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2019/06/17

VRゲームとARゲームでガチ遊び!

いや~ホントに楽しかった!VRゲームとARゲーム。ヘッドマウントディスプレイを通して見る世界に私の身体はすぐ適応して,物理的な現実世界とはまるで違う世界で自分がホントに生きているかのような錯覚に完全に陥りましたよ…というわけで,VREX新宿店(http://www.vrex.jp/)でのゲーム体験レポ!

VRゲーム仕様
ARゲーム仕様
今回体験したゲームは,4つのVRゲームと1つのARゲーム。ここで少しだけ解説を。VRとは,virtual reality。自分の視覚や聴覚などの感覚器官が刺激されることで,つくられた仮想空間の中にまるでホントにいるかのように感じられる技術である。一方ARは,augmented reality。自分が実際に存在している物理的世界の情報を加工する技術である。物理的世界に情報が付加されたり強調されたりする。これらの技術が使われているゲームがVRゲームとARゲームというわけだ。ちなみにプレイするときには,写真のような感じで身体にデバイス等を装備する。VRゲームの際には,頭からヘッドマウントディスプレイをはめ,それとケーブルでつながっているPC(おそらく)を背負い,両手にはコントローラーを持つ。ARゲームの際には,VRのときよりも少し軽いヘッドマウントディスプレイを装着,右手にはiPhoneがセットしてあるベルトを巻いた。


前置きはこの辺にして,体験したゲームを紹介!
①ヨケロック(VR)
ゴーグルをはめて連れて来られた世界は,カンボジアの遺跡か?と思うような石造りのお起きた建物がある世界。建物でかっ!と思っていると,大きな岩が建物上方からどんどん落ちてくる。それを右に左に動いたり,座ったりしてよけてよけてよけまくる。岩の落下が一段落すると,今度は大きな宝箱が落ちてくる。今度は右に左に動いてこれをキャッチする。この2つが得点化され,対戦相手と勝負するというわけだ。
宝箱とった?
ゴーグルを通して見る世界に身体はすぐ適応してた。というのも,地面に段差があったところがあって,ぶつかるのを避けるため,そこをまたぐようにして歩いたけど,あ,現実世界に段差なかったじゃん,とあとで気づいたり。大きな岩が落下してきてぶつかりそうになるとギャー!こっちくる,ヤダあたるー!!とかと普通に絶叫していた。もちろん,ただの映像なので当たるわけないのだが。すごい没入感。
上の動画のように,ゲームプレイ後に,自分たちのプレイをディスプレイで確認できる。ちなみに私のアバターは,赤い髪のお兄さんの方。


②バーチャルライフ 青春編(VR)
こちらは,アバターになって人生ゲームを体験するゲーム。自分のアバターが実際にさいころを振り,すごろくの上を出た目の数分歩いてゴールを目指す。青春編だったから,小学校から始まって,途中おこずかいもらったりして,高校卒業がゴール。このゲームでは,自分のアバターのヘアスタイル,髪色,顔つきなどを選ぶことができた。私はピンクのポニーテルの女の子にしたよ!なぜか優等生になり,自作アプリも売れて大儲けして勝利を勝ち取った!はらはらと桜が舞い散る中,卒業証書を手にしつつ,机に札束がガッツリ積まれていますね。
ゲーム上のすごろくは,二部構成になっていて,一部が終わって二部になるとき,ステージを移動します!という係の人の声に従って,何かの上に乗ることになる。ゴーグルから見える世界では,自分はセグウェイ的なものに乗っていて,ぐんぐんスピードUPしつつ海岸沿いの道を進んでいく。TDLのスターツアーズのように画面が動き,途中実際風も吹いてきて,足を乗せている何かもおそらく少し動いて,ほんとに自分で運転して進んでいるかのような錯覚に陥る。で,あと少し進むと海へ真っ逆さまというところで画面は止まり,第二ステージが始まるのだ!


③まくら投げ(VR)
バーチャルライフ 青春編では修学旅行にも行くのだ。修学旅行といえば枕投げ!私も中学と高校の修学旅行でバリバリやりましたよ。というわけで,童心に返り,一緒に遊んだ友人のアフロヘアめがけてまくらを投げまくった。
かがんで下に落ちてる枕を拾って,相手に投げつける,しかも自分の頭に当てられないようによける・逃げるを繰り返すとけっこうな運動量…。終わったときは息がゼイゼイしていた…。いやー,やはり頭の面積が広いと枕も当たりやすいもので!私の勝利!


④ばんばんブルーム(VR)
これはシューティングゲーム!目の前に現れる妖精さんや植物のつぼみをバンバン撃って,自分の色を増やしていくゲームだ。このゲームでは,自分の立ち位置はほぼ固定。その変わり,画面が動き,自分が空をどんどん昇っていくような感覚になる。植物もめっちゃ上まで伸びていて,よよ,ジャックと豆の木かい!状態。ふわふわ飛んでくる妖精さんは少しおマヌケな顔をしていた。自分が昇っていきながら,動いている妖精を撃ったり,定位置にあっても数回撃たないと開かないつぼみをシューティングするのはなかなか難しい。ウケたのが,相手の立ち位置の箇所を打つと草が生えるという設定。相手に撃たれて,いきなり足元にズバッと草が生えたのはびっくりした。
こちらは写真と動画を撮れなかったので,オフィシャルの動画を載せるよ。


⑤HADO(AR)
ARゲームなので,普通に物理世界は見えている状態。で,ゴーグル上では自分と対戦相手のライフポイントや攻撃,シールドが物理世界に付加された状態で見えている。手を動かして自分のライフポイントを削らないように守りつつ,相手のライフポイントを消していくというもの。テニスコートのように,自分の陣地と相手の陣地が分かれていて,自分の陣地内であれば自由に移動可能。180s,2セットで競う。
こちらは私,ボロ負けしました…敗因は戦略ミスと,身体を余計に動かしてしまって無駄打ちやあれ,シールド出ない…となっていたこと。あぁ悔しい…
店内で流れていたデモ映像によると,なんとワールドカップがあるじゃないか…ってなわけでググってみると,こんなサイトを発見(https://meleap.com/tournament/)!プレイしてる人たち,かっこいい…!
こちらも写真や動画を撮れなかったので,プロモ動画を載せとくよ。私もかっこよくカメハメ波を撃ったり,マトリックスさながらに攻撃をよけたかった…!!

