かりやすくて,心地よいリズムがあって,丁寧で…。困っている読者に寄り添ってくれる,とても練られた文章,構成になっている。しかも,「考えることを通して自分の意見をはっきりさせる」,「自分の根っこにある気持ちに嘘はつかない」,「相手の話を正確に理解し,それを表明する」など,自分も相手も消さずに,「分かり合う」ことを目標として話が展開されていく。小手先のテクニックは全くなしだ。
この本は「問い」の重要性を推している。相手と「意見」はくい違っても「問い」は共有できる,と。また,相手の主張や意見を聞いたら,それがどんな問いに対する主張・意見なのかを考えてみるのがよい,と。問いを考えることは実際にやってみている。さすがに毎度毎度は出来ていないが,思い出した時や書かれた文章についてはやるように努めている。それで気づいたのは,「問い」のほうに視点を移すと,主張や意見に目を向けていたときよりも,その主張や意見を一歩引いたところから眺めることができるのだ。「問い」という大元の存在がクッションとなり,その主張や意見に対するとっさの反応は抑制される。最近は,その主張や意見の根拠となっているデータやワラントも考えるように意識を向けている。
それから著者のいう,「根本思想」のくだりも心に留め置きたいこと。「根本思想」とは,自分の言葉の根っこにあるその人の生き方や価値観のことである。
根本思想は,言葉の製造元。だから,短い発言でもごまかしようなく,にじみ出て,相手にわかってしまう。… 逆に言うと,根本思想はそれだけ強いものだからこそ,根本思想と言葉が一致したとき,非常に強く人の心を打つ。(p.15)
 根本思想と一致した言葉を,私はどれだけ発しているのだろう?調子に乗って都合のよいことを口走ったり,思慮浅で適当に,その場しのぎで発言していることがよくある…。これではいかんね…。人にとっての私の価値も私にとっての私の価値も貶めることになるだろう。

・エーリッヒ・フロム「愛するということ」
 理由:正直,愛するよりも愛されたい…
こちらも再読本。一番最初に読んだのは8年くらい前だった。8年前,やはり私はこの本の内容を十分に咀嚼できていなかった。
フロムは「愛すること」を技術だと考えている。技術だから,才能大アリでもない限り,学んで練習して身につけていくことが必要。それが愛するという行為である。
さてフロムが言うには,愛することができるのは,「性格が生産的な段階に達している人間」だ。少し引用しよう。
”生産的な性格の人にとっては,与えることはまったくちがった意味をもつ。与えることは,自分のもてる力のもっとも高度な表現なのである。与えるというまさにその行為を通じて,私は自分の力,富,権力を実感する。… 与えることはもらうよりも喜ばしい。それは,剥ぎ取られるからではなく,与えるという行為が自分の生命力の表現だからである。”(p.44)
” 愛するためには,性格が生産的な段階に達していなければならない。この段階に達した人は,依存心,ナルシシズム的な全能感,他人を利用しようとかなんでも貯め込もうという欲求をすでに克服し,自分のなかにある人間的な力を信じ,目標達成のためには自分の力に頼ろうという勇気を獲得している。これらの性質が欠けていると,自分自身を与えるのが怖く,したがって愛する勇気もない。(p.48)” 
「与えることが自分の生命力の表現」だなんて考えたこともなかった。与えることそれ自体を通して自分を見出す…。「与えることはもらうよりも喜ばしい」か…。どうだろう,「与える→相手が喜んでくれる→嬉しい」はある。だが「与える→相手が喜んでくれない→嬉しい」と私は思うのか…?…生産的な段階には全然達していないんだな私は…。だって正直,与えるよりももらうことのほうが嬉しいよ…そんなことを思いつつ読んでいた。

