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2019/02/21

げに便良きかな,音声入力

私は冷え性だ。冬になると指先が冷たくなって,パソコンのキーボードを打つのが正直しんどい。 手が冷たいと,キーボードを打つスピードも遅くなる。 だからどうしても, 長い文章を書くことが億劫になりがちだ。とはいえブログも更新したいし, 月1-2回ペースでやり取りしている海外の友人にも長めのメールを書きたい。どうにかならんもんかな,と考えていた矢先,そうだ,私も音声入力やってみるか!と思った。というのも,私が購読しているメルマガの著者が,音声入力でメルマガを書いていると言っていたからだ。そのメルマガには,毎日3000字~4000字超の文字が書かれているが,音声入力で書き,キーボードはちょっとした修正をするときに使う程度のため,負担が少ないという。

そういうわけで,先週から私も音声入力を始めた。 今も音声入力でこの記事を作っている。とりあえず今私が持っているデバイスは,Windows PC と Android スマホ。それぞれで音声入力ができる方法を早速 Google先生にask。で暫定的に,PC では Google Chrome 上で使用できる Googleドキュメントと dictation.io を,スマホではスピーチノートというアプリを使うことにした。より使い勝手の良いものが見つかったら,変えていくつもりだ。ちなみに,これらはすべて Google の音声認識システムを利用しているので,どれを使っても精度に遜色はほとんどない。

さて,音声入力を始めて驚いたことは,その精度の高さである。私はこれまでに,日本語と英語,ドイツ語の音声入力を試したが,普通にしゃべれば確実に認識してくれる。しかも正しく。1文を一気に話してもほとんど問題ない。話してから入力されるまでのスピードは,やや遅い感はあるが,許容できる範囲である。

日本語については,もちろん漢字,カタカナ変換も勝手にしてくれる。同音異義語に関しては,たまに間違った変換をするが(本記事の精度は最初,制度と変換された), イライラするほどの頻度ではない。 また,そういうときに1回修正をすると,恐らく Google はその修正を学習するのだろう。 次にまた同じ間違いの変換をしてくることはなくなっていく。 少し面倒なことといえば,句読点や改行,かっこなどの記号を音声で入力してくれないことである。 Google ドキュメントにおいては,英語に関しては,指定のワードを話すと(ボイスコマンド),ピリオドやカンマ,改行などを入れてくれるらしいが,日本語だとその機能は今のところないらしい。dictation.ioも然り。スピーチノートに関しては, Google Play 内のアプリ説明のところで,ボイスコマンドが使えると書いてあるが,いまいちやり方がわかっていなくて使っていない。なので基本,句読点や記号を入れたいときには,キーボード入力となる。 スマホでも同様で,都度入力している。

英語の音声入力に関しては,海外の友人にメールするときに使用している。 音声入力はある意味,私の発音チェック機能を備えているわけで,ちょっとドキドキしながら話してみた。結果,ほとんどちゃんと認識してくれた。正しく認識をしてくれないときは,私の発音がよろしくないというメッセージ…ということで,精進することにする。

ドイツ語の音声入力に関しては, 数年間ドイツ語を学習していたので遊び半分でやってみた。自分で文章を作るのは時間がかかるので,とりあえずドイツ語の記事を読んでみたが,やはり私のドイツ語読みはたどたどしく,正しく認識してくれた単語数は英語に比べて格段に下がった。こちらも精進が必要である。

音声入力を始めてもう1つ気づいたことがある。 記事やメールを書き上げるまでの時間は,キーボード入力のときとそんなに大きくは変わらないということである。私は元々キーボード入力がそれほど遅くない。だから,音声入力でシステムが文字化してくれている時間と,私が同じ内容を書くためにキーボードを叩く時間は,大きくは変わらないのである。とはいえ打ち間違えや変換ミスを私もするから,それを考慮すれば,音声入力の方がやや早いくらいだろうか。 私の場合,記事やメールの内容を考えるのに時間を要する。 考えながら喋るし考えながら書く。記事やメールを書こうとすると,構えてしまうのだろうか?すぐに言葉が出てこない。だから結局,音声入力を使っても仕上がるまでの所要時間は大きく変わらない。