というわけで,けっこうな運動量で汗かきながら遊んできた!
家庭でできるVRゲームもいろいろあるみたいなので,おうちでもやってみたいなーと思った次第。でも部屋が狭くて物が多いから,十分に動けないよなーとも思ったり。ばんばんブルームのようなものだったらできそうだが…
VRゲーム・ARゲーム,また遊びたい!!!

2019/06/16

コーチング関連本を読んでるよ Week 30

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。残り20冊!

◇「NLPでコーチング-最高の人生を生きるためのライフ・コーチング実践ガイド-」ジョセフ・オコナー,アンドレア・ラゲス
タイトル通り,コーチングの1つの流派であるNLPコーチングについて取り扱った内容。NLPコーチングの特徴の一つは,クライアントの使う言葉や態度から,彼らがどの感覚器官を重視しているかを把握し,それに対応した言葉遣いや態度をコーチも示すということである。
各章末に,行動のステップ「あなたが理解したいと思うなら行動することです。」と書かれており,行動がいかに重要かをリマインドされているのがよかった。そうなのだよ,結局行動することによってしか変わっていかないのよね。
実はこの本,「コーチングのすべて」の著者が書いている。「コーチングの全て」にもこの本にも著者が見た夢の話が出てくるのだが,これがコーチングとどう関連しているかがいまいち分からなかった。


◇「チームコーチング――集団の知恵と力を引き出す技術」ピーター・ホーキンズ
コーチングというと,個人相手になされることが多い。組織内でのコーチングも,組織の構成員それぞれに対して行うのが一般的だ。本書は,組織のコーチングは,個人に対して行っても意味がないとする。個人ではなく,チームに対して行わなくては。チームの構成員ほか,顧客や株主,取引先などさまざまな人との関係の中で,チームが最大限力を発揮し,高業績を上げるためにコーチングを行う……その方法を解くのが本書である。
高業績を上げるチームに不可欠な5つの原則(任務を与える・明らかにする・共創する・つなぐ・コアラーニング)や,コーチングプロセス(CID-CLEARモデル),コーチングに使える測定ツールなどを提供する。
本書で何度か出てきたワードで気になったのが,アンラーン(unlearn)。現状効果的ではない知識や習慣,スキルなどを働かせないようにすることだ。それらがあるせいで,何か新しく身につけよう,学ぼうとしても上手くいかない。アンラーンをいかに促進させるかも,効果的な学習のための鍵だと思う。

◇「教師のほめ方叱り方コーチング」神谷和宏
中学教師経験の長いプロコーチの著者によるコーチング本。児童・生徒に対して,コーチングに基づいてどのように褒めと叱りを行うか,を見開き1トピックで紹介する。単純化しているきらいがあるものの,イラストも豊富でわかりやすい。著者は,コーチングを自身で取り入れてから,生徒たちとの関係がうまくいくようになったようだ。そして,褒めと叱りは7:3くらいの割合がちょうどよいとしている。
これまでの経験から、私自身は叱ることが難しいと感じている。ここは叱るべきところなのか?と考えてしまうことが多いからだ。つまり,自分の中で,こういうときは叱るという基準が定まっていないからだと思う。叱るということについて,試行錯誤していきたいと思った。

◇「ザ・コーチ2 ― 神様からのギフト」谷口貴彦
人生にちょっとした行き詰まりを感じている女性が主人公。会社の研修を通じてコーチと出会い,コーチングを体験する中で,会社内での人間関係や家族との関係を改善し,自分に無理せず,前向きに生きていくようになるまで描く。主人公の心情や人間関係がどんなものか,物語の中でしっかり描写されていたこともあり,読んでいる途中で感情移入していることに気づいた。描かれているコーチングのベースとなる考え方や手法も理解しやすく,物語を読みながらセルフコーチングすることも可能である。
本書で展開されているコーチングでは,まず,自分の現状を確認する。今の自分が,仕事や家族などの面でどのような状態かである。そして,現状を変えるためには,まず自分の基盤を整えることが必要と説く。そのプロセスは,自己受容→自己信頼→自己尊重である。自己受容はあるがままの自分をすべて受け入れること,自己信頼は叶えたいことや成し遂げたいことは自分でできると自分に任せること,自己尊重は自分を守り,尊び,労ることである。自己の基盤が整ってきたら,次はエネルギーチャージである。これには,夢や目標,そこに向かう動機や価値観がいる。また,夢や目標には賞味期限があるため,しょっちゅう描かないといけないとも説く。夢や目標があれば,あとはそれを達成するための知識やツールを得て,行動するのみだ。もちろん,そうトントン拍子に事は運ばない。本書では行動や成長をストップさせる阻害要因についても触れられており,主人公が阻害要因を取り払っていく様子も描かれている。

物語なのでうまく出来すぎているキライはあるかもしれない。でも,読んでいてほっこりとした温かい気持ちになった。そして,読みながら主人公の疑似体験ができるためか,今まで読んだどのセルフコーチング関連本よりも,当事者意識を持って読めたように思う。

◇「子供を伸ばす教育現場」和田秀樹
精神科医の和田秀樹氏による,教育現場で働く12人へのインタビュー集。インタビュー相手は,私立中学の校長や塾・予備校の代表,音楽教育や体育教育,合気道による教育を行う機関の代表等である。
本書の中で,和田氏自身は日本の公教育について危機感を抱いている。この本が発行されたのは2009年。ゆとり教育の燦々たる結果が出て,ゆとり教育やめよう,となっていた頃のことである。インタビュー相手は自身の教育に信念を持ち,子どもたちの能力を生かしていこう,とする人ばかり。ゆとり教育によって,上位層を活かすことも下位層を底上げすることもできず,ただただ生徒全体の学力が低下してしまったこと,子どもに様々な体験をさせ,コレ!というものに出会わせるうようにしていくこと,競争による弊害ばかりでなく,いろいろな競争をさせて自分の得意を見つけたり,できる人に追いつこうと努力するという益を生かしていくこと,などが印象的だった。