・ジャック・ラカン「テレヴィジオン」
 理由:私はラカンが分からない
今年の春から夏にかけて,ラカン関連の本を読み散らかしていた。ラカンは,20世紀後半に活躍したフランスの精神科医・精神分析家。私は昨年末辺りから無意識についての文献をいろいろ読んでいたのだが,ラカンに手をつけていなかったことをある人に指摘され,それじゃあ読んでみるか,となったのだ。
実はラカンの思想には2年くらい前にとった現代思想の講義で触れていた。そのとき感じたラカンの印象は,「何やら初めて聞く言葉がいっぱいありますが…?」だった。ラカンは自分の思想を表現するために新しい言葉や概念を作っていたから,講義ではその言葉の解説がメインだったのだけれど,解説を聞いても分かるような分からないようなという感じ。そのときの先生も先生で,「ラカンは難解ですから…」みたいな感じでいろいろ濁された…。その時,ラカン解説本も数冊目を通したのだけど,やっぱりよく分からなかった。
こんな感じでラカンにマイナスイメージがついていたものの,今回こそはラカンの思想を理解したい!と思って読み始めたのも事実。それで読んだ最初の1冊目がこれ。フランスの一般向けのテレビ放送でラカンが話したことをまとめた薄い本だから,論文集「エクリ」よりはとっつきやすいかなと思って読み始めてみたら…甘かった。というか甘すぎました。最後まで読み通したし,部分的にはいろいろ調べながら丁寧に読んでいたのだけれど,はっきり分かったことは,「ラカンが何を言っているのか私は分からない」ということくらい…。その後ラカン解説本を数冊読んだものの,せいぜい分かったような気になるのが関の山…。

以上,2017年心にひっかかった本を紹介した。ちなみに私は小説をほとんど読まない。物語系の場合,小説よりも大体漫画に手が行く。今年最後まで読んだのは,司馬遼太郎の「国盗り物語」だけではなかろうか。お万阿さまのいい女っぷりに惚れ惚れし,光秀さん余計なことを…という読後感だった。ハイ。

2017/12/08

年の瀬企画-第一夜- 2017年が初めて記念年

2017年もそろそろおしまい。ついこの前まで半袖で暑い暑いと騒いでたのに,いつの間にやらもう12月…。なんてあっという間に1年過ぎるんだと,もやもやし出した今日この頃…。そんな気分を少しでも変えるべく,また,来年に向けて今年を総括しようとの意も込めて,今月は2017年の振り返りを行おうと思う。

第1夜の今夜は,2017年に初めてやったことについて。思い出してみると,いろんな初めてがあるもので。現在も継続していることと,個人的にインパクト大だったものをピックアップ!
信号機描きました

・日常的に絵を描く
3月から絵を描き始め,これまでに650枚ほど描いた。”見て描く”が中心で,部屋の中にあるもの,風景,既存のイラスト,ネットや雑誌に載っている写真などを対象として描いている。たまに色も塗るが,主に鉛筆だけで線画を描いている。対象そっくりに描ける技術が欲しいし,私らしさがにじみ出る絵が描きたい。最近描く量が減ってきているが,今後も継続予定。
http://yukiron.blogspot.jp/2017/04/blog-post_22.html


(通称)ヴィクトル・尻フォロフ
・アニメグッズ(ユーリ!!! on ICEのみ)を買い始め,ついに私はフィギュアを手に入れた!
4月にアニメ「ユーリ!!! on ICE」を初めて見て以来、どハマりしている。去年の私は,今年の私がアニメグッズを買うなんてまるで想像していなかったであろう…。ましてや,グッズを買うために3時間超も並ぶなど,去年の私ならありえない!と思っていただろう…。グッズ厨の方々の足元にも及ばない量しか買っていないが,それでもグッズを買うとそれなりにお金がなくなっていくので,また稼がねばならない。フィギュアを買ったのも初めての経験であった。今手元にあるのは小さいの1体と,中くらいの1体と(どっちもデフォルメされたやつ),原寸1/8スケール1体の計3体。1/8スケールのは,あまりの美しさに造形師さんに感謝!である。ずっと見ていられる美しさ…。だがしかし,1つ問題が発生。飾る場所がない。ゆえに商品が届いてから一月以上経った今もまだ箱に入ったままである…(無念)。然るべき場所を早急に用意せねばならない。
自作チリコンカン
http://yukiron.blogspot.jp/2017/05/on-ice.html

・チリコンカンを作った
昨年よく読んでいたブログの主さんが,チリコンカンをよく作っているらしく,写真をいろいろ載せていた。それを見たら,昔よくWendy'sで食べていたチリの味が恋しくなり,自分で作るか!となった。Google先生頼みのレシピで,友人とのお花見会のときに作ったものを披露。もぐもぐ食べてくれていたので,味は美味しかったはず。個人的には大満足の味。すばらしい味になったのは,隠し味に入れた辛い調味料(地元の肉屋さん特製)のおかげのような気がするので,今度隠し味なしで作ってみようと思う。どんな味になるかな。

