コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。
◇「9タイプ・コーチング―部下は9つの人格に分けられる」安村明史
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エニグラムを使って部下の気質を知り,その気質に応じたコミュニケーションを行うことで,部下を生かし成長させていきましょう!という内容。エニグラムを使うことでどんなメリットがあるかを,体験談を交えて書いている。また,自分がどのタイプかを判断するエニグラムのテストもあり。9タイプ全てについて,その特徴とコミュニケーションのとり方も載っている。
エニグラム,心理学を長年やっていたので存在は知っていたが,著者がいうほど信頼性の高いテストだとはまったく思っていなかった。著者によれば,エニグラムは,古代アフガニスタン王家に端を発し,最近では,9タイプはそれぞれ,脳内の神経伝達物質(ドーパミン,ノルエピネフリン,セロトニン)の活性の高低を反映しているということが分かってきた(そういう研究がある)。また,通常エニアグラムは質問紙法が用いられるが,著者たちは,絵を描かせてその絵からタイプを判断する,投影法の判断法も紹介している。同じタイプの人は,同じ傾向を持つ絵を描くらしい。
質問紙法をどうにも信用できない私としては,投影法による診断を受けたい気分だが。
興味のある人は,著者の会社のホームページへ。質問に答えると,無料で自分がどのタイプか教えてくれます。http://www.enneacoach.com/wp/
◇「カウンセラーのコーチング術」市毛恵子
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臨床心理士の著者によるコーチング論。カウンセリングで用いられる考え方も取り入れつつ,クライアントとのコミュニケーション法を述べている。
ところで,日常生活において,コミュニケーションがストレスを生じさせることはけっこう多い。どんなコミュニケーションがストレスになるのか。著者によれば,未完了感の残るコミュニケーションである。自分の投げた言葉を相手に受け取ってもらえない。相手の投げた言葉を受け取れない。会話はよくキャッチボールに例えられるが,キャッチボールがうまくいかないとき,その人の中では未完了感が残り,イライラが募っていく。未完了感のある人がとる行動は,人の基本的な行動パターンであるfight or flight。攻撃的になって怒りっぽくなったり,批判的になったり,相手の話をきかなくなるか,内にこもって口数が減ったり,人との接触を避けたり,他のものに依存したりしていくようになっていく。未完了感を減らすには,しっかり自分の話を受け止めてくれる人が必要なのだ。とはいえ,人の話を聴くのは難しい。なぜなら,人は忙しいから。それに自分が未完了感を抱えていたり,会話において相手より優位な立場に立とうとすると話は聴けなくなる。だからこそ,人の話を聞くことが商売になるということなのだろう……。
その他にもこの本には,タイプA, B, Cパーソナリティに対するコミュニケーション法や,気に食わない相手と関わるにはどうするか,などが記載されている。
◇「クライアント満足を10倍にする カウンセリングとコーチングの合わせ技」倉成央,谷口祥子
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臨床心理士とコーチ兼カウンセラーによる共著。カウンセリングとコーチング,重なる部分もあるけれど,その目的は違っている。カウンセリングは,病んでいる状態や落ち込んでいる状態,いわばマイナスの状態を改善してゼロの状態へ引き上げようとするが,コーチングは現在からさらなる成長を求めて,つまり,ゼロからプラスの状態へと引き上げることを目的とする。よって,クライアントの状態に応じて,カウンセリング的手法とコーチング的手法を使い分け,クライアントを効果的に導いていきましょうと説く。
カウンセリングでは,著者が取り組むインナーチェンジングセラピーと愛着カウンセリングが紹介されている。インナーチェンジングセラピーとは,小さい頃に取り入れてしまった思考・感情・行動のパターンを変化させることを目的とする。そのために,そのパターンを取り入れてしまった出来事を掘り起こし,そのとき感じた感情を十分に体験する,ということを行う。このようなプロセスを経て感情が処理されることで,理屈だけで変化させようとするよりも,自然な納得感を伴った変化を生じさせることができるという。愛着カウンセリングでは,理想的な愛着対象から十分に愛情を受けていることを想像させることで自己の安定を図っていくようである。
コーチングについては,それほど目新しい内容は書かれておらず,会話例は単純で,ホントにこんなふうにいくの?……という感じであった。後半は冗長気味。
全体的に誤植が多いのが気になった……