◇「教師力アップのためのコーチング入門―子どもを伸ばすコツと会話術」河北隆子
ビジネス現場でコーチをしてきた著者。現役教師への取材をベースに,学校現場でどうコーチングを展開するかを述べている。コーチングに基づいた,ベースとなる生徒への接し方・関係の作り方に始まり,シチュエーションごとにどう対応するかのケーススタディもある。
生徒と教師はパートナー。安心・信頼のある関係の構築を。生徒自身の気づきを促すような言葉がけを。思い込みで生徒やクラス全体を見るのをやめ,現状を正しく,様々な人やことが関連し時間とともに変化していくシステムとして把握すること。教師間・教師保護者間でのコミュニケーションおよび良好な関係構築の重要性が心に残った。

◇「図解&会話例でわかるプロ教師の「最強」コーチング術 入門編 」中土井鉄信・井上郁夫
コーチング本でありながら,発達心理学やアドラー心理学,人が社会化していく過程などの心理学分野の知見が本書の半分くらいを占めている。心理学分野ので研究されてきた人間観をベースにして生徒をとらえつつ,コーチングによって彼らの力を引き出していきましょう,というわけだ。
アドラー心理学については,人の行動にはその人が達成したい目的が内在している,ということが私的にはいちばんの核だと思っている。個人個人はその目的を達成するために行動しているため,傍から見たら意味不明な行動も,本人的には理屈の通った行動なのである。自分および他者の目的を正しくはっきりと捉えられれば,人間関係の構築が今よりしやすくなるに違いない……。
会話例に載っていた,宿題をやってこない子に,やってこないことで先生ががっかりする→そういう気持ちを他人に起こさせることはいけないと思わせる→宿題をやるようになる,という話については,おかしいと思った。先生の機嫌とりのために宿題やるの?他人(の期待に沿わずに)をがっかりさせるのは悪いこと?そうやって子どもをコントロールするのは何か違くないだろうか。

◇「先生のためのセルフコーチング 自分への問い方次第で教師人生は変わる!」大前暁政
セルフコーチングの手法を記載した本。ベースとなるアイディアは,なりたい自分を強く強く思い描き続けることで,そうではない現状の自分に違和感を感じ,なりたい自分になるための行動が生じてくるという,苫米地英人氏が提唱するものである。理屈でガツガツ攻めてくる内容であった。個人的には,なりたい自分像を描くことの難しさ,自分を抑える存在の強固さを体感しているので,この方法でセルフコーチングが成功するとは思えない。
参考になった点は,よく聞く○○力の中身を解説してくれていることだ。本書では,教師特有の職業的知識や技能(学級担任向け)として,授業力・学級経営力・子どもへの対応力を提示し,それぞれの力とはどんなものかをさらに箇条書きで提示している。

◇「ベーシック・コーチング実践ワークブック」土岐優美
コーチングの基本を見開き1ページで教えてくれる本。ページ左側は穴埋め式のワークがついていて,コーチングの知識に関する自分の理解度を測ったり,自分だったら相手のその発言にどう返すかを手を動かしながら考えられるようになっている。また本書の後半では,コーチングがあらゆる場面で生かせるとして,会社の上司-部下関係のみならず,営業や接客,キャリアコンサルティング,介護,親子・夫婦関係,恋愛関係,資格取得・スキルアップ等への活かし方の概略を記載している。
本書で学んだことの1つは,目標は自分との約束であるということ。私はといえば,目標を立てる際はいつも外を向いていて,自分との約束と捉えたことはなかった。自分との約束は大切にしたい。

◇「もっとその気にさせるコーチング術」高畑好秀
子どもたちにスポーツを指導するコーチ向けのコーチング本。子どもたちとの関係構築の仕方やモチベーションの高め方,練習のさせ方,試合前後のメンタルの支え方などを掲載している。実践的で,すぐにでも取り入れられることが多い。
スポーツ関連コーチング本ではあるが,英語学習もスキル習得だからだろうか,これ取り入れたら役に立つだろうなというtipは複数あった。印象に残ったのは,子どもたちと指導者側での認識のズレをいかに埋めていくかに関して。子どもたちと指導者では見ている視点が違う。そして,それぞれが発する言葉に込められた意味も微妙に違う。例えば指導者が7割の力でボールを投げるように,と言って,子どもたちが7割のチカラでボールを投げても,それが果たして指導者の意味するところの7割と一致しているとは限らないのだ。だから,言葉だけでなく,実際にやらせながら指導するなどしてズレを修正して導いていく。
この手のズレは日常生活におけるさまざまな人との会話でも生じているに違いないので,ズレを小さくする伝え方,受け止め方を心がけたい。

◇「コーチングのプロが使っている質問力ノート」ルパート・イールズ=ホワイト
原著タイトルは「Ask The Right Question」。どのような質問をすれば,会話をすれば,相手にも自分にも有益な関係を作れるかに焦点が当てられた内容である。
本書では,質の高い人間関係を築くための会話は,目的を持った会話であるとする。それは,会話を始める→問題を明確にする→議論を発展させる→問題を解決する→行動を決める,と進行する。焦点を絞り,会話の参加者が会話後にどんな行動を起こすべきか理解することが求められる。それによって,達成感の共有がなされるのだ。
本書に示されている会話例で印象に残ったのは,相手の中にある1段階深い理由や目的を出させているところだ。これは,問題の明確化に当たる。人が何らかの行動を起こすとき,それなりの理由や目的が存在する。だが,理由や目的というのは自分の中のちょっと深いところに潜っているもので,問われて反射的に出てくる理由や目的だけでは的を得ていないことが往々にしてある。そこで,本書の会話例では,他にはどんなことがあるの?とか,何か別に問題があるんじゃない?などと,相手の発言内容を少しだけ掘り下げる質問をしているのだ。
また,質問の仕方一つで相手に考えさせる内容や答えが随分変わることを実感した。

114/122 読了

2019/06/09

コーチング関連本を読んでるよ Week 27~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。ついに残り30冊となりました。