だが,キーボードをそれほど使わなくていいというのは非常に楽だ。冷たく固まった手を頑張って動かす必要がないし,基本マイクに向かって喋ればいいだけなので,パソコンの前に座る必要すらないのかもしれない。そう思えば,スマホを使った音声入力は,パソコンよりも気軽に使える。 ということは,いつでもどこでも好きなときに,ながらですら文書を書けるということだ。

何か行動しようとするとき,その行動を起こすのに1つでも面倒なことがあると,人はその行動をやらなくなるようだ。全くその通りである。「手が冷たいからキーボードを打ちたくない」。もちろん記事やメールの返信を書いたりはしたいのだが,ついつい億劫になってしまいがちだった。でも音声入力を始めてから, 億劫さはだいぶ減った。 今から10年くらい前,卒論やインタビュー記事をまとめるのに,必死にテープ起こしをしていたあの頃を思えば,無料で,しかも精度も高く,様々な言語に対応している音声入力を使えるなんて,なんて便利な世の中になったものだろうか。

音声入力生活を今後も続けてみようと思う。


以下,参考までに…
◆dictation.io
◆Speechnotes スピーチノート - 音声から文字へ

2019/02/19

コーチング関連本を読んでるよ Week 14

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「コーチングの教科書-「最高の能力」を引き出す」本間正人
本書は,教育現場でコーチングをどのように使っていくか,を中心に書かれている。集団指導が中心の学校教育では,個人に合わせた教育をすることは困難。とはいえ,ひとつの方法が万人に通用するわけではない。そこでコーチングの手法を使い,集団指導では賄えない部分を補おうというわけだ。コーチングは,基本的には個に向けたものである。個人が持つ力をより引き出し,高めていくことを目的とする。
また本書には,複数の事例が載っている。うまく自分を表現できない生徒,すぐに人を頼る生徒,勉強しない生徒など,対応に少し工夫が求められる生徒像を設定し,長めの会話例を用いて実際どうコミュニケーションをとるかを提案する。

◇「コーチング入門 第2版 」本間正人
コーチングの世界ではおなじみの,本間正人さんによるビジネスマン向けのコーチング本。 部下の能力をいかに引き出すか,を念頭に置き構成されている。コーチングの基本スキルと3つのケーススタディを掲載。コーチングにはたくさんのスキルがあるが,今回紹介しているのは核となるスキルである,傾聴・質問・承認。また,コーチングを実際に進めていく上で,参考となるGROWモデルも掲載。GROWモデルは目標設定~達成までのプロセスをモデル化したものなので,初心者にとっても案内役として機能し,使いやすい。ケーススタディに関しては,相変わらず面白い。彼の本はこれまで何冊も読んでいるが,フィクションとして載っているケーススタディに登場するキャラクターはなんとなくおかしくて,なんとなく親近感がわいてしまう人たちばかりだ。そして,キャラクターの名前は,必ずと言っていいほど,芸能人の名前をもじっている。
今回,本間さんはあとがきに「学習学」について記載している。その名の通り,学習に関する学問で,彼が専門的に取り組んでいる分野でもある。本間さんは,教育と学習,コーチングを明確に分けている。教育は個人の外側から内側への働きかけ,学習は個人の内側から外側への働きかけ,コーチングは学習をサポートする役割,である。昨今,教育業界ではアクティブラーニングにシフトしようという動きがあり,また,成長スピードで考えても,知識を方法を教えてもらう受け身的な学習よりも,自分に必要なことを考え,主体的に学び,自らの学びをベースに実際行動するほうが成長スピードが早いのは明らかである。つまるところ,教える側が教わる側にどれだけ与えたとしても,成長量は教わる側に依るところのが多い。教わる側つまり生徒側を,いかに学習させ行動させるか,重視すべきはここだと思う。
文庫サイズで持ち運びもしやすく,200pくらいの本なので気軽に読める本である。