・テーマパークのプールで遊ぶ,しかもウォータースライダーで急降下
私の地元には市民プールがある。小さい頃,夏になるとよく親に市民プール行きたい!と言っていたが,いつもダメと反対されていた。そういうわけで,テーマパークにあるような娯楽用の共用プールで遊んだのは今年が初めて。流れるプールに,波が来るプール…いろいろ遊べて楽しいじゃないか!ウォータースライダーもあったので初挑戦。ジェットコースターとかの絶叫系は苦手なので,心臓バクバクさせながら順番待ちをし,さぁ急降下。めっちゃ怖かったです。しかも滑り方のお作法がよく分かっていなかったからなのか,鼻に水が入って痛くなるし,水着も少しずれるし…。でももう1度挑戦。2回めもめっちゃ怖かったです。でも1回めよりは上手に滑れたかな…(汗)

・リンゴ飴を食べる
リンゴ飴,お祭りでよく目にしていたけれどこの歳になるまで食べたことがなかったという…。でもつい先日初めて食べて,あまりの美味しさに大好きになりました。歯でカツカツやっても飴の部分がなかなか割れず,食べるの難しかったのだが,来年はいっぱい食べたい!

・新聞の社説読むのを習慣化
もう3ヶ月くらいになるだろうか,新聞の社説を読み始めた。社説のまとめサイトでその日に気になったものを2本読む,というのをやっているが,なかなか論旨がつかめない。で,結局あなたは何が言いたいの?がつかめない。人の話を,人の意見を,その人の意図に沿って理解するって本当に難しくないか…。

・やってよかったデュアルモニター
年明けに,家で使うデスクトップパソコンを買った。これを機に2台のモニターを縦型と横型に設置した。2台モニターあるって便利だぁ~!PDFとか長めの文章は縦モニターのが断然読みやすい。それに,レポートとかまとめるとき,片方の画面に参考資料とかを出しておいてもう片方の画面で文章打っていく,というのも快適。いちいちウィンドウを切り替えなくて済むし,表示も大きいままで済むし!

・ひとり居酒屋でそわそわ…
長浜ラーメン
「ひとりで外食」に抵抗があるという話をよく耳にするが,私の場合は,時間帯(朝・昼・夜)とどういう店か(カフェ,レストラン,ファーストフード系など…)によって抵抗感が変動する。朝と昼はこれまでの経験と想像上,おそらくどういう店でも大丈夫と思われる。だが夜となるとちと話は違ってくる。カフェやファーストフード系など,一人客が多い店はあまり抵抗はない。だが,一人客がそれほど多くないレストランや居酒屋となると抵抗感がアップする…。だが,今年はひとり居酒屋をしてきた。どうしてもそこの居酒屋にある長浜ラーメンが食べたくて,入った次第である。盛り上がっているお客様が多くてうるさい店内。そして隣も盛り上がってるお客様。テーブルに座るとき,そのお客様と目があったが,ちょっと気まずかったのでささっとそらし,早速ラーメンをオーダー。ラーメンが来るのを待ってるときも,食べているときも,なんだかそわそわして落ち着かず,心なしかいつもより食べるペースも早く,でも替え玉はしっかりいただいて,お会計へ。落ち着いてひとり居酒屋する日は来るんだろうか。

・BLマンガの魅力発見
ひょんなことからBL漫画の世界に足を踏み入れました。これまでに読んだのは10タイトルくらいだろうか?好きになった作品もあればどうも苦手な作品もあったのだが,登場人物たちの心の動きを丁寧に描いた作品や,そのカップル間に生じているソウルメイト的な関係性を描いた作品に魅力を感じる。同じ恋愛ものでも,少女マンガや女性向けマンガを読んでいるときとはどこか違う魅力を感じている。そして,心理学本読むよりこっち読んだほうが人の気持ちや心をよく知れるんでは?と思ったこともしばしば…。来年もきっと読むだろう。
http://yukiron.blogspot.jp/2017/07/blog-post.html

来年も新しいことに取り組んでいく1年にしたい。第一夜はこのへんで。