◇「仕事は「外見」で決まる! コーチングのプロが教えるプレゼンスマネジメント」鈴木義幸
目線,相手との距離,話し方,顎の位置,姿勢などのノンバーバルな要素は,コミュニケーションの印象に大いに影響する。だから,それらをコントロールし,相手に誤解を与えないように,また,良い印象を与えられるようにしていこう,という目的で書かれている本。どのようなノンバーバルコミュニケーションが良い印象を与えるか,そして,どのような練習によってコントロールすることができるようになるか,がまとめてある。
個人的に練習したいのは,眼のコントロールと話し方。人ともう少し目線を合わせて話をするようにしたいし,言いたいことを分かってもらい,共感してもらいたいから。

◇「世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方」岡田昭人
英・オックスフォード大学大学院出身の著者による,オックスフォード大学での教育の仕方やオックスフォードの文化(どういう人が集まっているかなど)を紹介している。
オックスフォードの教育は,チュートリアルが主流。教員と学生が対話する中で, 知識や理解を深めていくという。 チュートリアルでは まず教員から自分が選んだ文献について えられた知識や それが自分の研究テーマとどう関わってくるかを尋ねられる。 一週間あたり最低でも5から10点の文献を読み込み知識を吸収すること, そしてそれをもとにエッセイを書くことが求められるとのこと。 次に 自分の書いたエッセイをもとにして,教員からの質問にすべて答えなければならない。 質問はあらかじめ与えられていた課題に関するものである。 例えば言葉の定義やそのように考えた根拠やデータ,批判的な議論がなされていないなどの指摘を受ける。 次の時間が終わると, 今回のチュートリアルで何を得たかや今後どのような展開をするかについて教員と学生は話し合いを行う。 これは討論ではなく 互いに協調する形での意見交換とのこと。
またオックスフォードでは,常識を打ち破る思考について日々訓練されているようだ。 それは,常識と思われることの真逆のことを考える→ 常識によって導かれている行動を批判する→ 常識を批判する場合の対策を考える→ 新しい常識の構築と効果の検証,という順でなされる。
また,3人1組で議論させる授業では,最初の1人は意見を述べ,2人目は1人目の意見を批判し,3人目は2人の意見を批判する。そして,最後にクラス全体で何を議論したかを話し合うという。 ”批判することは議論を深めることである”ということが 腹落ちしていないとなかなか難しいのではないだろうか。 そしてそれを楽しめるかどうかも。

◇「上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン」向後千春
向後さんには,大学時代に彼のサイトにお世話になった。統計や三角ロジックをだいぶ噛み砕いて教えてくれたからだ。本著も非常にわかりやすい。イラストを多用し,トピックごとの説明は完結,章末に確認テストがあるので理解度を自己評価できる。行動心理学・認知心理学・社会心理学の知見が散りばめられている。

◇「あなたを活かすコーチング―いつも「うまくいく人」の会話術」吉田典生
コーチングスキルとはどんなものかを,日常の会話や自身がコーチとしてどう対応したかのケーススタディなどを交えながら説明していく内容。マニュアルらしさはなく,コーチングってこんな感じか!という雰囲気を掴むのによいと思う。
自分と相手は違う,それぞれの相手に響くコミュニケーションを考え生み出していくこと,人が頑張るのには他人からの受け止めやサポートがいる,人は演じる動物である,を心に留めておく。

◇「コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで」ジョセフ・オコナー,アンドレア・ラゲス
コーチングの歴史に始まり,世界で展開されているコーチング手法のいくつか,人間の発達,異文化間でのコーチング,コーチングの未来などについて述べた本。タイトルどおり,コーチングに関してこれまで読んだどの本よりも多くの内容を扱っている。
これまで読んだコーチング本で,その手法に細かな違いがあることは分かっていたのだが,あるものはある流派を踏襲しており,あるものはその人独自のものなんだろうな,ということが分かって,私の中のコーチングに関する知識基盤を補強していくれるような本であった。とはいえ,全体を通して厚みのある内容なので,折に触れて読み返したいと思う。

◇「部下の行動が1カ月で変わる! 「行動コーチング」の教科書」石田淳
通常のコーチングは,クライアントの気持ちを高め,前向きにやる気にさせることは可能だが,目標達成という結果にどうも結びついていないんじゃないか?と主張し,結果を出すためのコーチングを提唱する。著者は,アメリカで行動分析を基にしたマネジメントを学んでおり,クライアントを”行動させる”ことに主眼を置く。行動して,結果が出て,だから,また行動するという好循環を回すことで成長を促すのである。
主張も手法も明確で分かりやすい。肝は,目標の裏にある動機づけ条件を正しく把握すること,目標達成のために必要な行動は,クライアントがちょっと頑張ればできるくらいの行動まで細かく細かく分解し,その行動をひたすらこなしていく。通常のコーチングでは行わないことの多い,どんな行動をすればよいか等のアドバイスも行う。つまり,行動するまでにクライアントがぶち当たるであろう障壁(何をしたらいいかわからない,自分にはそれができるとは思えないなど)をことごとくつぶし,実際の行動へと促すわけである。それでも行動しないとしたら,それはもはや動機づけ条件が誤っているということだ。また,行動したところで目標達成していないのだとしたら,それはすべき行動が間違っていたということである。と,結果が見えるから検証もしやすい。
共感できる内容であった。

◇「潜在能力をひきだすコーチングの技術」ジョン・ホイットモア
ティム・ギャルウェイのコーチング「インナー・ゲーム」の流れを組んだコーチングについての本。コーチングは,クライアントに主体性と責任を持たせるための手段とする。いずれもクライアントから生まれるものであり,他人からの強制はできない。そして,この2つを補完するのが「意識」である。問題に関連する情報を収集して知覚し,どう関連するか判断する,自分が経験していること,自分の身体の感覚を認識する,また自分の欲望や感情によって知覚がどう歪められるかを認識する…。要するに,現実の正確な把握である。意識を十分に稼働させることで,主体性は保たれる。よって,クライエントが自身の意識を高め,責任を引き受けるように,質問や行動計画づくり,態度でサポートしていくのがコーチングである。
チームコーチングに関しての記載もあり。組織内で成員の意識が帰属→自己主張→協力へと成長していく,というのを学んだ。
正直読みづらい本であった…。

