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2014/12/14

近代ヨーロッパを探る① 黎明期

アメリカの政治哲学者マイケル・サンデルが書いた本「これからの「正義」の話をしよう」は、数年前ちょっとしたブームになった。テレビでも、サンデル教授のハーバード大学や東京大学の学生に向けた講義のようすが放映され、何が正しいことなのか、これから私たちはどう生きていくのか、などが議論された。これから数回に分けて、1500年ごろから現代までのヨーロッパの歴史、思想を振り返り、なぜ今「正義論」が議論されるのかを考えていきたいと思う。

1500年ごろのヨーロッパはどのような様子だったのだろうか。1500年頃のヨーロッパは、近代ヨーロッパの黎明期と捉えられる。中世、長きにわたって人びとの上にのしかかっていた封建制度やキリスト教絶対視の思想が衰退し、人びとは新たな世界観を獲得し始めた。そしてそれは、市場経済の発達が関係しているといえる。

このころのヨーロッパを捉える1つのキーワードは「ルネサンス」だ。14世紀中ごろから現在のイタリアで始まり、1500年ごろに頂点を迎えていた。ルネサンスは、古代ギリシャ・ローマ時代の学問や世界観の復興を意味する文化運動を意味する。人間の権威の主張や個人の独立と自由、学問や芸術の宗教からの開放、思想や信仰の自由をベースに、さまざまな作品、活動が生まれた。ルネサンスの勃興にはいくつもの要因が絡み合っているが、商業の発展が果たした役割は大きい。そもそもイスラム圏からの文化の流入は、対イスラム勢力の名目で十字軍が派遣されていた中世から起こっており、13世紀ごろにはイタリアを拠点に地中海諸国とさかんに交易が行われていた。イタリア商人はアラビアやビザンツなど西アジアの商人からコショウや香料、宝石などを輸入し、銀や銅、毛織物、武器などを輸出する。調味料などほとんどなかった当時のヨーロッパでは、商人はコショウを高額で売ることができた。金を得た商人たちは力を持つようになる。商売で成功するには、的確な需給予測や決断力、不屈の精神などが要求される。つまり、個人としての能力が要求され、能力ある者が勝者となる。さらに交易を通じて、イスラム圏の技術や知識、人も物品とともに流入してきていた。ルネサンスは、このような状況のもと、イタリアの新興商人に支援、保護された学者や芸術家などの少数のエリートたちの間で起こるのである。美術や自然科学、工学に長けたレオナルド・ダ・ヴィンチ、地動説を擁護したジョルダーノ・ブルーノ、小国分立状態のイタリアで君主はどうあるべきか、いかに人びとを統治すべきかを説いたマキャベリなどがこの時期の代表者だ。

続いてのキーワードは「大航海時代」である。この時代、ヨーロッパとアジア、アメリカ大陸、アフリカ大陸をつなぐ海路が開拓された。このころの主役はスペインやポルトガルで、当時高値で売れた香辛料を手に入れるために、また領土を拡大するために、王からの命を受けた航海士たちは次々と航海に出た。そしてアメリカ大陸やアフリカ大陸を植民地化していった。大航海時代を可能にしたのは、天文学や地理学の発達と、実用化された羅針盤、造船術の進歩だ。ヨーロッパでは冶金産業が発達していたことから、火薬を使った武器を備えた大型の丈夫な船を作ることができたのである。航海士たちは植民地から、金や銀、作物を持ち帰った。持ち帰った銀はヨーロッパで一波乱を巻き起こす。銀の供給が増えたことで貨幣がたくさん作られるようになり、インフレが起きたのである。貨幣は価値を失い、人びとの購買力は低下した。儲けられる者と儲けられない者が現れた。

さらにこのころのヨーロッパでは封建制度が衰退していく。封建制度とは、中世ヨーロッパで長く、広く成立していた社会システムだ。王―領主―家臣・農民の間の主従関係を基盤とし、上位者が下位者を支配する。下位者は上位者に仕えて働くことで土地や生活が補償される。教会は、王や領主から土地や財産の寄進を受けており、封建制度擁護の立場をとっていた。しかし、この封建制度は崩壊に向けて歩み始める。その背景は、農業の発展と貨幣経済の浸透だ。農地を3つの期間で区分して使用する三圃制や金属農具の普及などで12世紀ごろから農業生産率が向上する。農作物がたくさん取れると余った分を売ろう、ということになる。市場がにぎわい、貨幣経済が発展し、農民は豊かになる。そしてそこに都市ができ、農産物だけではなく物を製造して売ろうとする人間も現れる。交通網が整備され、都市と都市は交流をもつようになり、市場経済・貨幣経済はどんどん広がっていく。農民たちがこうして力をつける一方、農民たちを直接支配していたその土地の領主(中間層)は力を弱めていった。それは王(上位層)の力が強まったからである。王たちは火器を武器を用いて、強大な軍隊を作った。中世時のような鎧や槍、盾ではもはや太刀打ちできない。こうして中央集権国家が誕生し、領主―家臣・農民の個人的な支配関係は、王―国民の図式に変化し、封建制度は徐々に衰退していった。そして国民国家の成立へとつながっていく。

そして1517年には宗教改革が起こった。ドイツの神学者マルティン・ルターは、ローマ教皇の販売した免罪符に異議を唱え「95カ条の論題」を発表する。この、既存の教会(カトリック教会)に反発するプロテスタントの動きはヨーロッパ各地に飛び火していくが、それに一役買ったのは印刷技術である。このころ誕生した活版印刷はルターの思想や、聖書、キリスト教のさまざまな解釈を普及させた。

これらを踏まえてまとめると、経済システムの変化とともに社会システムが変化し、人間が個としての存在を確立し、社会にその存在を表し始めたのが1500年ごろのヨーロッパといえる。そして市場経済の発達、農業生産率の向上、技術の進歩を背景に人びとの生活は合理的になり、合理的精神が宿り始めた。神中心の階級にしばられた世界観は、人間の個としての自覚、現世的な世界観へとシフトし始め、近代ヨーロッパの土台ができ始めたのである。


参考文献
会田雄次「ルネサンス」講談社現代新書 1973
ウィリアム・H・マクニール「世界史 下」中公文庫 2008
J.M.ロバーツ「図説 世界の歴史 〈5〉東アジアと中世ヨーロッパ」創元社 2003
大井正、寺沢恒信「世界十五大哲学」PHP文庫 2014
成美堂出版編集部成美堂出版編集部「一冊でわかるイラストでわかる図解世界史―地図・イラストを駆使 超ビジュアル100テーマ 」成美堂出版 2006
成美堂出版 2006

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