◇「子どもの心に届く言葉、届かない言葉―教師力・親力をアップする教育コーチング」
小山英樹
学校や家庭,塾等で,大人はどのように子どもたちと関わっていくべきか,どのように会話を進めていけばよいのか……と思っている方に適した本。全国の実際にあった会話を元にしたケーススタディ集であり,様々な生徒が登場。学校や塾の先生が,母親や父親がこんな風にコミュニケーションをとりました!というのが,超短編小説のようにたくさん載っている。コーチ自身が関わり方を変えて生徒との関係が改善したケースもいくつか紹介されており,変化前と変化後の対応の仕方の違いも感じることができるだろう。
ちなみに著者は,愛情・信頼・尊重をベースに,人は育とうとする生き物である,人は自分の中に答えを持っている,人はそれぞれ,という信念を持ち,クライアントの自立を教育コーチングの究極目的とする,としている。
印象に残ったところは,ペーシングについて書かれたところである。ケーススタディの中では,授業中に教室を徘徊したり漫画を読んだりし,誰の言うことも聞かない生徒が登場した。その生徒に対して,とある先生は,生徒を他の生徒や自分に合わさせるのではなく,自分がその生徒に合わせて行動をしてみた。つまり,生徒が漫画を読んだらその先生も漫画を読み始める,生徒が足を机に投げ出して座ったら先生も足を机に投げ出して座ってみる。そんなことをしたわけだ。すると何週間後かに,その生徒は,鞄から漫画ではなく教科書を取り出すようになり,机に足を投げ出さず着席するようになった。生徒をいくら変えようとしても,生徒は自己を否定されたと思って,反発を繰り返す。そして,「自分」と「相手」,合うと落ち着くし安心する。でも,ズレると落ち着かない。生徒は先生の姿を通して,自分が何をしているか客観的に見ることができたのだろう。

◇「7デイズ・コーチング」近藤直樹
セルフコーチングのための本。自分のやりたいことを実現していくプロセスを7つに分け,1日1つずつ進めていき,達成させましょう,という趣旨である。1日目は意図を明確にすること,2日目は意図を宣言すること,3日目は成果を測るための目標を決めること,4日目は行動計画を立てること,5日目はただ行動すること,6日目は成果を振り返ること,7日目は完了・次の創作である。である。1日ごとにワークシートがついており,このワークシートに沿って進めていくと良い。ワークシートは,自分がやりたいことを実現するために必要な行動を促すためのものである。行動しないと何も変化が起こらない,だから行動し,そこからフィードバックを得て,次の行動へと進む……それをやりやすくするためのワークシートである。
著者は,行動や結果を促進するために,現実で起こった出来事とそれに対する自分の反応を明確に区別することを推奨する。例えば自分が書いた文章について,上司から批判されたとする。その時,私には能力がないのかなとか,いつも自分は失敗ばかりしているとか,今度は一発 OK だと思ったのにとか,うるさい上司だとか思うのが反応の代表例である。その反応に捕らわれてしまうと,改善は起こらない。反応は反応としてその時生じた自分の感情を味わう。味わわないと,その感情に引っかかって行動の障害になり得る。そしてその一方で,感情から離れて,批判された文章を練り直す,という行動も行う。
また,何か新しいことを始めたり挑戦したりするとき,自分の中で抵抗が生じる。その抵抗に捕らわれてしまうとやはり行動はなされない。抵抗を脇に置いて,行動することにフォーカスする必要がある。
つまり,行動するために,自分の思い込みや感情から離れよ!ということだ。

◇「会話から始めるコーチング―最強のチームをつくるコミュニケーション力」伊藤守
上司・部下の関係においてどのように会話を進めたらいいかについて,コーチングの理論に基づいて書かれた本。上司が部下にしてしまいがちな質問や,上司の部下に対する悩み,なぜ部下がそのような行動をとるのか,について触れ,コーチングを取り入れた会話や,相手のタイプを考慮した接し方を通じて,お互いにとって良い関係を構築することを目指す。
見開きで1項目を扱い,左側のページでは,その項目に関するイラストを提示。平易で読みやすい。