◇「奇跡のコーチング クラウディオ・ラニエリ伝記」ガブリエル・マルコッティ,アルベルト・ポルヴェロージ
イギリスのサッカーチーム,レスターを優勝させた,クラウディオ・ラニエリの歩みをまとめた本。幼少期に始まり,選手時代,選手兼監督時代,監督時代と時系列で彼のエピソードをまとめている。著者はどちらも記者である。
欧州サッカーに門外漢の私が読むには難儀な本であった…。大量のカタカナの名前やサッカーの試合の展開など,内容のイメージ化があまりにもできなすぎて,流し読みになってしまった。なのでろくなコメントができない。

◇「コーチング・バイブル―本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション 」ヘンリー・キムジーハウス,キャレン・キムジーハウス,フィル・サンダー
こちらの本,今回読んだのは3rd edition なのだが,実はこの企画を始めたばかりの頃に(おそらく)前の版を読んでいた。結構内容が変化している,というのが読後の印象。前の版では、自分の成長を妨げる「グレムリン」の存在が私にとってはとても印象的だったのだが,今回の版では「グレムリン」という言葉は出て来ず,ほぼ同じ概念を表す言葉として「サボタージュ」という言葉が登場した。
で,「コーチングのすべて」を読んだ今,やっと私の理解が追いついたのだが,こちらの本は、コーチングの中でもCo-Activeコーチングと呼ばれる流派の考え方や手法をまとめたものである(前の版を読んだときには、コーチングの他の流派との絡みで捉えていなかった)。Co-Activeコーチングの基本は,クライアントとコーチの関係は,クライアントの目的を満たすことを目的として結ばれた対等なパートナーシップ(同盟)だということ。ここをベースに,人生における充実感(フルフィルメント),欲望や行動におけるバランス,クライアントに変化が生じるまでの一連のプロセスに着目して,コーチングを展開していく。コーチングに必要なコーチのスキルは,傾聴・直感・好奇心・行動と学習・自己管理である。
Co-Activeコーチングでは,クライアントの問題解決にのみ焦点を当てるのではない。その問題や課題がそのクライアントの人生とどのように関わっているのかといった,その人自身やその人の人生などその人全てに着目していく
また,クライアントは,自身の価値観に沿って生きることでの充実を得られるようサポートする。これらのことは共感できるポイントであった。

◇「コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目」青木安輝,小野仁美,髙原惠子,本間正人
日めくりカレンダーのように,1日に1つ,コーチングに関する小話を提供する本。4人のコーチが3ヶ月分ずつ担当しており,文体や内容にそれぞれのコーチのカラーが反映されているのがまた面白い。他者に対してコーチをしている人も,自分で自分をセルフコーチングするときにも参考にできるtipsがたくさんある。それぞれがストーリー仕立てになっているのでまとまりがあって読みやすい。ただ1話の分量は,新書サイズ半ページで収まるくらいの量で少なめ。なので,しっかりじっくりコーチングについて学ぼう!とするときよりも,基礎的なことを確認したい,要点を知りたい,ちょっと息抜きしたい,ときなどに手に取るとよいかと思う。


102/122 読了 

2019/05/23

コーチング関連本を読んでるよ Week 15~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「ケーススタディで学ぶ 「コーチング」に強くなる本 現代の上司に必須のコミュニケーションスキル 」本間正人
上司と部下の会話を集めたケーススタディ集。 5つのテーマに関する会話が掲載されており,会話の中でコーチングがどう展開されているかが分かるようになっている。これまで読んできた本間さんの著書に掲載されているケーススタディと同様,人間臭い登場人物が出てくるため,親近感をもって読める。
仕事に不満を持つ部下に対してのコーチングに基づいた会話では,上司が部下を言いくるめているという印象を強く持った。ということは,コーチにクライアントにそう感じさせないほどのスキルがないと,かえって逆効果になるということだろう……。

◇「メンタル・コーチング~流れを変え、奇跡を生む方法~」織田淳太郎
複数のスポーツ選手や監督,コーチの行動や考え方を提示しつつ,試合に勝つメンタルを育てる方法を解き明かしていく本。トランスパーソナル心理学,フロー状態,恐怖に打ち勝つ術,フォーカシング,呼吸法,反復練習,セロトニンの効用などいろいろな話題が登場するが,つまるところ,パフォーマンスをしているときにどれだけ自分に囚われないでいられるか,が試合でよいパフォーマンスをするカギのようである。自分に関わること-例えば,うまくプレイできなかったらどうしよう,チームに迷惑をかけるかもしれない,負けたくない等,の思いはパフォーマンスを阻害する。だから,そういう思いをパフォーマンス中に出さなくなるよう,日頃トレーニングを積むのだ。
その方法としての,恐怖に打ち勝つトレーニングとフォーカシングが印象的だった。恐怖に打ち勝つため,ある選手は負けることを日々想像する。負けた自分が相手からどう見えているか,つまり相手の視点を想像する。すると自分の穴やウィークポイントが見えてくる。そしたら,そこを埋めるためにまたトレーニングするのだという。フォーカシングは,自分の中にあるモヤモヤを顕在化させるための方法だ。顕在化されたモヤモヤを無理矢理ではなく,自然に受け入れられるようにしていく。
いずれにしても,自分の感情や心の底に溜まっている思いを解きほぐして受け入れることがカギだ。そのプロセスを日々経ることで,パフォーマンス中に雑念に振り回されることがなくなっていくのだろう。

◇「[図解] ビジネス・コーチング入門 「双方向」コミュニケーションへの50の視点」本間正人
本間さんの著書,結構読んできたが,いつもながら分かりやすくまとまっている。コーチングとは?に始まり,似て非なるものである,カウンセリングやコンサルティング,アドバイシング,ティーチング,メンタリング,マネージングとの違いの説明や,おなじみのGROWモデル,キャラクター設定や状況が把握しやすいプロットでのコーチング実践例を提示している。
これまでに私が読んだ本間さんの著書には記載がなかったと思われる内容の1つが,無限選択肢のスキルというもの。これまでのやり方にとらわれず,常に新しい選択肢を探し取り入れていきましょうというものだが,抜本的に新しいものにせずとも,これまでのやり方の一部を変えたり,逆発想で見直したり,先を見通したり,複数の方法を組み合わせたりすることで変えることができるのだ。

