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2019/06/09

コーチング関連本を読んでるよ Week 27~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。ついに残り30冊となりました。

◇「仕事は「外見」で決まる! コーチングのプロが教えるプレゼンスマネジメント」鈴木義幸
目線,相手との距離,話し方,顎の位置,姿勢などのノンバーバルな要素は,コミュニケーションの印象に大いに影響する。だから,それらをコントロールし,相手に誤解を与えないように,また,良い印象を与えられるようにしていこう,という目的で書かれている本。どのようなノンバーバルコミュニケーションが良い印象を与えるか,そして,どのような練習によってコントロールすることができるようになるか,がまとめてある。
個人的に練習したいのは,眼のコントロールと話し方。人ともう少し目線を合わせて話をするようにしたいし,言いたいことを分かってもらい,共感してもらいたいから。

◇「世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方」岡田昭人
英・オックスフォード大学大学院出身の著者による,オックスフォード大学での教育の仕方やオックスフォードの文化(どういう人が集まっているかなど)を紹介している。
オックスフォードの教育は,チュートリアルが主流。教員と学生が対話する中で, 知識や理解を深めていくという。 チュートリアルでは まず教員から自分が選んだ文献について えられた知識や それが自分の研究テーマとどう関わってくるかを尋ねられる。 一週間あたり最低でも5から10点の文献を読み込み知識を吸収すること, そしてそれをもとにエッセイを書くことが求められるとのこと。 次に 自分の書いたエッセイをもとにして,教員からの質問にすべて答えなければならない。 質問はあらかじめ与えられていた課題に関するものである。 例えば言葉の定義やそのように考えた根拠やデータ,批判的な議論がなされていないなどの指摘を受ける。 次の時間が終わると, 今回のチュートリアルで何を得たかや今後どのような展開をするかについて教員と学生は話し合いを行う。 これは討論ではなく 互いに協調する形での意見交換とのこと。
またオックスフォードでは,常識を打ち破る思考について日々訓練されているようだ。 それは,常識と思われることの真逆のことを考える→ 常識によって導かれている行動を批判する→ 常識を批判する場合の対策を考える→ 新しい常識の構築と効果の検証,という順でなされる。
また,3人1組で議論させる授業では,最初の1人は意見を述べ,2人目は1人目の意見を批判し,3人目は2人の意見を批判する。そして,最後にクラス全体で何を議論したかを話し合うという。 ”批判することは議論を深めることである”ということが 腹落ちしていないとなかなか難しいのではないだろうか。 そしてそれを楽しめるかどうかも。

◇「上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン」向後千春
向後さんには,大学時代に彼のサイトにお世話になった。統計や三角ロジックをだいぶ噛み砕いて教えてくれたからだ。本著も非常にわかりやすい。イラストを多用し,トピックごとの説明は完結,章末に確認テストがあるので理解度を自己評価できる。行動心理学・認知心理学・社会心理学の知見が散りばめられている。

◇「あなたを活かすコーチング―いつも「うまくいく人」の会話術」吉田典生
コーチングスキルとはどんなものかを,日常の会話や自身がコーチとしてどう対応したかのケーススタディなどを交えながら説明していく内容。マニュアルらしさはなく,コーチングってこんな感じか!という雰囲気を掴むのによいと思う。
自分と相手は違う,それぞれの相手に響くコミュニケーションを考え生み出していくこと,人が頑張るのには他人からの受け止めやサポートがいる,人は演じる動物である,を心に留めておく。

◇「コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで」ジョセフ・オコナー,アンドレア・ラゲス
コーチングの歴史に始まり,世界で展開されているコーチング手法のいくつか,人間の発達,異文化間でのコーチング,コーチングの未来などについて述べた本。タイトルどおり,コーチングに関してこれまで読んだどの本よりも多くの内容を扱っている。
これまで読んだコーチング本で,その手法に細かな違いがあることは分かっていたのだが,あるものはある流派を踏襲しており,あるものはその人独自のものなんだろうな,ということが分かって,私の中のコーチングに関する知識基盤を補強していくれるような本であった。とはいえ,全体を通して厚みのある内容なので,折に触れて読み返したいと思う。

◇「部下の行動が1カ月で変わる! 「行動コーチング」の教科書」石田淳
通常のコーチングは,クライアントの気持ちを高め,前向きにやる気にさせることは可能だが,目標達成という結果にどうも結びついていないんじゃないか?と主張し,結果を出すためのコーチングを提唱する。著者は,アメリカで行動分析を基にしたマネジメントを学んでおり,クライアントを”行動させる”ことに主眼を置く。行動して,結果が出て,だから,また行動するという好循環を回すことで成長を促すのである。
主張も手法も明確で分かりやすい。肝は,目標の裏にある動機づけ条件を正しく把握すること,目標達成のために必要な行動は,クライアントがちょっと頑張ればできるくらいの行動まで細かく細かく分解し,その行動をひたすらこなしていく。通常のコーチングでは行わないことの多い,どんな行動をすればよいか等のアドバイスも行う。つまり,行動するまでにクライアントがぶち当たるであろう障壁(何をしたらいいかわからない,自分にはそれができるとは思えないなど)をことごとくつぶし,実際の行動へと促すわけである。それでも行動しないとしたら,それはもはや動機づけ条件が誤っているということだ。また,行動したところで目標達成していないのだとしたら,それはすべき行動が間違っていたということである。と,結果が見えるから検証もしやすい。
共感できる内容であった。