◇「ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話」生島淳
著者と,ラグビーのコーチであるエディー・ジョーンズ氏の対話をまとめた本。ジョーンズ氏がどのような思想をベースにコーチングを行っているかや,日本の選手と他国の選手の違い,スポーツにおける日本と世界のメディアの報道の仕方,各国のラグビーチームの戦略などがまとまっている。
ジョーンズ氏はコーチングをアートだという。「選手一人ひとりにとって何が必要なのか見極めるのがコーチングにおけるアート」,「選手個々の能力を引き出すためには,どのようなコミュニケーションを取るべきなのか,それこそ数限りないケースが考えられるわけで,その見極めにこそアートが生まれる余地がある」としている。また,ハードワークの中にも楽しむ要素や柔軟性があることを求め,最終的な到達点をイメージして,日々,判断・決断していく。日本社会や教育にも触れ,選手のマインドセットを変え,勝つチームを作っていく。
巻末には,読書家であるジョーンズ氏の推薦図書を15冊掲載。

◇「「聞き方」ひとつで人は育ち・人は動く―聞いて、理解して、やる気を引きだし、大きく育てる「実践コーチング」の技術! 」石川和夫・伊藤敦子
「聞くこと」に焦点を当て,聞くとはどういうことか,どう聞くか,聞くことの効用などについてまとめた本。人は相手に受け入れられることを求め,安心すると行動を起こせる。話を聞くということは,話を聞かれる側を安心させる行為そのものだ。聞くだけでスムーズにことがすすむこともある。聞くことは,相手との信頼関係を築く第1歩とも言えよう。
相手を励ますときには,ただ「頑張れ」と言うのではなく,過去の成功体験や強みに焦点を当てて,相手の視点を変えるよう促す……。それをするには,相手のことをよく見て,知っておく必要があるということだが,取り入れてみよう。そして,未来に向かっての問いかけもしてみよう。

◇「弱さを強さに変えるセルフコーチング 」辻秀一
スポーツ心理学とスポーツ医学をベースにコーチングを行う著者による,アドバイス本。自身が主催するスポーツ塾やチームに所属する子供たちから寄せられる質問に答える形でページが進んでいく。そして,子どもたちからの質問は,抽出化すると社会人がこぼす悩みや愚痴の内容と共通するものも多く,それらへの回答としても提示している。回答は,日本や世界で活躍するスポーツ選手の態度や言葉を取り入れつつまとめている。
著者は,スポーツにおいて勝利することは重要だが,それ以上に,当人たちが力を出し切ることを重視する。その思想の元,自身のスポーツ塾を主催している。子どもたちに一生懸命,楽しく堂々とスポーツさせる,大人はその価値観を受け入れ,子どもにそれを促していく。その中で,「勝ち」につながる思考パターンや行動を身につけさせようとしている。

◇「中学の部活から学ぶ わが子をグングン伸ばす方法 」大利実
中学校で部活を指導する8人の教師たちの指導法をまとめた本。生徒の技術向上のための指導法ではなく,いかに生徒と接するか,生徒に対してどのような思いを抱いているか,が全面に溢れている内容である。
どの教師も生徒の未来を想い指導しているのが印象的だった。社会人としてたくましく生きることができるように,自立して生きることができるように,あえて理不尽で厳しい指導もする。また,部員同士が互いに高め合っていけるような関係をつくれるよう,場を設計する。そして,いつも本気で生徒と向き合う。そんな姿勢が描かれていた。