◇「目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか?」播摩早苗
私の現状にちょうどささる時期に読んだからなのか,とてもタメになり,思わずたくさん線を引いてしまった次第。これまで読んだコーチング本の中で,私的には上位にランクする。コーチングの必要性や手法を伝えつつも,マニュアル感はなく,説明を噛み砕いて言語化してくれているところが素晴らしい。特に,コーチになりきれていない人,コーチ,コーチされる側の心を分かりやすく伝えているのがよかった。
コーチングでは,答えはクライエントの中にあるとしているが,この答えは心の奥底に秘められているものであり,そう簡単には出てこないらしい。すぐ出てくる答えは,「常識的で平凡」。そして,自分から出した答えでないと人は動かない。これらを明示してくれたことが励みになった。

◇「4つのタイプ コーチングから生まれた熱いビジネスチームをつくる」鈴木義幸
コントローラー,プロモーター,サポーター,アナライザーの4タイプについて,それぞれがどういうタイプか,それぞれのタイプの上司・部下をもったとき,どのようにコミュニケーションをとればよいかを述べた本。自分がどのタイプかを診断できる簡易テストや,行動傾向からのタイプの割り出し方も記載している。
タイプといっても,どういう傾向が強いかという程度のもの。それぞれのタイプは完全に独立したものではなく,大抵はいくつかのタイプが混ざりあっていると考えると良い。本では,それぞれのタイプに関する特異的な傾向しか示されていないため,内容は分かりやすいが,ある人間について,どのタイプがどのくらい……となるとすぐに答えは導けないように思う。
著者自身のエピソードは,私自身のタイプを考えるうえで参考になった。

◇「マンガでわかる! 子どもの心のコーチング 実践編 」菅原裕子
40個のケースを紹介。それぞれ,見開き2ページの漫画でこんな困ったことが起こってる!という内容を提示し,次の見開き2ページでその困ったをコーチングのコミュニケーションを使って解決していく。困った!の内容は,デフォルメされた絵でコミカルに描かれているので楽しく読める。解決ページも,菅原さんの他の本と変わらず,暖かさと子育て応援の雰囲気が漂う。菅原さんの子育ての基本的価値観である,愛すること・責任・人の役に立つ喜び,は健在。

◇「究極の勝利 ULTIMATE CRUSH 最強の組織とリーダーシップ論」清宮克幸
早稲田大学ラグビー部監督としての5年間をまとめた話。 早稲田大学ラグビー部にどのような練習を取り入れ,どのように選手たちに接し,どのように強いチームに仕上げていったかをまとめている。また, 清宮さん自身が尊敬している監督たちとのエピソードにも触れられている。
監督をするうえで心構えやコーチングの手法がまとまっているわけではなく, ラグビー部での活動記録の色合いが強い。よって,ラグビーにあまり興味のない私は,途中で飽きてしまった。とはいえ,「スローガンは具体的な動きをイメージできるものでないと弱い。つまり,空念仏のようなものに終始してしまう」のくだりには響くものがあった。なぜなら,私自身が様々な言葉や話をインプットする中で,私を動かす言葉と動かさない言葉があるということを感じているからだ。動かさない言葉は,さっと通り過ぎていくだけ。そういうわけで,自分に対して,そして誰かに対してスローガン・目的・目標を掲げるとき,自分を,そして他者を動かすような言葉を紡ぎたい。

◇「最強のコーチング」清宮克幸
清宮さんの監督経験から導いたコーチングのtips,リーダーとしてのtipsを10個にまとめた本。こちらもラグビー部監督時代のエピソード(先の本とかぶる内容あり)を多数含む。第1章の清宮さんの人柄が示されていた部分が私はいちばん面白かった。自身が認めるアクの強さ,共創型リーダーとはかけ離れているが,自らが頭をとって周囲を巻き込んでいけること,要領重視なこと,など。リーダーの形はいろいろだ。

◇「今すぐ使える!コーチング プロコーチだけが知っているとっておきの方法 」播摩早苗
上記したとおり,先に読んだ播摩さんの本がとてもささった,という気持ちを抱きつつ本書を読み進めた。そして本書もまた,しっくりくる内容だった。
内容は,会社組織での上司-部下の関係におけるコーチングがメイン。その中で,コーチングの基本的な考え方やスキルを解説し,コーチングセッションの事例を提示する。そして,コーチングを実際してみてからの困った!に寄り添い応えるような,アフターケアのページも用意されている。やはり,播摩さんは言語化能力のある方だと思う。何気なく読んでいると分かった気になってそのまま流れてしまうような内容を,詳細に分かりやすく述べてくれるので,心にストンと落ちてくるような感じがあるのだと思う。
彼女が提唱するコーチングスタイルもそれそのもの。相手の話を聴くことをスタートにし,「本質を明確にする」ことを重視する。人は,曖昧な認識のまま,適当で,近そうな言葉を使って話をしがちのため,相手の発した内容についてより詳しい話を求めながら,相手の言わんとしていることの本質をとらえるべきとする。
事例についても,彼女の表現力が生きている。だからだろうか,他の本で読んだ事例に比べて馴染みやすく,自然で,受け入れやすい感じがする。

92/122 読了

2019/05/03

骨折から3ヶ月経ちまして。

1月に,生まれて初めて骨折をした。折ったのは,背骨の先っぽあたりの仙骨。自宅アパートの外階段を降りているとき,足を踏み外してお尻からどすんと落ちて,そのまま数段更に落ちた。ほんとにほんとに痛くて痛くて,すぐに立ち上がることができなくて,小声で呻いていたのだけれど,そのまま座ってると,コンクリート?の階段でお尻がどんどん冷たくなっていくし,そもそも出かけようとしていたときなので,ヨレヨレしながらなんとか立ち上がり,ゆっくりとぼとぼと歩いてみた。一応歩けたので,骨は折れていないかな…と思ってたのだけど,椅子に座ろうとすると痛いし,座った姿勢を維持できないしで,どうにも我慢ができず,その日の夕方病院へ。で,「折れてますね」と骨折宣告を受けたわけです。