◇「潜在能力をひきだすコーチングの技術」ジョン・ホイットモア
ティム・ギャルウェイのコーチング「インナー・ゲーム」の流れを組んだコーチングについての本。コーチングは,クライアントに主体性と責任を持たせるための手段とする。いずれもクライアントから生まれるものであり,他人からの強制はできない。そして,この2つを補完するのが「意識」である。問題に関連する情報を収集して知覚し,どう関連するか判断する,自分が経験していること,自分の身体の感覚を認識する,また自分の欲望や感情によって知覚がどう歪められるかを認識する…。要するに,現実の正確な把握である。意識を十分に稼働させることで,主体性は保たれる。よって,クライエントが自身の意識を高め,責任を引き受けるように,質問や行動計画づくり,態度でサポートしていくのがコーチングである。
チームコーチングに関しての記載もあり。組織内で成員の意識が帰属→自己主張→協力へと成長していく,というのを学んだ。
正直読みづらい本であった…。

◇「奇跡のコーチング クラウディオ・ラニエリ伝記」ガブリエル・マルコッティ,アルベルト・ポルヴェロージ
イギリスのサッカーチーム,レスターを優勝させた,クラウディオ・ラニエリの歩みをまとめた本。幼少期に始まり,選手時代,選手兼監督時代,監督時代と時系列で彼のエピソードをまとめている。著者はどちらも記者である。
欧州サッカーに門外漢の私が読むには難儀な本であった…。大量のカタカナの名前やサッカーの試合の展開など,内容のイメージ化があまりにもできなすぎて,流し読みになってしまった。なのでろくなコメントができない。

◇「コーチング・バイブル―本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション 」ヘンリー・キムジーハウス,キャレン・キムジーハウス,フィル・サンダー
こちらの本,今回読んだのは3rd edition なのだが,実はこの企画を始めたばかりの頃に(おそらく)前の版を読んでいた。結構内容が変化している,というのが読後の印象。前の版では、自分の成長を妨げる「グレムリン」の存在が私にとってはとても印象的だったのだが,今回の版では「グレムリン」という言葉は出て来ず,ほぼ同じ概念を表す言葉として「サボタージュ」という言葉が登場した。
で,「コーチングのすべて」を読んだ今,やっと私の理解が追いついたのだが,こちらの本は、コーチングの中でもCo-Activeコーチングと呼ばれる流派の考え方や手法をまとめたものである(前の版を読んだときには、コーチングの他の流派との絡みで捉えていなかった)。Co-Activeコーチングの基本は,クライアントとコーチの関係は,クライアントの目的を満たすことを目的として結ばれた対等なパートナーシップ(同盟)だということ。ここをベースに,人生における充実感(フルフィルメント),欲望や行動におけるバランス,クライアントに変化が生じるまでの一連のプロセスに着目して,コーチングを展開していく。コーチングに必要なコーチのスキルは,傾聴・直感・好奇心・行動と学習・自己管理である。
Co-Activeコーチングでは,クライアントの問題解決にのみ焦点を当てるのではない。その問題や課題がそのクライアントの人生とどのように関わっているのかといった,その人自身やその人の人生などその人全てに着目していく
また,クライアントは,自身の価値観に沿って生きることでの充実を得られるようサポートする。これらのことは共感できるポイントであった。

◇「コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目」青木安輝,小野仁美,髙原惠子,本間正人
日めくりカレンダーのように,1日に1つ,コーチングに関する小話を提供する本。4人のコーチが3ヶ月分ずつ担当しており,文体や内容にそれぞれのコーチのカラーが反映されているのがまた面白い。他者に対してコーチをしている人も,自分で自分をセルフコーチングするときにも参考にできるtipsがたくさんある。それぞれがストーリー仕立てになっているのでまとまりがあって読みやすい。ただ1話の分量は,新書サイズ半ページで収まるくらいの量で少なめ。なので,しっかりじっくりコーチングについて学ぼう!とするときよりも,基礎的なことを確認したい,要点を知りたい,ちょっと息抜きしたい,ときなどに手に取るとよいかと思う。


102/122 読了 

2019/05/23

コーチング関連本を読んでるよ Week 15~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「ケーススタディで学ぶ 「コーチング」に強くなる本 現代の上司に必須のコミュニケーションスキル 」本間正人
上司と部下の会話を集めたケーススタディ集。 5つのテーマに関する会話が掲載されており,会話の中でコーチングがどう展開されているかが分かるようになっている。これまで読んできた本間さんの著書に掲載されているケーススタディと同様,人間臭い登場人物が出てくるため,親近感をもって読める。
仕事に不満を持つ部下に対してのコーチングに基づいた会話では,上司が部下を言いくるめているという印象を強く持った。ということは,コーチにクライアントにそう感じさせないほどのスキルがないと,かえって逆効果になるということだろう……。

◇「メンタル・コーチング~流れを変え、奇跡を生む方法~」織田淳太郎
複数のスポーツ選手や監督,コーチの行動や考え方を提示しつつ,試合に勝つメンタルを育てる方法を解き明かしていく本。トランスパーソナル心理学,フロー状態,恐怖に打ち勝つ術,フォーカシング,呼吸法,反復練習,セロトニンの効用などいろいろな話題が登場するが,つまるところ,パフォーマンスをしているときにどれだけ自分に囚われないでいられるか,が試合でよいパフォーマンスをするカギのようである。自分に関わること-例えば,うまくプレイできなかったらどうしよう,チームに迷惑をかけるかもしれない,負けたくない等,の思いはパフォーマンスを阻害する。だから,そういう思いをパフォーマンス中に出さなくなるよう,日頃トレーニングを積むのだ。
その方法としての,恐怖に打ち勝つトレーニングとフォーカシングが印象的だった。恐怖に打ち勝つため,ある選手は負けることを日々想像する。負けた自分が相手からどう見えているか,つまり相手の視点を想像する。すると自分の穴やウィークポイントが見えてくる。そしたら,そこを埋めるためにまたトレーニングするのだという。フォーカシングは,自分の中にあるモヤモヤを顕在化させるための方法だ。顕在化されたモヤモヤを無理矢理ではなく,自然に受け入れられるようにしていく。
いずれにしても,自分の感情や心の底に溜まっている思いを解きほぐして受け入れることがカギだ。そのプロセスを日々経ることで,パフォーマンス中に雑念に振り回されることがなくなっていくのだろう。