83/122 読了

2019/02/12

コーチング関連本を読んでるよ Week 7~

コーチング関連本,122冊読了しよう企画をやっております。

◇「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」マーシャル・ゴールドスミス
原著のタイトルは「What Got You Here Won't Get You There」。翻訳タイトルよりはるかに本の中身に適したタイトルなのであえて紹介しているが,英語らしく,そして,興味を引きつけるタイトルだ。
―あなたをここまで連れてきたものはそこには連れて行かない。この本はここからスタートする。つまり,ここ(今)へとあなたを導いたものに頼っていては,そこ(より良い未来)へは行けないのだよ,と。
というわけで、そこに行くために,何をなぜ手放すべきかを教えてくれる。手放すことで得られるものは,そこへの近道となるようなスキルである。しかも,おそらくこれがこのコーチの手法の肝と思われるが,手放し,手放した状態をデフォルトにするために,他人からのサポートを最大限利用する。その方法に関しても述べた本である。
アメリカで何人もの大企業の経営者のコーチをしている著者だけあって,具体的かつ現実的な情報にあふれた内容だ。手放すべきものは明快だし(多くの人にとって手放したほうがよいこと20個が提示されている),どのように他人に協力してもらうかの手順(フィードバック,フィードフォワード)や,他人の協力に対してすべき反応(ありがとう)も指南してくれる。そして,自分を客観的に分析すること,自分の力だけで自己変革を起こすことの難しさを承知しているがゆえ,他人を巻き込み自分と他人でwin-winの状態にするという現実的な解決策を提示する。他人の手を借りるという点がネックになる人もいるだろうが,あなたに誠実に接してくれる他人と共にこの本の内容をやっていけば,変われることは大いに期待できそうだ。もちろん,あくまでも他人ではなく,自分が主体的にやっていくことが重要なわけだが。
何かを始めることも変わることだが,何かをやめることもまた変わること。まずは1つ,悪癖と早々にさよならしよう。

◇「イッセー尾形の人生コーチング」朝山実
尾形イッセーの一人芝居の演出家による,一般人向けの演劇ワークショップのルポ。4日間だけのワークショップは,演劇のプロを目指すためのものではなく,「気づく」ことに主眼が置かれているように思える。普段自分がどんな行動をしているか,他人をどれだけ見ているか/見ていないか,自分はどれだけ他人と違っているのか,追い詰められたら自分はどんな力を発揮するのか,など。
演じ方の1つとして,気持ちは全く考えずに徹底的に演じるものの形や動きを真似するというのが面白いと思った。それが見る人にとって自然な演技になるようだ。真似に徹することで,自意識からも解放される。自分が自分を認識しているように,他人はあなたを認識していないことを示す例でもある。

◇「エンパワーメント・コーチング」マイケル・シンプソン
エグゼクティブ向けにコーチングを提供する著者。7つの習慣で知られているフランクリン・コーヴィー博士らが設立した企業でコンサルタントも務めている。
著者が考えるコーチングの原則は,信頼,潜在能力,コミットメント(決意),実行。コーチとクライアント間にはまず信頼があり,だからこそクライアントの潜在能力を信じ,見つけ,伸ばすようコーチは動く。それによって,クライアントは何かを行うことを決意し,実行する。クライアントがコーチを使って目標を達成していくとき,そういうプロセスをたどる。そして本書では,このプロセスにおけるコーチングスキル7つ,信頼を築く,パラダイムを疑う,戦略を明確化する,完璧に実行する,効果的なフィードバックを提供する,才能を引き出す,中間層を押し上げる,についても書かれている。
フォードバックに関する章では,人が耳に痛いFBを受けたときの反応モデルSARAHフィードバックモデルが書かれていた。Shock→Anger→Rejection→Acceptance→Humility, Helpという流れで人はFBを受け止めるらしい。自分の反応の仕方を思い返せば,納得の流れである。

◇「部下を伸ばすコーチング―「命令型マネジメント」から「質問型マネジメント」へ」榎本英剛
90年代から,コーチングの普及に取り組む著者。米国で組織論,変革論等を学び,コーチングの資格の1つであるCPPC(Certificated Personal & Professional Coach)を取得している。
本書では,コーチングとは何か,時代の変化によるコーチングの必要性,東洋医学の人間観と照らし合わせながらコーチングを捉える,5つのコアスキル(質問のスキル,傾聴のスキル,直観のスキル,自己管理のスキル,確認のスキル),コーチングを導入することによって生じる個人の働き方の変化,それに続く社風の変化,さらにはそれが売上増への貢献に続くことが紹介されている。

