背景
拡散的思考(divergent-thinking)とは,1967年にアメリカの心理学者Guilfordが提示し思考方略の1つである。彼は,彼は思考方略を,拡散的思考(divergent-thinking)と,収束的思考(convergent-thinking)の2つに分類した。拡散的思考は,解を1つに絞ることなく,さまざまな解決可能性を探索していく思考だ。
Openness特性とは,Big Five理論で提示されている性格特性の1つで,馴染みのものにとらわれず,経験を積極的に求め楽しむような特性を指す。ちなみに,Big Five理論は近年の性格研究においては主流となっている理論で,外向性(Extraversion), 調和性(Agreeableness), 誠実性(Conscientioiusness),神経症傾向(Neuroticism), 開放性(Openness)の5つの特性で性格は構成されている,とする理論である。
方法
拡散的思考傾向とOpenness特性の関連を調べるにあたり,拡散的思考傾向を調べるテストと性格調査への回答を被験者に求めた。思考テストは,アイディアの量,多様性,独自性の観点から評価して,それぞれの回答について得点を算出した。性格調査は,被験者の回答から,Openness特性を創造性,賢さ,感情の豊かさ,好奇心,に下位分類した。これらを用いて,相関を調べた。
結果
拡散的思考傾向とOpennessの間には,有意な正の相関があり,Openness特性の中でも創造性と関連があるということが分かった。また,拡散的思考の指標であるアイディアの量,アイディアの多様さ,アイディアのユニークさのいずれにおいても,Openness特性と関連があり,その中でも特に創造性と関連があることが示された。
もう少し詳しい内容は下記にて。ファジィ学会のワークショップ(http://kanto.j-soft.org)での発表の際に使った資料(改)です。
Guilford, J. P. (1967). The Nature of Human Intelligence. McGraw-Hill Book Company.
和田さゆり(1996). 性格特性用語を用いたBig Five尺度の作成 心理学研究, 67, 61-67.
藤島寛・山田尚子・辻平治郎(2005). 5因子性格検査短縮版(FFPQ-50)の作成 パーソナリティ研究, 13, 231-241.
佐藤三郎・恩田彰(1978). 創造的能力―開発と評価― 東京心理
住田幸次郎(1966). 創造性検査尺度の構成と吟味 京都大学教育学部紀要, 12, 29-45
西康隆(2001). 小学生の創造的態度についての研究―体験・学力・創造的思考との関連を通して― 兵庫教育大学大学院,14
下仲順子・中里克治・権藤恭之・高山緑(1998). 日本版NEO-PI-Rの作成とその因子的妥当性の検討 性格心理学研究, 6, 138-147
矢野正晴・柴山盛生・孫媛・西澤正己・福田光宏(2002). 創造性の概念と理論 国立情報学研究所