◇「[図解] ビジネス・コーチング入門 「双方向」コミュニケーションへの50の視点」本間正人
本間さんの著書,結構読んできたが,いつもながら分かりやすくまとまっている。コーチングとは?に始まり,似て非なるものである,カウンセリングやコンサルティング,アドバイシング,ティーチング,メンタリング,マネージングとの違いの説明や,おなじみのGROWモデル,キャラクター設定や状況が把握しやすいプロットでのコーチング実践例を提示している。
これまでに私が読んだ本間さんの著書には記載がなかったと思われる内容の1つが,無限選択肢のスキルというもの。これまでのやり方にとらわれず,常に新しい選択肢を探し取り入れていきましょうというものだが,抜本的に新しいものにせずとも,これまでのやり方の一部を変えたり,逆発想で見直したり,先を見通したり,複数の方法を組み合わせたりすることで変えることができるのだ。

◇「目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか?」播摩早苗
私の現状にちょうどささる時期に読んだからなのか,とてもタメになり,思わずたくさん線を引いてしまった次第。これまで読んだコーチング本の中で,私的には上位にランクする。コーチングの必要性や手法を伝えつつも,マニュアル感はなく,説明を噛み砕いて言語化してくれているところが素晴らしい。特に,コーチになりきれていない人,コーチ,コーチされる側の心を分かりやすく伝えているのがよかった。
コーチングでは,答えはクライエントの中にあるとしているが,この答えは心の奥底に秘められているものであり,そう簡単には出てこないらしい。すぐ出てくる答えは,「常識的で平凡」。そして,自分から出した答えでないと人は動かない。これらを明示してくれたことが励みになった。

◇「4つのタイプ コーチングから生まれた熱いビジネスチームをつくる」鈴木義幸
コントローラー,プロモーター,サポーター,アナライザーの4タイプについて,それぞれがどういうタイプか,それぞれのタイプの上司・部下をもったとき,どのようにコミュニケーションをとればよいかを述べた本。自分がどのタイプかを診断できる簡易テストや,行動傾向からのタイプの割り出し方も記載している。
タイプといっても,どういう傾向が強いかという程度のもの。それぞれのタイプは完全に独立したものではなく,大抵はいくつかのタイプが混ざりあっていると考えると良い。本では,それぞれのタイプに関する特異的な傾向しか示されていないため,内容は分かりやすいが,ある人間について,どのタイプがどのくらい……となるとすぐに答えは導けないように思う。
著者自身のエピソードは,私自身のタイプを考えるうえで参考になった。

◇「マンガでわかる! 子どもの心のコーチング 実践編 」菅原裕子
40個のケースを紹介。それぞれ,見開き2ページの漫画でこんな困ったことが起こってる!という内容を提示し,次の見開き2ページでその困ったをコーチングのコミュニケーションを使って解決していく。困った!の内容は,デフォルメされた絵でコミカルに描かれているので楽しく読める。解決ページも,菅原さんの他の本と変わらず,暖かさと子育て応援の雰囲気が漂う。菅原さんの子育ての基本的価値観である,愛すること・責任・人の役に立つ喜び,は健在。

◇「究極の勝利 ULTIMATE CRUSH 最強の組織とリーダーシップ論」清宮克幸
早稲田大学ラグビー部監督としての5年間をまとめた話。 早稲田大学ラグビー部にどのような練習を取り入れ,どのように選手たちに接し,どのように強いチームに仕上げていったかをまとめている。また, 清宮さん自身が尊敬している監督たちとのエピソードにも触れられている。
監督をするうえで心構えやコーチングの手法がまとまっているわけではなく, ラグビー部での活動記録の色合いが強い。よって,ラグビーにあまり興味のない私は,途中で飽きてしまった。とはいえ,「スローガンは具体的な動きをイメージできるものでないと弱い。つまり,空念仏のようなものに終始してしまう」のくだりには響くものがあった。なぜなら,私自身が様々な言葉や話をインプットする中で,私を動かす言葉と動かさない言葉があるということを感じているからだ。動かさない言葉は,さっと通り過ぎていくだけ。そういうわけで,自分に対して,そして誰かに対してスローガン・目的・目標を掲げるとき,自分を,そして他者を動かすような言葉を紡ぎたい。

◇「最強のコーチング」清宮克幸
清宮さんの監督経験から導いたコーチングのtips,リーダーとしてのtipsを10個にまとめた本。こちらもラグビー部監督時代のエピソード(先の本とかぶる内容あり)を多数含む。第1章の清宮さんの人柄が示されていた部分が私はいちばん面白かった。自身が認めるアクの強さ,共創型リーダーとはかけ離れているが,自らが頭をとって周囲を巻き込んでいけること,要領重視なこと,など。リーダーの形はいろいろだ。

◇「今すぐ使える!コーチング プロコーチだけが知っているとっておきの方法 」播摩早苗
上記したとおり,先に読んだ播摩さんの本がとてもささった,という気持ちを抱きつつ本書を読み進めた。そして本書もまた,しっくりくる内容だった。
内容は,会社組織での上司-部下の関係におけるコーチングがメイン。その中で,コーチングの基本的な考え方やスキルを解説し,コーチングセッションの事例を提示する。そして,コーチングを実際してみてからの困った!に寄り添い応えるような,アフターケアのページも用意されている。やはり,播摩さんは言語化能力のある方だと思う。何気なく読んでいると分かった気になってそのまま流れてしまうような内容を,詳細に分かりやすく述べてくれるので,心にストンと落ちてくるような感じがあるのだと思う。
彼女が提唱するコーチングスタイルもそれそのもの。相手の話を聴くことをスタートにし,「本質を明確にする」ことを重視する。人は,曖昧な認識のまま,適当で,近そうな言葉を使って話をしがちのため,相手の発した内容についてより詳しい話を求めながら,相手の言わんとしていることの本質をとらえるべきとする。
事例についても,彼女の表現力が生きている。だからだろうか,他の本で読んだ事例に比べて馴染みやすく,自然で,受け入れやすい感じがする。

