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2014/12/26

近代ヨーロッパを探る③ 革命のとき

17世紀の後半ごろから18世紀にかけて、ヨーロッパでは啓蒙思想が普及していた。キリスト教の教義、思想による社会基盤が崩れ、商業が発達して都市化が進み、実験や論理を用いる科学技術が進歩しつつあったこのころ、人間の理性や合理的精神、批判的精神が新しい社会を作っていくためのカギになる、と多くの思想家が思っていた。彼らは人間の理性、知性の持つ力を信頼していたのである。前回記述した、社会契約を基にした政治哲学を発表したロックも啓蒙思想家の1人である。啓蒙思想は海を越えて、フランスやドイツでもさかんになった。フランスでは、ロックの政治思想の影響を受けたモンテスキューが、立法権・行政権・司法権の分立を唱え、ディドロとダランベールは、同時代の哲学・芸術・科学・技術・産業などの諸部門の知をまとめた「百科全書」の編さんにあたった。ドイツでは、インマヌエル・カントが認識についての新たな見解を示し、理性について論じた。カントは、理性は生まれつき全ての人間に備わっており、善悪の法則をも持ち合わせているとしている。人々が理性を利用できる社会を求め、理性を用いた自律こそが自由であるとした。

一方、ヨーロッパの強国が植民地支配を続けていたアメリカ大陸では、18世紀後半に転機を迎える。当時アメリカ大陸では、先住民、奴隷としてアフリカから連れて来られた人ほか、ヨーロッパから移住した人も多く住んでいた。先住民たちの入植者に対する反乱や、本国からの植民地への一方的な課税法律への抗議および対抗措置などをきっかけに独立の気運が高まり、1776年、植民地は独立を宣言する。アメリカ合衆国の誕生である。

アメリカが独立を勝ち取ったころ、ヨーロッパ大陸ではフランスに革命が起こった。政治と経済の行き詰まりが原因だ。当時フランスは、イギリスとの戦争で出費がかさみ国の財政が悪化していた。富裕層から徴税を行おうとしたものの、特権や慣習による既得権益で守られている貴族は反発。しかも、増加する人口に食料生産が追いつかず、食料価格は高騰し、農作物の不作や家畜の病気などのあおりを受けて農民たちの生活は苦しくなっていた。民衆は、王や貴族への怒りを募らせ、1789年、バスティーユ牢獄を襲撃する。フランス革命は、ルソーの思想が影響したと言われている。ルソーは、封建的な隷属関係を批判した。各個人が自由・平等であるために互いに契約を結び(社会契約)、各個人に共通する利益を目指す国家を主張した。1791年議会は、国民主権、法の下での平等や個人の権利の法的保護などを提唱した「人権宣言」を前文に、憲法を制定する。フランス革命に象徴される民主主義や自由主義、ナショナリズムの思想は、ヨーロッパ諸国に影響を与え、その後のフランスを含めヨーロッパ各地で反政府運動が勃発していく。

18世紀後半に見られる革命は、アメリカ独立宣言やフランス革命のような、民衆の国家に対する抗議だけではなかった。イギリスでは産業革命が始まっていた。イギリスは毛織物などの工芸製品の生産が進んでおり、工場で人を雇う資本家が出現していた国だ。さらに、農業技術や生産率の向上で収益を得た地主たちが土地の売買を行った結果、仕事を失った農民が現れ、彼らは工場での労働力となった。また、工業の原料や燃料となる石炭や鉄鉱石などの資源が豊富にあり、自然科学の発達が技術の進歩を後押しした。紡績機によって繊維産業の生産性が一気に増し、蒸気機関が新しい動力となり、鉄道や汽船が現れる。鉄道や汽船は原料や生産物の遠距離輸送を可能にした。そして工場が建設され、労働者が集まるようになり、都市ができる。イギリスは工業国として名を馳せ、資本主義社会が確立する。しかし一方で、低賃金労働や児童労働、資本家の力の拡大、公害や犯罪の増加などの問題が浮上していた。



参考文献
大井正、寺沢恒信「世界十五大哲学」PHP文庫 2014
成美堂出版編集部「一冊でわかるイラストでわかる図解世界史―地図・イラストを駆使 超ビジュアル100テーマ 」成美堂出版 2006
J.M.ロバーツ「図説 世界の歴史〈7〉革命の時代」創元社 2003
ルソー『社会契約論』を解読する (http://www.philosophyguides.org/decoding-of-rousseau-contrat-social/