骨折から3ヶ月が経ち,もう走ったり運動したりと骨折前と変わらぬ生活が送れているわけだが(2ヶ月過ぎたあたりでもう癒合してますね,と言われた),折った箇所はたまに鈍痛が生じます。座り方のせいなのか,天気や気圧のせいなのか,原因がよく分からず,しかもずっと痛いわけでもないので,とりあえず様子見しているが,折った箇所というのはそういうもんなのか…?と初めてのことでよく分かっていない状態です。
とまぁ,骨折のせいで何かと不自由な状態だった2ヶ月間だったのだけど,人間というのはすごいですね,その不自由さを抱えつつ生活に適応しようとしていくわけで,若干生活に変化が起こっていた。かがむと痛みが増すので,床に置いてあるものを足でとったり,そもそも下にものを置かないようにしたり,駅などにある公共の手すりをしっかり使ってありがたみを感じたり,とろとろスピードで歩いている人たちに対してイライラすることが減ったり(私は本来歩くスピードが早めだが,痛くて早く歩けなかったので)と,いろいろ考えたり,思ったり,感じるところがあったりした。その中で,骨折がほぼ治った今でも継続されてる変化が2つある。それは,時間に余裕を持って行動することがデフォルトになりつつあることと,自分を労るようになってきたこと(無理をしなくなってきた)だ。
時間に余裕を持って行動すること,これが自然にできる人がいることは承知しているが,私はそうではない。多分昔から。学生時代から遅刻ギリギリで登校することが多かったし,人と待ち合わせてもオンタイムか数分遅れることが多かった。仕事に関しても,出勤時刻少し前に行くので,もっと早く来なさい。と昔先輩?から言われたこともある。とはいえ,時間に余裕を持って行動することができないわけではない。早く行こう!と気合?を入れればちゃんと行けるが,それは私にとってかなり違和感のあることなので,継続されないのである。たまたま早く家を出過ぎてしまったときなどは,途中に寄り道をするなどして時間をつぶして,ギリギリに到着するのが自然なのである。

ところが骨折をしたら,身体が思うように動かなくなった。それによって,自宅から最寄り駅まで歩くだけでもいつもの倍以上の時間がかかり,駅から仕事場まで歩くにも,離れているときにはどのくらい時間がかかるか読めない。しかも,痛いから,いつもよりも注意深く慎重に歩きたい。ということで,そうせざるを得ず,かなり時間的余裕を見込んで行動するようになった。で,痛いうえに,こんな状態で目的地に向かう途中に不測の事態が起こっても困るので,寄り道もせず余裕を持って到着するようになった。
仕方ない…と思って始めた時間に余裕を持った行動だが,何度か繰り返していたら,時間に余裕を持った行動は,時間ギリギリの行動よりも,かえって楽だし効率がいいと感じるようになってきた。なんといっても,その場に到着してから落ち着きを得られるのである。しかも,落ち着いた状態で,その時間に次のタスクの準備やシミュレーションもできる。ギリギリで行動してバタバタしながらやるよりもなんと実があることか……。時間に余裕を持って行動すると,ギリギリで行動するよりも時間の無駄が多いと感じていたのだけど,この得られる落ち着きは全然無駄なものではないと思った。
そういうわけで,骨折がほぼ治っている今も,時間に余裕を持った行動を継続している。前の,ギリギリ行動に幾分かの余裕を加えた程度だけれども,ずっとやっていくと,何らかの事情によってギリギリになることに焦りと不安を覚えるようになってしまった。これが習慣化の力なのだろう。

続いて,自分を労ること(無理をしない)に関して。私は自分で骨が太く強い方だと思っていたので,骨折をしたという事実自体が驚きであった。あぁ,私も骨折するんだ……と,三十路過ぎて若干身体や体力に変化が生じていることも相まって,少しショックでもあった。それで,もっと私を労わろう,無理をしないようにしようと決めた。
時間に余裕を持って行動することも,ある意味,自分を労るの範疇に入る。ギリギリ行動することでバタバタしてしまうのは,なんとかなっているように見えても,自分のキャパを超えているからバタバタしてしまうのだろう。落ち着きを得ながら行動できれば,それは自分のキャパ内でできているということだ。そして,マルチタスクを前よりしなくなってきた。そもそもやることを減らし,ちょっとした計画を立てたりするようにし,何かをやるときにはなるべくそれのみをやる。そしてそれが一段落したら次のことに取り掛かる。そして,計画通りいかなかったら,また新しい計画を立てる。そういうふうにしている。また,睡眠時間を確保するようにもしている。睡眠時間が勿体なくて,4.5時間辺りまでどうにか削れないものかと頑張っていた時期もあったが,それはやめることにした。今は1日7時間くらい寝てるだろうか。よく寝ると身体の調子がよく,ストレスも減る。だから,1日をやはり落ち着いて過ごせる。

というわけで,もう二度と骨折はしたくないが,骨折をしたからの気づきもあったので,それはそれでよかった。人の行動や思考も,変えざるを得ない状況に陥ると,気合などに頼るよりも簡単に変わっていき,その変化が自分にとって良い感じだと,これまた自然に続いていくのだなと実感した次第でもある。

2019/04/28

最近読んだ,認知科学本がとても面白かったよ! 「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」「知ってるつもり――無知の科学」

人の思考や認知に関する話は本当に興味深い。「なんで私はこう考えるのか?」「なんであの人はそう考えるのか?」人と話しているとき,時折これらの問いが私に降ってくる。簡単に答えられるとは思わないし,それを言い訳にして,この問いの答えを真剣に考えてもいないのだが,それでもやっぱりそういう話には興味があるし,もっと知りたいと思って本を漁ることもしばしば。そういうわけで,認知科学分野の最近読んだ本を3冊紹介する。どれもとてもオススメです。