92/122 読了

2019/05/03

骨折から3ヶ月経ちまして。

1月に,生まれて初めて骨折をした。折ったのは,背骨の先っぽあたりの仙骨。自宅アパートの外階段を降りているとき,足を踏み外してお尻からどすんと落ちて,そのまま数段更に落ちた。ほんとにほんとに痛くて痛くて,すぐに立ち上がることができなくて,小声で呻いていたのだけれど,そのまま座ってると,コンクリート?の階段でお尻がどんどん冷たくなっていくし,そもそも出かけようとしていたときなので,ヨレヨレしながらなんとか立ち上がり,ゆっくりとぼとぼと歩いてみた。一応歩けたので,骨は折れていないかな…と思ってたのだけど,椅子に座ろうとすると痛いし,座った姿勢を維持できないしで,どうにも我慢ができず,その日の夕方病院へ。で,「折れてますね」と骨折宣告を受けたわけです。

骨折から3ヶ月が経ち,もう走ったり運動したりと骨折前と変わらぬ生活が送れているわけだが(2ヶ月過ぎたあたりでもう癒合してますね,と言われた),折った箇所はたまに鈍痛が生じます。座り方のせいなのか,天気や気圧のせいなのか,原因がよく分からず,しかもずっと痛いわけでもないので,とりあえず様子見しているが,折った箇所というのはそういうもんなのか…?と初めてのことでよく分かっていない状態です。
とまぁ,骨折のせいで何かと不自由な状態だった2ヶ月間だったのだけど,人間というのはすごいですね,その不自由さを抱えつつ生活に適応しようとしていくわけで,若干生活に変化が起こっていた。かがむと痛みが増すので,床に置いてあるものを足でとったり,そもそも下にものを置かないようにしたり,駅などにある公共の手すりをしっかり使ってありがたみを感じたり,とろとろスピードで歩いている人たちに対してイライラすることが減ったり(私は本来歩くスピードが早めだが,痛くて早く歩けなかったので)と,いろいろ考えたり,思ったり,感じるところがあったりした。その中で,骨折がほぼ治った今でも継続されてる変化が2つある。それは,時間に余裕を持って行動することがデフォルトになりつつあることと,自分を労るようになってきたこと(無理をしなくなってきた)だ。
時間に余裕を持って行動すること,これが自然にできる人がいることは承知しているが,私はそうではない。多分昔から。学生時代から遅刻ギリギリで登校することが多かったし,人と待ち合わせてもオンタイムか数分遅れることが多かった。仕事に関しても,出勤時刻少し前に行くので,もっと早く来なさい。と昔先輩?から言われたこともある。とはいえ,時間に余裕を持って行動することができないわけではない。早く行こう!と気合?を入れればちゃんと行けるが,それは私にとってかなり違和感のあることなので,継続されないのである。たまたま早く家を出過ぎてしまったときなどは,途中に寄り道をするなどして時間をつぶして,ギリギリに到着するのが自然なのである。

ところが骨折をしたら,身体が思うように動かなくなった。それによって,自宅から最寄り駅まで歩くだけでもいつもの倍以上の時間がかかり,駅から仕事場まで歩くにも,離れているときにはどのくらい時間がかかるか読めない。しかも,痛いから,いつもよりも注意深く慎重に歩きたい。ということで,そうせざるを得ず,かなり時間的余裕を見込んで行動するようになった。で,痛いうえに,こんな状態で目的地に向かう途中に不測の事態が起こっても困るので,寄り道もせず余裕を持って到着するようになった。
仕方ない…と思って始めた時間に余裕を持った行動だが,何度か繰り返していたら,時間に余裕を持った行動は,時間ギリギリの行動よりも,かえって楽だし効率がいいと感じるようになってきた。なんといっても,その場に到着してから落ち着きを得られるのである。しかも,落ち着いた状態で,その時間に次のタスクの準備やシミュレーションもできる。ギリギリで行動してバタバタしながらやるよりもなんと実があることか……。時間に余裕を持って行動すると,ギリギリで行動するよりも時間の無駄が多いと感じていたのだけど,この得られる落ち着きは全然無駄なものではないと思った。
そういうわけで,骨折がほぼ治っている今も,時間に余裕を持った行動を継続している。前の,ギリギリ行動に幾分かの余裕を加えた程度だけれども,ずっとやっていくと,何らかの事情によってギリギリになることに焦りと不安を覚えるようになってしまった。これが習慣化の力なのだろう。

続いて,自分を労ること(無理をしない)に関して。私は自分で骨が太く強い方だと思っていたので,骨折をしたという事実自体が驚きであった。あぁ,私も骨折するんだ……と,三十路過ぎて若干身体や体力に変化が生じていることも相まって,少しショックでもあった。それで,もっと私を労わろう,無理をしないようにしようと決めた。
時間に余裕を持って行動することも,ある意味,自分を労るの範疇に入る。ギリギリ行動することでバタバタしてしまうのは,なんとかなっているように見えても,自分のキャパを超えているからバタバタしてしまうのだろう。落ち着きを得ながら行動できれば,それは自分のキャパ内でできているということだ。そして,マルチタスクを前よりしなくなってきた。そもそもやることを減らし,ちょっとした計画を立てたりするようにし,何かをやるときにはなるべくそれのみをやる。そしてそれが一段落したら次のことに取り掛かる。そして,計画通りいかなかったら,また新しい計画を立てる。そういうふうにしている。また,睡眠時間を確保するようにもしている。睡眠時間が勿体なくて,4.5時間辺りまでどうにか削れないものかと頑張っていた時期もあったが,それはやめることにした。今は1日7時間くらい寝てるだろうか。よく寝ると身体の調子がよく,ストレスも減る。だから,1日をやはり落ち着いて過ごせる。

