自己紹介

自分の写真
オンラインで英語個別指導します https://yokawayuki.com/service

2015/08/20

ニュアンスが大事なの

ここのところ、マーク・ピーターセンの書いた「日本人の英語」シリーズ3作を読んでいた。「日本人の英語」、「続 日本人の英語」、「心にとどく英語」だ。20年近く前に出版された本だが、とても勉強になった。というのも、日本語にはないけれど英語にはある考え方や概念を日本語で説明してくれているからだ。たとえば冠詞と単数・複数の区別。英語には名詞の前にa, an, theなどの冠詞をつける場合があり、しかも複数形と単数形使い分けているが、日本語は冠詞はなくてOKだし、複数にするか単数にするかを文をつくる度に気にしない。だから日本語話者はたいてい、この名詞にはどの冠詞をつけるのがいいのか、複数形にしてしまうのがいいのかと悩んだり、冠詞を付け忘れたり、ということになる。私がいつも経験していることだ。一方英語話者は、本によれば、その名詞を発する時点でどの冠詞を使うか、複数形にするのかは既に決まっている。名詞にはその名詞が表す概念があり、冠詞にもその冠詞が表す概念がある。そして名詞と冠詞を組み合わせた時、組み合わせの違いで語同士の間にニュアンスの差が現れる。それをふまえたうえで話者は、言葉を発する際に自分の伝えたいことが伝わる語を選択しているのである。

言葉のもつニュアンスは、自分の言いたいことを相手に正確に効果的に伝えようとすればするほど大切になってくる。母国語ではない言語を使うならなおさらだ。私は中学レベルの単語ですらニュアンスをよく分かっていないと感じることがある。例えば「可愛い」ということを伝えたいとき、cuteを使うのがいいのか、prettyを使うのがいいのか…。前置詞も一通り中学校で習ったけれど、熟語として暗記している使い方以外、それぞれの前置詞の使いどころや、前置詞を使うべきかどうかの判断がいまいちできていない。和英辞典を使って日本語のある単語に相当する英単語を調べたとき、2つ3つ英単語が載っているときも困る。どれを使うのがいいのか…。神経質に考えすぎる必要はないが、伝えたいことが伝わらないことを避けるため、できるだけ適切な言葉を選びたい。英英辞典を使いこなせたら、この悩ましさは多少和らぐと思われる。英語を英語で説明しているからニュアンスの違いも示されている。それを感じ取り、身に付けることができたら今よりスムーズにコミュニケーションできるはず。あとは「日本人の英語」シリーズのように、英語の感覚を日本語で伝えてくれるものを活用する。英語のことでも日本語で理解できるにこしたことはない。そして日々の練習。英英辞典などで学んだことを英語を使うときに適用し続けること。

日本語にはないけれど英語にはある概念や考え方、英語の単語がもつ微妙なニュアンスは、中学校や高校での英語教育を通じても学ぶことができたらといいなと思う。少なくとも、私が中学や高校で英語を学んだとき、そういう教育はなかったし、現在塾で英語を教えていても、生徒たちが学校でそのようなことを教わっているという印象を受けない。私は高校時代、英語と日本語は容易に変換可能であり、構文や単語を暗記すれば済むと思っていた。それでも受験はどうにかなるし、確かに私の英語力はこのときの知識に支えられているところが大きい。でも、英語を使って自分の伝えたいことを伝え、それが相手に伝わる、相手が自分に伝えたいことを理解する、といった実践的なコミュニケーションをするときには、それだけでは十分ではないことも痛感している。それに、そういう微妙なニュアンスの違いや考え方の違いを知りながら英語を学んでいくほうが、ただ機械的に暗記するよりも頭に残りやすいし、応用がきくし、楽しいのではないだろうか。英語だって日本語と同様に、話者の意図や思いが込められて発されているのだから、そこにもっと注目してもいいと思う。