さて,どれから紹介しようか…読みやすい順でいこうか。

・「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロランド
私達は思い込みで世界を見ている ー果たしてそれはどんな思い込みなのか?
私達が犯しがちな思い込み10個を実例を上げながらわかりやすく・面白く解説しているのがこの本だ。
著者のハンス・ロスリングは公衆衛生の専門家で,世界の様々な地域で活動していた。なので話は,世界は今どんな状況なのか?を私達の多くが誤解しているというところからスタートする。本のはじめに世界の状況に関する13個の質問があるのだが,これらの質問に正しく答えられる人はチャンスレベルよりも少ないことがほとんどだ(本の中で,国別の正答率や専門家における正答率が紹介されている)。私も数問しか正解できなかった。そして,その誤解のもとになっているのは私達の10の思い込みであるとし,データや事実を見て世界を正しく認識しよう,と呼びかける。
ハンスたちの特筆すべきところは,彼らはただデータや事実を見て世界を正しく認識しようと訴えているだけでなく,そのデータや事実を,統計や数字に疎い人にとっても分かりやすく提示しているところである。政府のサイト等でデータを見たことがある人は分かると思うが,素データというのは,素人には非常にとっつきずらい。どう解釈したらいいのか分からないことも多々ある。本書には彼らが作ったたくさんの図や表,集めた写真が提示されていて,そのデータの意味するところが直感的に分かるようになっている。本書でも紹介があるが,彼らが作って公開しているGapminder(https://www.gapminder.org/dollar-street/matrix)やDollar Street(https://www.gapminder.org/dollar-street/matrix)をぜひ見ていただきたい。

ちなみに,ハンスの考える10個の思い込みは,分断本能・ネガティブ本能・直線本能・恐怖本能・過大視本能・パターン化本能・宿命本能・単純化本能・犯人捜し本能・焦り本能である。原文では,本能をinstinctと使っている。つまり,人がつい飛びついてしまう思考の癖がこの10個である。詳しい説明は本書を参考にしてほしい。

ところで,ハンス・ロスリングはTEDで常連のプレゼンターでもあった。私が彼を初めて知ったのも,昔Eテレでやってた,TEDのプレゼンを紹介する番組「スーパープレゼンテーション」だった。彼の,洗濯機の話の,洗濯機があるから図書館に行けるのくだりがとてもとても印象に残っていて,この本が本屋で平積みされているのを見たときに,あぁ!この人!と思って本書に手を伸ばした。
ちなみに,洗濯機のプレゼンはこちら。


このビデオを見てもらうと分かる通り,彼はとても熱を持って話すプレゼンターだ。本書でもこの熱は健在で,まるで彼が私に語りかけてきているような文章になっている。だから読みやすいし,面白い。

・「知ってるつもり――無知の科学」スティーブン・スローマン,フィリップ・ファーンバック
続いて紹介するのも,人の思い込みにまつわる本だ。タイトル通り,私達は”知ってるつもり”になっている,ということを提示し,なぜ知ってるつもりになるのか,そもそも私達はどう思考するのか,”知ってるつもり”状態の中,私達はどう行動しどう意思決定していけばいいのか,などを説明している。こちらもとても面白く,だいぶ読み応えのある本だった。複雑な話をしているが,筋道や結論がしっかりしているので,それらが理解を助けてくれる。
印象的だったのは,”知ってるつもり”が生じる1つの理由でもあるが,私達は私とそれ以外の境界を明確に捉えていない,という話。私達は思考するとき,自分の身体と自分の外の情報を利用して(モノだったり,他者の意見だったり,思考のツールとしてテクノロジーを使ったり)思考する。それらの情報と自分の身体・思考は行ったり来たりして相互作用が生じており,明確に分別することは難しい。それゆえ,それらの外部情報が簡単に手に入ったり,身近なものであるときはなおさら,自分の頭の中にある知識ではないのにもかかわらず,それらについて”知ってるつもり”になってしまう。そしてその”知ってるつもり”はよく問題を生むのである。
”知ってるつもり”は悪ではない。”知ってるつもり”のおかげで,私達は極度な不安に陥ることなく生きていられる。自信を持って主張したり行動したりもできる。でもやはり,”知ってるつもり”はしばしば厄介な状況を引き起こす。だから,自分が何を知っていて何を知らないかについて正しく知ることは必要だし,コミュニティにおいて”知ってるつもり”による弊害を少しでも減らすために,著者らは個人の強みを活かしたチームでの活動や「リバタリアン・パターナリズム(緩やかな介入主義)」を提案している。「リバタリアン・パターナリズム」は,たとえその人が”知っているつもり”になっていたとしても,その人が本当に望んでいることや整合性のある決断を下せる判断をさりげなく薦める,という発想である。つまり,人が賢い判断をしやすくするための環境設計だ。その際の教訓として著者らは,噛み砕く(難しい事柄を5歳児でも分かるくらいに噛み砕く),意思決定のための単純なルール作り(分かりやすく実行しやすいルールを提示する),ジャスト・イン・タイム教育(その人が必要としているときに判断を助ける情報を提供する),自分の理解度の確認(自分が何を分かっていて何を分かっていないのかを把握する)を挙げている。

・「「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか」クリス・バーディック
さて,意図したつもりはないのだが,最後に紹介するのも人の思い込みにまつわる本になってしまった。こちらは,人が期待している結果・予測していることが,いかに実際の結果・未来に反映されるか,を説明した本である。そして,その期待している結果や予測は,自分自身の欲求はもとより,周囲から入ってくる情報の影響を非常に受ける。とにかく事例や実験の紹介が多く,そのせいで若干くどさを感じてしまうきらいもあり,また神経科学や医学系の専門用語が登場し理解に時間がかかるところもあるのだが,自分たちの思考が未来の事象に影響を及ぼすことをここまで提示されると,怖くなると同時に日々の自分の思考についてもっとモニタリングしないとなという気になってくる。ポジティブな期待・予測とネガティブな期待・予測のどちらも反映されるというのだから,なおさらだ。

以上で本の紹介はおしまい。どの本も,身につまされることの多い内容であった。そしてぼんやりと浮かんできたのは,短絡的な人間,コントロールが及ばなすぎる世界で生きる人間の姿(こんなことを言うこと自体 ”知ってるつもり” なんじゃない?と言われそうだが)。なんと愚かで無力!と上から目線でぶった切りたくなるが,もちろん私も人間なので,その姿は自分の姿でもあるわけです。ぶった切っても何も解決しないので,それを抱えながら生きますか…。