というわけで,もう二度と骨折はしたくないが,骨折をしたからの気づきもあったので,それはそれでよかった。人の行動や思考も,変えざるを得ない状況に陥ると,気合などに頼るよりも簡単に変わっていき,その変化が自分にとって良い感じだと,これまた自然に続いていくのだなと実感した次第でもある。

2019/04/28

最近読んだ,認知科学本がとても面白かったよ! 「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」「知ってるつもり――無知の科学」

人の思考や認知に関する話は本当に興味深い。「なんで私はこう考えるのか?」「なんであの人はそう考えるのか?」人と話しているとき,時折これらの問いが私に降ってくる。簡単に答えられるとは思わないし,それを言い訳にして,この問いの答えを真剣に考えてもいないのだが,それでもやっぱりそういう話には興味があるし,もっと知りたいと思って本を漁ることもしばしば。そういうわけで,認知科学分野の最近読んだ本を3冊紹介する。どれもとてもオススメです。

さて,どれから紹介しようか…読みやすい順でいこうか。

・「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロランド
私達は思い込みで世界を見ている ー果たしてそれはどんな思い込みなのか?
私達が犯しがちな思い込み10個を実例を上げながらわかりやすく・面白く解説しているのがこの本だ。
著者のハンス・ロスリングは公衆衛生の専門家で,世界の様々な地域で活動していた。なので話は,世界は今どんな状況なのか?を私達の多くが誤解しているというところからスタートする。本のはじめに世界の状況に関する13個の質問があるのだが,これらの質問に正しく答えられる人はチャンスレベルよりも少ないことがほとんどだ(本の中で,国別の正答率や専門家における正答率が紹介されている)。私も数問しか正解できなかった。そして,その誤解のもとになっているのは私達の10の思い込みであるとし,データや事実を見て世界を正しく認識しよう,と呼びかける。
ハンスたちの特筆すべきところは,彼らはただデータや事実を見て世界を正しく認識しようと訴えているだけでなく,そのデータや事実を,統計や数字に疎い人にとっても分かりやすく提示しているところである。政府のサイト等でデータを見たことがある人は分かると思うが,素データというのは,素人には非常にとっつきずらい。どう解釈したらいいのか分からないことも多々ある。本書には彼らが作ったたくさんの図や表,集めた写真が提示されていて,そのデータの意味するところが直感的に分かるようになっている。本書でも紹介があるが,彼らが作って公開しているGapminder(https://www.gapminder.org/dollar-street/matrix)やDollar Street(https://www.gapminder.org/dollar-street/matrix)をぜひ見ていただきたい。

ちなみに,ハンスの考える10個の思い込みは,分断本能・ネガティブ本能・直線本能・恐怖本能・過大視本能・パターン化本能・宿命本能・単純化本能・犯人捜し本能・焦り本能である。原文では,本能をinstinctと使っている。つまり,人がつい飛びついてしまう思考の癖がこの10個である。詳しい説明は本書を参考にしてほしい。

ところで,ハンス・ロスリングはTEDで常連のプレゼンターでもあった。私が彼を初めて知ったのも,昔Eテレでやってた,TEDのプレゼンを紹介する番組「スーパープレゼンテーション」だった。彼の,洗濯機の話の,洗濯機があるから図書館に行けるのくだりがとてもとても印象に残っていて,この本が本屋で平積みされているのを見たときに,あぁ!この人!と思って本書に手を伸ばした。
ちなみに,洗濯機のプレゼンはこちら。


このビデオを見てもらうと分かる通り,彼はとても熱を持って話すプレゼンターだ。本書でもこの熱は健在で,まるで彼が私に語りかけてきているような文章になっている。だから読みやすいし,面白い。

・「知ってるつもり――無知の科学」スティーブン・スローマン,フィリップ・ファーンバック
続いて紹介するのも,人の思い込みにまつわる本だ。タイトル通り,私達は”知ってるつもり”になっている,ということを提示し,なぜ知ってるつもりになるのか,そもそも私達はどう思考するのか,”知ってるつもり”状態の中,私達はどう行動しどう意思決定していけばいいのか,などを説明している。こちらもとても面白く,だいぶ読み応えのある本だった。複雑な話をしているが,筋道や結論がしっかりしているので,それらが理解を助けてくれる。
印象的だったのは,”知ってるつもり”が生じる1つの理由でもあるが,私達は私とそれ以外の境界を明確に捉えていない,という話。私達は思考するとき,自分の身体と自分の外の情報を利用して(モノだったり,他者の意見だったり,思考のツールとしてテクノロジーを使ったり)思考する。それらの情報と自分の身体・思考は行ったり来たりして相互作用が生じており,明確に分別することは難しい。それゆえ,それらの外部情報が簡単に手に入ったり,身近なものであるときはなおさら,自分の頭の中にある知識ではないのにもかかわらず,それらについて”知ってるつもり”になってしまう。そしてその”知ってるつもり”はよく問題を生むのである。
”知ってるつもり”は悪ではない。”知ってるつもり”のおかげで,私達は極度な不安に陥ることなく生きていられる。自信を持って主張したり行動したりもできる。でもやはり,”知ってるつもり”はしばしば厄介な状況を引き起こす。だから,自分が何を知っていて何を知らないかについて正しく知ることは必要だし,コミュニティにおいて”知ってるつもり”による弊害を少しでも減らすために,著者らは個人の強みを活かしたチームでの活動や「リバタリアン・パターナリズム(緩やかな介入主義)」を提案している。「リバタリアン・パターナリズム」は,たとえその人が”知っているつもり”になっていたとしても,その人が本当に望んでいることや整合性のある決断を下せる判断をさりげなく薦める,という発想である。つまり,人が賢い判断をしやすくするための環境設計だ。その際の教訓として著者らは,噛み砕く(難しい事柄を5歳児でも分かるくらいに噛み砕く),意思決定のための単純なルール作り(分かりやすく実行しやすいルールを提示する),ジャスト・イン・タイム教育(その人が必要としているときに判断を助ける情報を提供する),自分の理解度の確認(自分が何を分かっていて何を分かっていないのかを把握する)を挙げている。

