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2018/03/19

東京,ラーメン探訪

友人に,美味しいラーメン屋を探すことを求められた。ラーメン…嫌いじゃないけれど食べる頻度は低い。月に1回食べるか食べないか程度。ラーメンにこだわりがあるわけでもないし,好きなラーメン屋があるわけでもない。つまり,美味しいラーメン屋がどこなのか分からない…(汗)!!そういうわけで別の友人に助けを求め,友人たちが美味しいと思うラーメン屋を数件紹介してもらった。協力してくださった皆さん,ありがとう!その中から場所や定休日情報に基づいて6軒をピックアップし,ご近所にある日高屋を追加し(日高屋のラーメン食べたことなかったのでこの機会に食べてみるかと思った),さらにラーメンランキングサイトやラーメンレポ書いている人のブログから3軒選び,計10軒。昼と夜,月~金まで1日2食,計10杯のラーメンを食べた。胃がちょっとアレだったが,ラーメンづくしの1週間,なかなか面白い経験をした。

とりあえず,まずは食べたラーメンを写真つきで紹介しよう。食べたのは,そのお店の定番メニューか人気メニュー(口樂は除く)。荒海のみ,追加料金なしだったので大盛に。写真左側が昼に,右側が夜に食べたラーメン。月~金の順に上から並べている。火曜と水曜については,食べ比べをしようとあえてメインのダシの素材が同じ店をぶつけてみた。

支那そば 八雲 白だし肉ワンタン麺ハーフ ¥800
日高屋 中華そば ¥390


つけ麺 五ノ神製作所 海老つけ麺 ¥800
えびそば 一幻 ほどほどしお細麺 ¥780


煮干しそば 虎空 煮干しそば ¥780
口樂 鯵な僕の煮干しそば ¥750


瀬佐味亭 担々麺 ¥800
ど・みそ 京橋本店 特製味噌こってりラーメン背脂あり ¥930


渡なべ らーめん ¥830
荒海 らーめん ¥780

美味しいラーメン,食べるだけでわかるのか?と思って,知識や理屈もちょっと得ようと思った。それでラーメンについて少し勉強した。手にとったのは,料理うんちくにはやっぱり美味しんぼだよね!ということで「美味しんぼ (38)」,ラーメン王の石神秀幸氏による「ラーメンの真髄」,タイトルに惹かれた「ラーメンを科学する おいしい「麺」「だし」「うまみ」の正体」,そもそも美味しいってなんなんだよ,と思って探して見つけた「うま味って何だろう」。一通り読んだはいいものの,結局美味しいラーメンとは何か答えが見つからなかった。だが,ラーメンの歴史や昨今のラーメン事情,スープの作り方,麺の注目すべき点,うま味とはなんぞやなど,へーそうなんだということもけっこうあって,面白かった。

で,ラーメン実食。とりあえず注目したのは,麺・スープ・具材それぞれの味,それらが統合された全体としての味,後味,熱さ,量,店の雰囲気,清潔さ,注文してからの待ち時間,店内のBGM,箸,サービスレベル,出される水の美味しさなど,「美味しい」に関係あるあらゆるものを丁寧に観察・分析しながら1杯1杯食べた。そんなに丁寧に食べたことなんて今までないよねってくらい慎重に,感じながら考えながら食べた。そしてたくさんメモした。
食べたラーメンのほとんどを美味しいと感じた。でも,全てにおいて大満足ってそうそうないんだなと思った。ある店は,具材はすごく美味しいと思った。でもスープがしょっぱすぎて後味が悪い。ある店は,ラーメンは美味しいのに,天井から水がポタポタたれてきたり,箸たてに具材のもやしがついてたりして清潔感に欠ける。ある店は,スープをとても美味しいと思った。でも最後までそのラーメンを食べるには少し疲れてしまう味…。ある店は,スープと麺で食べるとそこそこ美味しいのに,具材と組み合わさったものは私には合わなかった。なぜその具材を載せてるの?このメンマちょっと味強すぎない?など,スープ・麺から具材の味が浮いている感があった。
いろいろ見ようとすれば,感じようとすれば,見たり感じたりできるもので…。私ろくに考えずに普段ご飯食べてるんだなと気づいた。

今回10食食べてみて,近くに行ったときにはまた行ってみようと思ったのは,五ノ神製作所,瀬佐味亭,渡なべ,荒海の4軒。五ノ神製作所は,特につけ麺のスープと麺の歯ごたえが気に入った。瀬佐味亭はごまの香りとほどよい辛さの担々麺でおいしかった。渡なべは整いすぎていない味のスープが美味しく,出された水もおいしかった。荒海は,コクとまろやかさのあるスープがよかった。魚のアラ,野菜,鶏や豚などいろいろミックスして作っているらしい。この中から,友人の嗜好などをふまえて1軒を紹介した。もし美味しいと思ってくれたら,たくさん食べた甲斐があったというもの。どうなることやら…。

ちなみに煮干しラーメン,食べたのは今回初めてだったのだけど,2軒とも苦さというかエグさというか,そういうのを感じて若干苦手な味かもと感じた。それを美味しいラーメンを紹介した友人に伝えたところ,その友人,「美味しい煮干しラーメンを食べさせてやる」と煮干しラーメンを作ってくれた。丁寧にダシをとれば美味しいということで,煮干しの内臓をとり,1週間前から準備して作ってくれた。なんと!苦さやエグさが全然ないじゃないか!とてもとても優しい味で,すごくすごく美味しかった。そしてシンプル。友人の作ってくれたラーメンと比べると,私が食べた10杯のラーメンは,どれも味が濃いように思えた。友人の作ったラーメンは,素朴で自然,でも美味しい,そんなラーメンだった。