◇「ハッピーになるための恋愛コーチング<」近藤直樹,土井英里佳
恋愛指南本。恋人との関係や夫婦関係が終わりをむかえるときのパターンを提示し,お互いにとって心地よい関係を育むにはどうするかを説く。自分を見つめ,受け入れる,相手と率直に話し合う,そのままの相手を受け入れる,現実と解釈を分ける,今に過去を持ちこまない,のアドバイス的なものが書かれており,一人でできるトレーニング・ワークのやり方も掲載。恋愛関係だけでなく,人付き合い一般に応用可と思う。

◇「恋愛コーチング」平本相武
恋愛指南本。傾聴することや自分の求めるものをはっきりさせる,答えは本人が知っているなど,コーチングの枠組みにおける基本的なスキルや精神を恋愛をする自分や相手へのサポートに応用することと,満足する恋愛関係を保つための工夫やテクニックの紹介で成り立った内容。

◇「元気をつくる「吉本流」コーチング」大谷由里子
吉本興業で横山やすしさんや宮川大助・花子さんらのマネージャーをしていた著者によるコーチング本。マネージャー業での経験や,その後立ち上げた企画会社における社長業での経験をふまえ,書かれている。
大谷さんといると元気になれる,と言われる著者。彼女の本ですら読んでて元気になる!大変なこともたくさんあったとのことだが,それでも物事にプラスの要素を見つけて前へ前へと進んでいく著者はとてもエネルギッシュ。そして率直。相手に合わせて自分の出方を変える柔軟さ,適応力から来るtipsとして書かれている。
彼女の人柄がよく伝わってくる本であった。

◇「メジャー初コーチの「ポジティブ・コーチング」」立花龍司
人を活かすには,ということに関してどう考え,人を活かすために何をしてきたか,していくか,を綴った本。著者は,プロ野球球団やメジャーリーグ球団でコンディショニングトレーナーとして活躍した人で,彼の哲学と経験が書かれている。
著者は,「心が動いた人間は成功する」というのがコーチングの核だと述べる。よって,相手の心を動かすために複数の手を考え,実践する。人間は一人一人違う。だから,その人にカスタマイズした方法でコミュニケーションをとり,トレーニングを行っていく。
著者がこのような結論に至ったのは,日本の野球界における選手の指導方法に疑問を持ったからだった。アメリカやキューバにおける指導方法と全く違っていた。著者が見てきた日本の野球界は,画一的で,選手に無理を強い,それをやるとどうなるのかが明確になっていない練習が横行しており,選手を疲弊させるものだった。でも,アメリカやキューバでは,そもそも野球は遊びでもあり,それぞれが自主的・主体的に練習するのが基本。強くなりたいから,うまくなりたいから,自分で考えて練習に取り組むのだ。

◇「「話し方」の心理学―必ず相手を聞く気にさせるテクニック」ジェシー・S・ニーレンバーグ
質の高いコミュニケーションを実現するために知っておくべき人間の性質のこと,言葉のこと,そして具体的なコミュニケーション法が丁寧にわかりやすく書かれている。原著は60年代に出版されているが,今読んでも全く古さを感じない。それだけコミュニケーションにおける普遍的な内容がまとめられている。
言葉は,私たちが伝えたいことの断片しか伝えない。だから,言葉で表現しきれていないことを汲み取り,感じながら相手の意図・思いを理解することが求められる。逆に,自分が言葉で何かを伝えるときにも,相手が自分の思ったとおりに理解してくれることはほぼない。相手には相手の解釈の仕方があるし,そもそも人の話を集中して考えながら聞くことは大変なことだから,そんないつもやってられない。だから,正しく理解してもらうためには相応の工夫をしたほうがよい。
生産的なコミュニケーション,自分も相手も満足するようなコミュニケーションの一歩のために,活用できる内容が満載だ。

74/122 読了