・「「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか」クリス・バーディック
さて,意図したつもりはないのだが,最後に紹介するのも人の思い込みにまつわる本になってしまった。こちらは,人が期待している結果・予測していることが,いかに実際の結果・未来に反映されるか,を説明した本である。そして,その期待している結果や予測は,自分自身の欲求はもとより,周囲から入ってくる情報の影響を非常に受ける。とにかく事例や実験の紹介が多く,そのせいで若干くどさを感じてしまうきらいもあり,また神経科学や医学系の専門用語が登場し理解に時間がかかるところもあるのだが,自分たちの思考が未来の事象に影響を及ぼすことをここまで提示されると,怖くなると同時に日々の自分の思考についてもっとモニタリングしないとなという気になってくる。ポジティブな期待・予測とネガティブな期待・予測のどちらも反映されるというのだから,なおさらだ。

以上で本の紹介はおしまい。どの本も,身につまされることの多い内容であった。そしてぼんやりと浮かんできたのは,短絡的な人間,コントロールが及ばなすぎる世界で生きる人間の姿(こんなことを言うこと自体 ”知ってるつもり” なんじゃない?と言われそうだが)。なんと愚かで無力!と上から目線でぶった切りたくなるが,もちろん私も人間なので,その姿は自分の姿でもあるわけです。ぶった切っても何も解決しないので,それを抱えながら生きますか…。

2019/02/21

げに便良きかな,音声入力

私は冷え性だ。冬になると指先が冷たくなって,パソコンのキーボードを打つのが正直しんどい。 手が冷たいと,キーボードを打つスピードも遅くなる。 だからどうしても, 長い文章を書くことが億劫になりがちだ。とはいえブログも更新したいし, 月1-2回ペースでやり取りしている海外の友人にも長めのメールを書きたい。どうにかならんもんかな,と考えていた矢先,そうだ,私も音声入力やってみるか!と思った。というのも,私が購読しているメルマガの著者が,音声入力でメルマガを書いていると言っていたからだ。そのメルマガには,毎日3000字~4000字超の文字が書かれているが,音声入力で書き,キーボードはちょっとした修正をするときに使う程度のため,負担が少ないという。

そういうわけで,先週から私も音声入力を始めた。 今も音声入力でこの記事を作っている。とりあえず今私が持っているデバイスは,Windows PC と Android スマホ。それぞれで音声入力ができる方法を早速 Google先生にask。で暫定的に,PC では Google Chrome 上で使用できる Googleドキュメントと dictation.io を,スマホではスピーチノートというアプリを使うことにした。より使い勝手の良いものが見つかったら,変えていくつもりだ。ちなみに,これらはすべて Google の音声認識システムを利用しているので,どれを使っても精度に遜色はほとんどない。

さて,音声入力を始めて驚いたことは,その精度の高さである。私はこれまでに,日本語と英語,ドイツ語の音声入力を試したが,普通にしゃべれば確実に認識してくれる。しかも正しく。1文を一気に話してもほとんど問題ない。話してから入力されるまでのスピードは,やや遅い感はあるが,許容できる範囲である。

日本語については,もちろん漢字,カタカナ変換も勝手にしてくれる。同音異義語に関しては,たまに間違った変換をするが(本記事の精度は最初,制度と変換された), イライラするほどの頻度ではない。 また,そういうときに1回修正をすると,恐らく Google はその修正を学習するのだろう。 次にまた同じ間違いの変換をしてくることはなくなっていく。 少し面倒なことといえば,句読点や改行,かっこなどの記号を音声で入力してくれないことである。 Google ドキュメントにおいては,英語に関しては,指定のワードを話すと(ボイスコマンド),ピリオドやカンマ,改行などを入れてくれるらしいが,日本語だとその機能は今のところないらしい。dictation.ioも然り。スピーチノートに関しては, Google Play 内のアプリ説明のところで,ボイスコマンドが使えると書いてあるが,いまいちやり方がわかっていなくて使っていない。なので基本,句読点や記号を入れたいときには,キーボード入力となる。 スマホでも同様で,都度入力している。

英語の音声入力に関しては,海外の友人にメールするときに使用している。 音声入力はある意味,私の発音チェック機能を備えているわけで,ちょっとドキドキしながら話してみた。結果,ほとんどちゃんと認識してくれた。正しく認識をしてくれないときは,私の発音がよろしくないというメッセージ…ということで,精進することにする。

ドイツ語の音声入力に関しては, 数年間ドイツ語を学習していたので遊び半分でやってみた。自分で文章を作るのは時間がかかるので,とりあえずドイツ語の記事を読んでみたが,やはり私のドイツ語読みはたどたどしく,正しく認識してくれた単語数は英語に比べて格段に下がった。こちらも精進が必要である。

音声入力を始めてもう1つ気づいたことがある。 記事やメールを書き上げるまでの時間は,キーボード入力のときとそんなに大きくは変わらないということである。私は元々キーボード入力がそれほど遅くない。だから,音声入力でシステムが文字化してくれている時間と,私が同じ内容を書くためにキーボードを叩く時間は,大きくは変わらないのである。とはいえ打ち間違えや変換ミスを私もするから,それを考慮すれば,音声入力の方がやや早いくらいだろうか。 私の場合,記事やメールの内容を考えるのに時間を要する。 考えながら喋るし考えながら書く。記事やメールを書こうとすると,構えてしまうのだろうか?すぐに言葉が出てこない。だから結局,音声入力を使っても仕上がるまでの所要時間は大きく変わらない。