都道府県別統計とランキングで見る県民性http://todo-ran.com/t/kijis/11806)によれば,2017年の東京都のラーメン店は3296軒。行ったことのない店,まだまだたくさんある。

2018/03/08

谷川俊太郎展にて

谷川俊太郎展(http://www.operacity.jp/ag/exh205/)に行ってきた。谷川俊太郎の作品はもちろん,彼の生活スタイルや好きなモノ・コトも垣間見ることができる展示になっていて,だいぶ昔に教科書の中で知った「谷川俊太郎」を,肉をもつ,血の通った生きている人間として感じる,そんな時間だった。

この展示会は大きく2つに分けられる。1つは,入り口から入ってすぐの音と映像を用いたインスタレーションで谷川俊太郎の詩を紹介する展示。その空間を抜けたところにあるもう1つは,谷川俊太郎の作品と日常を様々なモノを使って紹介する展示だ。1つめのインスタレーションもけっこう衝撃的だったのだが,そこを抜けて次の展示会場に入った瞬間,これはすごい,やばい,こう来るのか…と度肝を抜かれた。展示会場内のキュレーションがものすごくステキだったのだ。
ステキなキュレーション
「自己紹介」
そう,彼の「自己紹介」という詩の一行一行にちなんだモノを展示しているのだ!展覧会のHPで読んだ詩がこんな形で展開されているとは…これだけでめちゃくちゃ興奮!!

詩を紡いでいます
「ばか」音で遊んでいるよう
展示品も心ゆさぶられるもの,グッとくるものがたくさんあった。例えば,そういうふうにして彼の詩は生まれるのだな…を見せる2つの展示。
1つは,谷川俊太郎が即興で詩を作っている様子が映し出されたワード。一文字一文字ゆっくりゆっくりタイピングされるていく。途中,タイプミスをけっこう犯し,一度入力した言葉を思い直して消去し,別の言葉を紡いでいく…。そのプロセスを観ていたら,妙に人間くさくて愛おしくなった。彼は何を思って言葉を変えたのかな。もう1つは,言葉の促音と韻で遊んでいる詩の制作過程の自筆メモ。アイウエオを縦横に一字ずつ書いた表を使って,使える言葉を探しているように見えた。そういうのの結晶が,インスタレーションで発表されていた詩や「ばか」につながっているんだろう。耳になじんで心地いい。

「朝のリレー」
バカボンのパパの詩
彼の作品もたくさん展示されていた。詩はもちろん,取扱説明書や国語の問題文,辞書の表記,英語からの翻訳作品,歌詞,子ども向け科学本の文章などなど。「春に」という詩を読んだとき,身震いした。「朝のリレー」という詩を読んだとき,心に何か滲みていくような気がした。バカボンのパパの詩を読んだとき,涙が出そうになった。
私は誰

「見る」というところに展示してあった作品は,何度も見返した作品の1つ。自分からみる自分と他者から見る自分が違うということを,これほど分かりやすく表現したものはこれまであっただろうかと思った。私は私。でも他者から見た私は,あくまでもその人の世界のどこかに布置される。その人の視点が反映される。「ジョハリの窓」よりも,もっと具体的に直感的に理解できるし,絵付きということもあって想像しやすい。

彼の作品を全部理解することは叶わなかった。日本語だから読めはする。でも,自分の中にストンと入ってこない谷川俊太郎の感性,思想,言葉があった。けれどそれでも,それぞれの作品に,訴えてくる何かはあって,何も感じないとかつまらないと感じるものは1つもなかった。

そういえば展覧会中,日本語の文字が放つニュアンスの多様さ,豊かさを感じていた。日本語ではひらがな,カタカナ,漢字を使う。ある言葉を詩の中で用いるとき,ひらがな,カタカナ,漢字のどの表記を使うか,これはけっこう重要じゃないか。例えば先に紹介した「ばか」の詩。この詩は全てひらがなで書かれているが,もし漢字が使える言葉を漢字にしたら,この詩のリズム感や遊び心みたいなものはひらがなのときに比べて伝わりにくいんじゃないだろうか。また,バカボンのパパの詩はカタカナと漢字のみで書かれている。もしカタカナの部分がひらがなに変わったら,バカボンのパパっぽくないよなぁ…。音で聴く分にはどんな表記でも気にならない。でも紙に文字として書くと,その文字のもつ雰囲気も読む人に伝わっていく。表記によって内容に色付けができるのだ。その分,表記の選定に気をつかうことにはなるが。緻密な計算,センスがいるだろう。

谷川俊太郎のひとこと

最後に…
先に紹介した「春に」は合唱曲の歌詞としても知られている。うろ覚えだった「春に」の合唱を家に帰ってから聴いてみた。うん,いい…(泣)また震えた。
それから,展示の軸になっていた詩の一行一行が書かれていた棚。裏側には谷川俊太郎の直筆ひとことが貼ってあった。その中で一番いいなと思ったのがこれ。

3/25まで新宿オペラシティで開催中です。ぜひ足を運んでみてくださーい!