だが,キーボードをそれほど使わなくていいというのは非常に楽だ。冷たく固まった手を頑張って動かす必要がないし,基本マイクに向かって喋ればいいだけなので,パソコンの前に座る必要すらないのかもしれない。そう思えば,スマホを使った音声入力は,パソコンよりも気軽に使える。 ということは,いつでもどこでも好きなときに,ながらですら文書を書けるということだ。

何か行動しようとするとき,その行動を起こすのに1つでも面倒なことがあると,人はその行動をやらなくなるようだ。全くその通りである。「手が冷たいからキーボードを打ちたくない」。もちろん記事やメールの返信を書いたりはしたいのだが,ついつい億劫になってしまいがちだった。でも音声入力を始めてから, 億劫さはだいぶ減った。 今から10年くらい前,卒論やインタビュー記事をまとめるのに,必死にテープ起こしをしていたあの頃を思えば,無料で,しかも精度も高く,様々な言語に対応している音声入力を使えるなんて,なんて便利な世の中になったものだろうか。

音声入力生活を今後も続けてみようと思う。


以下,参考までに…
◆dictation.io
◆Speechnotes スピーチノート - 音声から文字へ

2019/02/19

コーチング関連本を読んでるよ Week 14

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「コーチングの教科書-「最高の能力」を引き出す」本間正人
本書は,教育現場でコーチングをどのように使っていくか,を中心に書かれている。集団指導が中心の学校教育では,個人に合わせた教育をすることは困難。とはいえ,ひとつの方法が万人に通用するわけではない。そこでコーチングの手法を使い,集団指導では賄えない部分を補おうというわけだ。コーチングは,基本的には個に向けたものである。個人が持つ力をより引き出し,高めていくことを目的とする。
また本書には,複数の事例が載っている。うまく自分を表現できない生徒,すぐに人を頼る生徒,勉強しない生徒など,対応に少し工夫が求められる生徒像を設定し,長めの会話例を用いて実際どうコミュニケーションをとるかを提案する。

◇「コーチング入門 第2版 」本間正人
コーチングの世界ではおなじみの,本間正人さんによるビジネスマン向けのコーチング本。 部下の能力をいかに引き出すか,を念頭に置き構成されている。コーチングの基本スキルと3つのケーススタディを掲載。コーチングにはたくさんのスキルがあるが,今回紹介しているのは核となるスキルである,傾聴・質問・承認。また,コーチングを実際に進めていく上で,参考となるGROWモデルも掲載。GROWモデルは目標設定~達成までのプロセスをモデル化したものなので,初心者にとっても案内役として機能し,使いやすい。ケーススタディに関しては,相変わらず面白い。彼の本はこれまで何冊も読んでいるが,フィクションとして載っているケーススタディに登場するキャラクターはなんとなくおかしくて,なんとなく親近感がわいてしまう人たちばかりだ。そして,キャラクターの名前は,必ずと言っていいほど,芸能人の名前をもじっている。
今回,本間さんはあとがきに「学習学」について記載している。その名の通り,学習に関する学問で,彼が専門的に取り組んでいる分野でもある。本間さんは,教育と学習,コーチングを明確に分けている。教育は個人の外側から内側への働きかけ,学習は個人の内側から外側への働きかけ,コーチングは学習をサポートする役割,である。昨今,教育業界ではアクティブラーニングにシフトしようという動きがあり,また,成長スピードで考えても,知識を方法を教えてもらう受け身的な学習よりも,自分に必要なことを考え,主体的に学び,自らの学びをベースに実際行動するほうが成長スピードが早いのは明らかである。つまるところ,教える側が教わる側にどれだけ与えたとしても,成長量は教わる側に依るところのが多い。教わる側つまり生徒側を,いかに学習させ行動させるか,重視すべきはここだと思う。
文庫サイズで持ち運びもしやすく,200pくらいの本なので気軽に読める本である。

◇「子どもの心に届く言葉、届かない言葉―教師力・親力をアップする教育コーチング」
小山英樹
学校や家庭,塾等で,大人はどのように子どもたちと関わっていくべきか,どのように会話を進めていけばよいのか……と思っている方に適した本。全国の実際にあった会話を元にしたケーススタディ集であり,様々な生徒が登場。学校や塾の先生が,母親や父親がこんな風にコミュニケーションをとりました!というのが,超短編小説のようにたくさん載っている。コーチ自身が関わり方を変えて生徒との関係が改善したケースもいくつか紹介されており,変化前と変化後の対応の仕方の違いも感じることができるだろう。
ちなみに著者は,愛情・信頼・尊重をベースに,人は育とうとする生き物である,人は自分の中に答えを持っている,人はそれぞれ,という信念を持ち,クライアントの自立を教育コーチングの究極目的とする,としている。
印象に残ったところは,ペーシングについて書かれたところである。ケーススタディの中では,授業中に教室を徘徊したり漫画を読んだりし,誰の言うことも聞かない生徒が登場した。その生徒に対して,とある先生は,生徒を他の生徒や自分に合わさせるのではなく,自分がその生徒に合わせて行動をしてみた。つまり,生徒が漫画を読んだらその先生も漫画を読み始める,生徒が足を机に投げ出して座ったら先生も足を机に投げ出して座ってみる。そんなことをしたわけだ。すると何週間後かに,その生徒は,鞄から漫画ではなく教科書を取り出すようになり,机に足を投げ出さず着席するようになった。生徒をいくら変えようとしても,生徒は自己を否定されたと思って,反発を繰り返す。そして,「自分」と「相手」,合うと落ち着くし安心する。でも,ズレると落ち着かない。生徒は先生の姿を通して,自分が何をしているか客観的に見ることができたのだろう。

◇「7デイズ・コーチング」近藤直樹
セルフコーチングのための本。自分のやりたいことを実現していくプロセスを7つに分け,1日1つずつ進めていき,達成させましょう,という趣旨である。1日目は意図を明確にすること,2日目は意図を宣言すること,3日目は成果を測るための目標を決めること,4日目は行動計画を立てること,5日目はただ行動すること,6日目は成果を振り返ること,7日目は完了・次の創作である。である。1日ごとにワークシートがついており,このワークシートに沿って進めていくと良い。ワークシートは,自分がやりたいことを実現するために必要な行動を促すためのものである。行動しないと何も変化が起こらない,だから行動し,そこからフィードバックを得て,次の行動へと進む……それをやりやすくするためのワークシートである。
著者は,行動や結果を促進するために,現実で起こった出来事とそれに対する自分の反応を明確に区別することを推奨する。例えば自分が書いた文章について,上司から批判されたとする。その時,私には能力がないのかなとか,いつも自分は失敗ばかりしているとか,今度は一発 OK だと思ったのにとか,うるさい上司だとか思うのが反応の代表例である。その反応に捕らわれてしまうと,改善は起こらない。反応は反応としてその時生じた自分の感情を味わう。味わわないと,その感情に引っかかって行動の障害になり得る。そしてその一方で,感情から離れて,批判された文章を練り直す,という行動も行う。
また,何か新しいことを始めたり挑戦したりするとき,自分の中で抵抗が生じる。その抵抗に捕らわれてしまうとやはり行動はなされない。抵抗を脇に置いて,行動することにフォーカスする必要がある。
つまり,行動するために,自分の思い込みや感情から離れよ!ということだ。

◇「会話から始めるコーチング―最強のチームをつくるコミュニケーション力」伊藤守
上司・部下の関係においてどのように会話を進めたらいいかについて,コーチングの理論に基づいて書かれた本。上司が部下にしてしまいがちな質問や,上司の部下に対する悩み,なぜ部下がそのような行動をとるのか,について触れ,コーチングを取り入れた会話や,相手のタイプを考慮した接し方を通じて,お互いにとって良い関係を構築することを目指す。
見開きで1項目を扱い,左側のページでは,その項目に関するイラストを提示。平易で読みやすい。

◇「ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話」生島淳
著者と,ラグビーのコーチであるエディー・ジョーンズ氏の対話をまとめた本。ジョーンズ氏がどのような思想をベースにコーチングを行っているかや,日本の選手と他国の選手の違い,スポーツにおける日本と世界のメディアの報道の仕方,各国のラグビーチームの戦略などがまとまっている。
ジョーンズ氏はコーチングをアートだという。「選手一人ひとりにとって何が必要なのか見極めるのがコーチングにおけるアート」,「選手個々の能力を引き出すためには,どのようなコミュニケーションを取るべきなのか,それこそ数限りないケースが考えられるわけで,その見極めにこそアートが生まれる余地がある」としている。また,ハードワークの中にも楽しむ要素や柔軟性があることを求め,最終的な到達点をイメージして,日々,判断・決断していく。日本社会や教育にも触れ,選手のマインドセットを変え,勝つチームを作っていく。
巻末には,読書家であるジョーンズ氏の推薦図書を15冊掲載。

◇「「聞き方」ひとつで人は育ち・人は動く―聞いて、理解して、やる気を引きだし、大きく育てる「実践コーチング」の技術! 」石川和夫・伊藤敦子
「聞くこと」に焦点を当て,聞くとはどういうことか,どう聞くか,聞くことの効用などについてまとめた本。人は相手に受け入れられることを求め,安心すると行動を起こせる。話を聞くということは,話を聞かれる側を安心させる行為そのものだ。聞くだけでスムーズにことがすすむこともある。聞くことは,相手との信頼関係を築く第1歩とも言えよう。
相手を励ますときには,ただ「頑張れ」と言うのではなく,過去の成功体験や強みに焦点を当てて,相手の視点を変えるよう促す……。それをするには,相手のことをよく見て,知っておく必要があるということだが,取り入れてみよう。そして,未来に向かっての問いかけもしてみよう。

◇「弱さを強さに変えるセルフコーチング 」辻秀一
スポーツ心理学とスポーツ医学をベースにコーチングを行う著者による,アドバイス本。自身が主催するスポーツ塾やチームに所属する子供たちから寄せられる質問に答える形でページが進んでいく。そして,子どもたちからの質問は,抽出化すると社会人がこぼす悩みや愚痴の内容と共通するものも多く,それらへの回答としても提示している。回答は,日本や世界で活躍するスポーツ選手の態度や言葉を取り入れつつまとめている。
著者は,スポーツにおいて勝利することは重要だが,それ以上に,当人たちが力を出し切ることを重視する。その思想の元,自身のスポーツ塾を主催している。子どもたちに一生懸命,楽しく堂々とスポーツさせる,大人はその価値観を受け入れ,子どもにそれを促していく。その中で,「勝ち」につながる思考パターンや行動を身につけさせようとしている。

◇「中学の部活から学ぶ わが子をグングン伸ばす方法 」大利実
中学校で部活を指導する8人の教師たちの指導法をまとめた本。生徒の技術向上のための指導法ではなく,いかに生徒と接するか,生徒に対してどのような思いを抱いているか,が全面に溢れている内容である。
どの教師も生徒の未来を想い指導しているのが印象的だった。社会人としてたくましく生きることができるように,自立して生きることができるように,あえて理不尽で厳しい指導もする。また,部員同士が互いに高め合っていけるような関係をつくれるよう,場を設計する。そして,いつも本気で生徒と向き合う。そんな姿勢が描かれていた。

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